17 / 29
④イクメンパパ〜オナホ〜
しおりを挟むそもそも、ドックに収容されて乾電池になっている俺がどうしてエアーフリートを操作できるんだろう。
これがギア・フィーネ、ギア3から使える『ハッキング』。
ギア4になっていることで、精度と効果範囲が広がっている。
俺如きの知識でもここまでのことが容易くできるのだから、ギア4の恐ろしさと危険性は相当だ。
万能感とはこういうことを言うんだろう。
「ぐっ」
でも、あまりもたない——!
鼻と目と耳から、血が止まらなくなってきた。
毛細血管がぶちぶちいっているのがわかる。
神経が敏感になり続けて、熱い。
これ以上続ければ、本当に人間辞めそう。
『あれぇ? もう人間辞めちゃうの? 早くない?』
「! デュレオ……?」
『レナの歌をもっとよく聴きなよ。それとも俺の歌の方がいい? どっちでもいいから、歌い手の歌をよく聴きな。確かに歌い手はブースターではあるけど、それだけじゃない。ちゃんと聴くことができれば、脳波の同調を整える力もある』
「……!」
『ちゃんと深呼吸して、口で。肺に酸素入れて、心臓で血を全身に行き渡らせて——感じて。歌を』
その波動を。
「っ!」
海? いや、大地、地平線?
青い、青い空……夕焼け?
違う、朝焼け……青い、群青の空に、なんだ?
時間がすごい速度で進んでる?
俺は今どうなってるんだ!?
『驚いた。こんなに早く“ここ”に辿り着くなんてな』
『兄さんはずいぶんあなたを気に入ったんですね』
「!?」
ハッとした。
目の前には真っ白な空間。
ど、どこだここ!?
あたりを見回すと、一人の男が近づいてきた。
群青色の髪と不適な笑みを浮かべた金の目の男。
こいつ、知ってる。俺。
いや、初対面といえば初対面なんだが、全身がゾワゾワと泡立つ。
でも、もう一人女の子みたいな声がしなかったか?
男以外を見ようにも、白光りしていて明確に姿を確認できたのはこの男だけ。
「こ、ここは、なんだ!? 俺はエアーフリートの中のイノセント・ゼロの中にいたはずなのに!」
『イノセント・ゼロ。やっぱりまた四号機か。あれだけなーんでおかしいんだろうなぁ? 設計スタンスは五機とも同じなんだけど』
『育った環境ではありませんか? 四号機はよい登録者に恵まれ、すぐに“歌い手”を得ましたから』
『そういうものか。だが、存外お前の考えた“歌い手”システムは上手くいっている。導入は正解だったな』
「……なんの、話をしている!? お前は誰だ!」
先ほどの万能感を一瞬で取り上げられたのだ、警戒もする。
それに、多分これ肉体ではない。
これは、なんだ?
精神体?
本当にどこだよ、ここ!
いくら俺が美人に弱いからって、今回ばかりは揺るがされたりしないぞ。
『そうそう、普通そういう質問をするんだよ! ここにこられるのは各機各登録者一回きりなんだからさ! それなのに二号機と五号機の登録者としたら、今忙しい、ってさっさと帰っていくんだから』
「っ」
茶化されている?
二号機と五号機って、シズフさんとラウト?
今忙しいって帰っていくって、容易に想像がつくなぁ。
『ここはブレス・トワ・アース。現代を生きるあなたたちが、結晶大陸と呼ぶ世界の中心部』
『そして俺様こそがギア・フィーネの創造主にしてブレス・トワ・アースで世界を“運営”する代理神の一人! 王苑寺ギアン様だ! 崇め奉れよ!』
「……」
ああ……ああ……!
なんかそんな気はしていたけど、やっぱりこの男が王苑寺ギアン!
それにしても、どうしてこんなに吐き気が止まらないんだ。
この男が、気持ち悪くて仕方ない!
デュレオが人を殺したのを見た時以上の拒絶感。
思わず口を押さえてしまう。
「どうして俺をここに……」
『どうして! それは違う! ギア・フィーネはギア4に上がった時点で登録者をココへ招くようプログラムしてあるんだ。登録者はわけもわからず選ばれて、世界の都合で戦わせられるだろう? でもそれは仕方ない! 愚かな為政者どもが、ギア・フィーネの真の価値を理解しないまま戦わせるのだから!』
「そんなことを聞いてるんじゃない! ここはいったいなんなんだ!? なんで俺はここに連れてこられてるんだよ!」
『ハハ! 頭の悪いガキだな。ここは、最初で最後の俺への謁見の場! 聞きたいことになんでも答えてやろう。たとえばどうしてギア・フィーネを作ったのか、とかな! みんな知りたいだろう?』
テンション高っけ。
それに、なぜか異様な嫌悪感を抱く。
一刻もここから立ち去りたい。
もしかして、シズフさんとラウトもこんな気持ちだったのかな。
でも、それなら誰よりも早くここにきたであろう、三号機の登録者——ザード・コアブロシアと、さっきから名前の出ない四号機の登録者、アベルトさんはなにかを質問したのか?
っていうか、なんだよ、ブレス・トワ・アースとか、惑星の中心部とか。
「聞きたいことは、山のようにある、けど……質問制限とかあるの?」
『ないぜ』
『でも、あなたの体はあまりギア4に耐えられていません。一つだけにした方がいいと思います。もしくは、このままなにも聞かずに戻るのを推奨します』
「っ」
7
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。



久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる