上 下
48 / 194

48新居のため

しおりを挟む
貴族のマナー教室で嫌味集や貴族らしい暴言集ばかり習っていたり、これを言わなきゃ大丈夫ばかりを習っている。

「ミカエラ、これが日程ですが、必要なものはありますか?経費で構わないとヘラルド様より伺っております。」

淡々とミカエラに説明する。

「新居が謝礼で断ると思ってましたが?」
「…断ったら更に上積みされそうな気がしたので…」
「確かに。そう言えば化粧品部門が大変感謝をしていましたよ。売れ行きが好調のようです。」

「それは良かったです。不労所得が増えます。」
「…今仕事を辞めても生活に困らないでしょうに…」
「困りませんけれど、私は自分が可愛いと思ったものを作ってるだけですから。指が使えなくなるか、仕事が嫌になったら辞めます。」

今は仕事が楽しいです。と、微笑んだ。

「そうですか。そう言えば貴族の価値観では年頃を過ぎようとしてますが、結婚などは考えていますか?」

イザークの言葉にけっこん????と、首を傾げる。結婚…何故結婚????

「孤児院育ちは汚らわしいとかで一夜の付き合いとか愛人とかならありますが、婚姻を考える人はいませんよ。私生児とか孤児と言うことで結婚相手として望む方は多くないですし、仕事していたいので考えていないです。」

「そうなのですか?」

「はい。孤児は労働力っていうのが下町の認識というか…子供が出来たら仕事を解雇されて孤児院に帰るしかなくて出産するんです。お金もないですし、医者も呼べないので先生や慣れてる子供たちで取り上げるんですけど…勿論、無事に住むなんてことはあまりないですし…」

孤児院で育ったら仕事を探すのも大変だし、見つけても使い潰される。女は妊娠させられたら仕事も住む場所も失って孤児院に戻る。男は妊娠/出産はないから働き続けることは出来るけれど過酷な環境になる。
働き潰すための存在で後ろ盾がないのだから仕方がない。一部の浮浪者になるのか、犯罪者になって表から消えるのか。その程度しかない。

「ミカエラ、貴方は男爵、その次の年には子爵と余程の不祥事がない限り決まっています。偽物両親が発生していることから貴族はそこをあまり気にしません。それよりも利益が取れるなら余計に。ですので来ると思いますよ、大量の縁談。」

「えぇ…私、自分の店で自分のやりたいように仕事がしたいだけなのに…そんな余計な目の困ります。取り敢えず考えないようにします。あ、イザーク様、ヘラルド様曰く双子とその護衛の身長や体格教えてください。」

「???」

「お貴族様の身ぐるみはいだらそれなりのお値段になる服ではなく作業服買ってきますから。」

「兵士の訓練用の服ではダメなのですか?」
「え?どうせなら中古のボロ着せませんか?ヘラルド様がボロ駄目と仰るならそれでいいですが、どうせならボロ着せましょう。あ、剣とか持ってこないようにですね。」


貴族の服なんて孤児院では浮くし、不適格。どうせなら徹底的に。最底辺の環境を味わってもらいたい。イザークはそれなら1度相談してくれるそうだ。
翌日には是非ボロで。というお返事が来た。面白がっている。

当日、私は作業着だし、レオン様は草臥れた訓練服。そしてヘラルド様に連れてこられたのが髪の色の違う双子ヴィルフリート様は濃い金色の髪だったけれど片割れは白金に近い明るい金髪だった。ヴィルフリートはうんざりした雰囲気だけも伝わる。

「ミカエラ、ヴィルフリートは知っているね。こっちがその双子のもう片方のギルバートだ。それとその護衛2人。あぁ、口調は崩して構わないよ。ミカエラが預かる間は私と同程度として見るようにといい含んでいるから気にしなくていいから。」

「伯父上、これでは私が巻き込まれた…」
「社会勉強で7日公務も全て免除するんだ。ミカエラ、頼んだよ。」
「じゃあ、全員着替えて。」

一応畳んで箱にまとめて投げ込んだ服を指さす。

「へ?」
「今から孤児院に行くのにそんな服で行かれても困るの。さっさと着て。剣は要らないし。」

ボロ。ミカエラは森とかに行く時の作業着だし、レオンハルトは訓練服だ。それは事前に知っていたからでミカエラはさっさと着替えて。と、笑顔でゴリ押しした。

「臭うんだが…」
「気のせいよ。中古だから気を使って1回は洗ったもの。失礼ね。平民が滅多に使わない洗剤もちゃんとケチって使ったっての。嫌なら裸でこい。孤児院の余り渡すから。」

