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59報連相

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 会場に戻るとヘラルドが待っていたのかミカエラのそばに行く。
「何かあったのか?」
「えぇっとヘラルド様対応なのか分かりませんが初対面の方に絡まれました。貴族らしく遠回りかつ取り巻きの方が色々とご自由な発言をして下さったのですが、面倒くさくなって話を切り上げて戻ってきました。」

 ドリンクを渡されて口をつけるがジュースだった。美味しい。多分この報告だけでもちょっとイラッとはしているのだろう。少し空気が刺々しい気がする。少し体重をかけてもたれかかり見上げる。イチャイチャとはならないけれど、素敵なおじさまのふんいきが漂っている。

「誰か名前とかは聞いていないのか?」
「ヴィーラ・ステーシア侯爵令嬢が一番偉そうにしていましたね。素敵な発言は取り巻きの方またはご友人でしたけれど…初めて会ったのに急に失礼だとか…お仕事場の付き合いだとお伝えしたのですが、ヘラルド様、甥の双子様、レオンハルト様を誘惑しているのだと言われてしまって。誘惑されたのですか???」

 した覚えは全くないし、貴族の御令嬢の美人の条件は全く満たしていない。手はゴツゴツした職人の手だし、美人でもない。化粧のおかげだ。胸も筋肉であるけれど脂肪の部分はそんなに少ないことはないけれど、貴族的基準だと慎ましい。それに孤児に色恋なんてありえないで育って来たし、私も仕事と趣味に生きるつもりだから誘惑する理由もない。

「ミカエラの持つ(技術力に)魅了されたかな。」
「…ヘラルド様の嫁候補だったとか?」
「ヴィルフリートの候補だな。どうするんだ?訂正もできれば私から制裁することもできるが。」
「…では、その一味を商業ギルドに忖度して順番を後ろに行くようにしてもらってもいいですか?暫く気持ち良く仕事はしていたいので。今抱えている分は仕方ないですけれど追加が入っているなら…」

 少しくらい私都合で仕事をしてもいいと思う。発注を受けないとかであれば商業ギルドも困るし、相手は侯爵家。ギルドでは対応しきれないだろう。それにしても私がヘラルド様に泣きつくと思ったのだろうか。これが泣きつくになるならそうなのかもしれないが…

「それだけでいいのか?」
「ヘラルド様目当てではなくて甥の双子目当ての話であればある意味ズレてますし…少し頓珍漢なので対応に困りますけれど…私の契約内容から少しずれていますから。新参者が近づくなとかそんなこと言われる覚えもないんですけれど…そんなの相手が決めることで周りが決めることでもないでしょうし。候補なら双子の甥に任せていいと思うんです。」

 対処を考える私が面倒くさい。ヘラルド様の管轄でもないと思う。少しズレているし。

「貴族の悪意から守るという契約だからどうして欲しいか言いなさい。何も抵抗できないのだと増長させるだけだ。双子と親しくしてくれるんだろう?」
「家にはあげませんよ。狭いし。物壊しそうだし。貴族の方が遊びにくる場所でもないですから。」
「自分も貴族になった自覚は???」
「ありませんよ。良くてお金持ちになってしまった庶民です。」
「そこの自覚は持とうか。」

 呆れながら頭を撫でられた。どうみても娘とかお子様扱いで恋人扱いではない。ミカエラはとりあえず貴族らしい笑顔から普段用の自然な笑顔に切り替える。ヘラルド様は双子の甥っ子に何か話をして帰ろうかと腰に手を回された。

「侯爵家の方が楽だったか???」
「…あちらは別邸で皆様私が平民で孤児で礼儀知らずとご存知ですから。」

気持ちの面で少し楽だった。多分ヘラルドの邸でもそういう事を伝えているのか厳しいことを言われたり面倒くさいみたいな感情をあまり持たれていない。
持たれても私は私だし、しゃんとしたご令嬢目的なら自分で探す人だろうし。

邸に泊まって少し勉強をするのだが、それはそれで楽しい。義務としての勉強ではなく趣味の延長線、仕事に関連することを覚えているから嫌でもない。

「私の家にイタズラとかまた燃やされたりしませんよね?」
「流石にしないだろうが…人を置いているんだ。大丈夫だろう。」

前は不法侵入の人が燃えたんですが…

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