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8帰ってきた平穏…?

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王都に到着した。
家までではなく商業ギルドの近くで下ろしてもらう。ミカエラは頭を下げて謝礼はお断りをした。お風呂つきの個室の宿に帰りの護衛と馬車だけで十分だと。

「石が砕けたら感想を商業ギルドに出しておこう。」
「それでお願いいたします。お世話になりました。」

二度と会うことは無いだろう。
ミカエラは1度帰宅すると着替えをして発注していた木箱などを家に届けてもらうように手配をしていく。

取り敢えず抱えている案件をこなして行こう…先着順に並べてもらっているがギルドで多少の忖度をした順番になっているようだ。お金を積み上げられたのか、貴族のあれこれなのか。花や色多少選べるようにしたからなのか注文が程よくバラけて気分転換にいい。

※姿絵を添付するので合いそうなデザインに意匠変更。婚約者へのプレゼント。

補足説明が…身分のある方がお金も積むし特別対応希望ということか。好きな花は作ったことはないけれど、藤の花アメジストを削ればいいかな。石同士ぶつからないように。光が当たって煌めくように。藤って珍しい。ガリガリ削っていく。無理しない。納期も全然余裕がある。

「そうだ、風呂だ。風呂入ろう」






エドワードは報告書にミカエラ・フィルの事も書いておく。宝石でも小粒のクズ石と呼ばれる石にエイスで魔力を込めることで使い捨ての魔道具にしていること。消費魔力を減らしたり、魔法を増幅させたり広範囲魔法を負担少なく行えること。ただし加工を覚えるには難しく、ミカエラ・フィル個人でも宝飾師として注文を多く抱えているので量産は難しいこと。などを細かく書いておく。可能であれば研究量産を臨みたい。書いておこう。試作分の支払いは商業ギルドでいいだろう。

「レオンハルト」

エドワードが呼ぶのは彼女の世話を良くしていた騎士だ。侯爵家の末息子。兄1人に姉2人と女性が多いから任せた。本人は魔力も多くなく騎士団で腕を磨いている。

「はい、なんでしょうか隊長。」
「魔導具部長に報告書の写しを渡してミカエラ嬢のことを土産話を少ししてからこの小切手を商業ギルドに持っていってくれないか?ミカエラ嬢に試作品と協力御礼も込だ。」

「分かりました!ミカエラ嬢喜んでくれるといいですね!」

お金で解決できることは解決させた方がいい。当人が解決できないと言っていたが都合よく頭から抜けたらしい。

お使いなのだが、部屋から出た瞬間から侯爵家令息としての立ち振る舞いで姿勢を質す。報告書の写しを持って向かうのは魔導師を束ねる魔導師団。そしてその中でも研究職をしている魔導具部門。

「レオンハルト・ロズウェルです。失礼致します。」

研究部門の長がロズウェル侯爵家次期当主。兄であるユーリ・ロズウェルであった。彼は弟が職場に来たことに驚いたがどうしたのか?と、にこやかに応対する。

「兄上、隊長から報告書の写しを渡した後に少し土産話のお茶でもと言われたのですがお忙しいでしょうか?」

ユーリは副官を見上げるとお茶の準備に動いたのか兄は人払いは?と、確認をしてきたが別に要らないので空いてる席に座る。

「レオンがこんな時間からお茶なんて珍しいね。ちょっと前大量発生の対処だっただろう?」
「えぇ、強い魔物も現れて…たまたま採取に来ていた宝飾師の支援を受けました。」

ユーリは報告書に目を通す。魔物の数は聞いていた以上である。
「宝飾師?あぁ、原石の採取かな?」
「いえ、原石ではなく川でクズ石と言っていました。その、兄上程の能力があればクズ石にエイスでアクションを刻むことは出来るのでしょうか。」
「しないな。効率が悪い。それに石自体が小さすぎる。それなら魔石の方がいい。」
「えっと実物ご覧になられますか?演習の帰りに試作品を使った感想が欲しいと借り受けてまして。7日間肩凝り軽減くらいの効能で疲労回復効果があるんです。」

首からネックレスを出して兄に見せる。兄はその石を鑑定する。

「…確かに疲労回復効果が刻まれている…ただのクズ石に。製作者は神聖属性なのかい?」

「はい。神聖属性しかないから肩こり防止とかポーションに満たないことしか出来ないと言っていましたが、事前に用意していた試作の石を組み合わせて騎士団に着いてきていた正規神官よりも立ち回って怪我人の治療をしていました。」

「…凄いな。それが本当ならクズ石の価値も変わるだろう。レオンハルト、その宝飾師の名前は?1度詳しい話を聞いてみたい。工程付与も見てみたいしな。」

「ミカエラ・フィルです。」

ユーリはスラスラっと手紙を描き始めた。

「レオンハルト、商業ギルドに行く予定は?」
「これから試作品の支払いの為に向かいます。」
「じゃあちょうどいい。ギルド長にこれをお願いね。」

兄からのお手紙も預かった。ミカエラ嬢のお店も1人から大きくなるといいな。レオンハルトは凄い評価されてるよ。と、仲間を助けてくれた少女を思い出す。
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