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36靴擦れ

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「ミカエラその足どうしたの?」

レオンハルトが戻ったからと部屋に来たのだがスリッパも脱いで包帯の足を晒している。

「靴擦れ。止血はしているけれど治ってないからと薬を塗られて念の為…」
「あ、今日からダンスもするって話だったっけ。」
「それです。イザーク様とだったのですが結果は聞かないでください。」
「初めてなんだし仕方ないと思うよ?歩ける?運ぶけど。」
「部屋じゃだめですか?流石にこれ以上人に抱き上げられて移動はその、恥ずかしいです。」

抱き上げられて移動。知っている。この間に部屋の掃除とかベッドを整えるとか使用人側の都合があるのも承知してる!!!だけど、当たり前のように抱き上げられて運ばれるのは慣れない。

「ミカエラ?」
「慣れません/////」

恥ずかしい。勘弁して欲しい。

「早く治るといいね。」
「え、治るまでずっとこれとか嫌ですよ。」

素に戻って拒否するとレオンハルトは残念と、言いながら食堂に移動して一緒に食事をとる。恋人でもなんでもないんだけど、これっていいの???

「イザークが厳しいなら俺も練習相手になるよ。」
「…そういう問題じゃない気がします。あの感じ…」




「イザーク、ミカエラは上手くなりそう??」

弟が不在時にわざとダンスを捩じ込んでみた感想をユーリは期待して聞いてみる。

「本人はふざけてもいないし努力しようとしてるのは分かる。」
「それで?」
「彼女に音楽関連の才能は求めない方がいい。」
「え?酷いってこと??」
「…リズム感がない。ステップの足運びも覚えたのにリズムに乗ることが出来ない。本人も出来てないのが分かって練習するが…筆舌に尽くし難い…靴を血塗れにする程に休憩時間も練習しているのだが…厳しい…」

口調が昔のようになっているのを指摘すべきなのか、叙爵したら必須技能ダンスが壊滅的なことを気にすべきか…

「優雅に見せるなら腕1本で彼女を支えて1人でステップ踏む方が遥かにマシだ。」
「…口調が戻る程に酷かったんだ。だけど、ミカエラと仲が良くてダンスが上手いのってヘラルド殿くらいじゃないかな。私や父も踊れるけれど教える程じゃない。弟は…覚え直しから必要だろうし。」
「ヘラルド様は確かに腕は確かだが…彼女の傷を広げるだけだと思う。」

そんなに…酷かったのかとユーリはどうしたものかなぁと見る。礼儀作法よりダンス。

男爵は確定している。お披露目などで腹芸が出来ないならダンスしかない。

「今から腹芸仕込むのとダンス覚えてもらうのどっちが早いかな。」

「……」

実際に踊った人間がこうなのだから彼女のダンスの腕はそういうことなのだろう。イザークはミリーナの練習相手もするから腕は確かなので……
彼は潔く人生の大先輩を頼ろうと心に決めた。

「ミカエラとのダンスの感想は?技量抜きで。」
「…技量をどうカバーして教えようか頭を働かせていた俺に聞くのか?それを。」




ミカエラは岩をハンマーで砕いていたのだが、ダンスが散々だったので指を叩いてしまった。

「いっ!!!」

自分の治癒魔法で痛みは引くけれど爪の再生まではしない。

「考え事しながらはダメだよなぁ。」

爪が割れそう。アレを使うか。仕事道具。宝飾師は岩をハンマーやツルハシで岩を砕いたりするので必然的に今みたいに爪を叩くこともある。指の保護も踏まえた民間療法。スライムと薬液を混ぜて砕いて粉にしたガラスを溶かして混ぜる。すると透明の液体になるのだが、刷毛を使って爪に塗って魔力を通すと固まる。妙にスライムみたいなツヤツヤなコートになるので男性からは不評な防護だ。傷を見られたくないので今砕いていたラピスラズリのクズ石を綺麗な粉末にして削っていたクズ石の削りカスを混ぜて馴染んだ所を爪にぺたぺたと塗る。

魔力を指先に集中して流すと綺麗に固まる。

ラピスラズリの青が綺麗だしクズ石の削りカスという本当にゴミを混ぜたけれど元が宝石だから綺麗にひかる。

「ミカエラ様、それは何ですか??」

「爪の補強。爪割れ修復とかです。」

メイドの1人が興味を持って聞いてきた。スライムと薬液も安く売っているしほぼタダだ。どれも何かを作った時の余り物になっている。

「私でも出来ますか??」
「出来ますよー。塗料や染料…この辺ちょっとずつ集めて貰えますか??」

必要な原材料を書き出してお願いをする。私がするのではなくて自分で作って欲しいと思ったのだけど。

「その色でして頂けますか?もちろんこの材料は集めます。」
「あ、はい。」

ぺたぺたと塗ってあげる。最後に自分で魔力を爪に集中させたら固まる。理由は分からないけれど昔これでそれなりに遊んだりしたから間違ってないはず。
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