身分が高い人用だから洗剤を使いながらも昔からのくせでというより報復に近いのでケチった。文句があるなら着るな。

「くれぐれもミカエラやレオンハルトから苦情が来ないように務めることだ。来たら将来の事も踏まえて考慮するからな。」

着替えたボンボン一行を連れて孤児院に向かうため馬車に乗るが勿論平民向けの乗り心地は最悪の椅子は固いし揺れも酷い馬車だ。既に口から文句が出ている。

「ヴィルフリート様、ギルバート様到着したら子供たちに自己紹介がありますので呼ばれて困らない愛称や偽名を考えておいてください。」
「そうよね、子供たちにはただの私の知り合い程度でお手伝いだから、変な渾名や呼び方が定着する前に考えておかないと変な渾名になるね。」

レオンハルトは特に気にしている様子もないけれど、他の護衛は柔軟に対応出来るのかな。

「あ、これは馬車で読むんだった。えっと本人達だけでなく護衛の働き者も評価に加えているので世話になる、迷惑をかける分しっかりと働くように。ヘラルド様より。」
「ミカエラでしたか、何故このようなことになっているのでしょう。」

ギルバートが溜息混じりに挙手をして質問をするが、何かあれば文句でも言うつもりなのだろうか。

「簡単にまとめるとヴィルフリート様が市中で世間知らずを露呈させたのでヘラルド様より2人まとめて社会勉強させて欲しいということです。行くのは私が育った孤児院でそこの先生は院長がクソお貴族様の為過労なので心配した私がお休みを渡したい。それだけです。」

ギルバートは納得したのか溜息混じりで双子の片割れを見る。

「私の何が世間知らずだ!」
「ヘラルド様が来るまでの間の会話の内容をヘラルド様にお伝えしたら身内として恥ずかしい。頼むから口外しないでくれ。と、素敵な焼き菓子詰め合わせを頂いたのですが?どれくらいかというと同室で聞いていたユーリ様が机をバンバン叩いて大爆笑してしばらくお仕事出来なくなったほどです。」

「へぇー。まぁ、公務が無くなったし社会勉強に勤しむけど…勉強になるの?」
「知りませんよ。自分で学ぶかどうかでしょ。私は教えるなんてしませんよ。雑用として借りたんですから。ちょうど男手足りてなかったので雨漏りの修繕からヤギ小屋の整備とすることは沢山なので。それと魔法禁止なんで。」

その瞬間全員絶望的な顔をしていたがミカエラは平民が魔法をポンポン使えるわけないでしょう。と、言い切った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

私をはめた妹、私を切り捨てた元婚約者の王子――私を貶めた者たちは皆新たな時代に達するまで生き延びられませんでした。

四季
恋愛
私をはめた妹、私を切り捨てた元婚約者の王子――私を貶めた者たちは皆新たな時代に達するまで生き延びられませんでした。

【完結】思い込みの激しい方ですね

仲村 嘉高
恋愛
私の婚約者は、なぜか私を「貧乏人」と言います。 私は子爵家で、彼は伯爵家なので、爵位は彼の家の方が上ですが、商売だけに限れば、彼の家はうちの子会社的取引相手です。 家の方針で清廉な生活を心掛けているからでしょうか? タウンハウスが小さいからでしょうか? うちの領地のカントリーハウスを、彼は見た事ありません。 それどころか、「田舎なんて行ってもつまらない」と領地に来た事もありません。 この方、大丈夫なのでしょうか? ※HOT最高4位!ありがとうございます!

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

両親も義両親も婚約者も妹に奪われましたが、評判はわたしのものでした

朝山みどり
恋愛
婚約者のおじいさまの看病をやっている間に妹と婚約者が仲良くなった。子供ができたという妹を両親も義両親も大事にしてわたしを放り出した。 わたしはひとりで家を町を出た。すると彼らの生活は一変した。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約者は王女殿下のほうがお好きなようなので、私はお手紙を書くことにしました。

豆狸
恋愛
「リュドミーラ嬢、お前との婚約解消するってよ」 なろう様でも公開中です。

これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。

りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。 伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。 それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。 でも知りませんよ。 私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!

処理中です...