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第六話 ティータのセクハラがひどい
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ようやく落ち着いた葉月は、またもや自分がティータの巨乳に顔をうずめて甘えてしまった事実に首筋まで赤くなって謝罪した。
「……なら今度は妾がハヅキの胸に甘えさせてもらおうか」
控えめながら、弾力ある柔らかな葉月の胸に、ティータは鼻先を擦りつけた。
「えええっ! やんっ! 顔動かしちゃだめえっ!」
「ふふふ……よいではないか、よいではないか!」
少女の弱みにつけこむ悪代官と化したティータは、葉月の起伏は薄いが、どうやら感度の高い胸の感触を堪能した。
身長でも体重でも劣る葉月は、必死にもがくが、ティータを引き剥がせずに、甘い悲鳴を漏らすのだった。
胸の頂点を鼻先で刺激されて、葉月はたまらず甘い悲鳴をあげる。
「もう、もうだめええええええっ!」
小一時間ほどティータの抱き枕にされていただろうか。
もはや声も枯れ果てた、という風情で葉月は脱力して身体を横たえていた。
その姿はややもすれば、情交の事後を彷彿とされる危うい色気に満ちていて、ティータは満足したはずの情欲を抑えるのに苦労しなければならなかった。
(この気持ちはなんだろう? )
後から後から葉月への愛情が溢れだして止まらないのをティータは自覚した。
これはまともに考えればおかしな話だ。何といってもティータは傷ついた葉月を保護しただけで、碌に時間も経過していないのである。
彼女が同じ魔王の血を色濃く引く血族であるということもあるかもしれない。
しかしそれだけでは説明のつかないシンパシーは、自分が彼女と同じく、世界中から忌み嫌われ、追われる者であることが大きいのではないか。
孤独を友とし、いつか自分を救い出してくれる誰かを求め続けてきた、そんな寂しい魂が共鳴しあっているような、そんな気がするのである。
何より、異世界からの来訪者である葉月には、このアヴァロンにまつわるしがらみが、一切ないことが素晴らしかった。
(妾は――もうハヅキを手放せないかもしれない……)
両親を亡くしてどれだけの時間を一人で過ごしてきたことか。
ティータはこの愛らしくも孤独な来訪者に、すっかり依存し始めていることを認めざるを得なかった。
(くふふ……次はどう可愛がってあげようかの)
荒い息を吐いて全身を紅潮させていた葉月は、時ならぬ寒気に背筋がゾッとするのを感じたのだった。
――――翌日、流されるままに同じベッドでティータと眠ることになった葉月は、久しく感じることのなかった他人のぬくもりが、これほど安心感を生むものかと改めて気づかされた。
睡魔と格闘しながら、動物的な本能でティータがお尻を揉もうとしてくるのも、それに比べれば些細なものに感じられる。
いや、乙女としてそれはどうか、と思わなくもないのだけれど。
もう何年も経験したことのない熟睡――御防人の夜襲を警戒していつでも起きられるようにしていた――は身も蕩けるほどに甘美なものであった。
長年の、魂にまでこびりついたような恐怖と猜疑と孤独が、綺麗に洗われていくような感覚である。
たとえようもない恍惚感に浸って、葉月は瞼を開く。
すると悪戯っぽく微笑んだティータが、愛おしそうに目尻を下げて葉月を見つめていた。
目と目があった瞬間、たちまち葉月は赤くなって絶句した。
ティータが、自分の寝顔を見つめていたことに気づいたからだ。
「ななななっ! 何見てるんですか! 私の寝顔なんて……!」
「可愛い寝顔じゃったぞ」
「ふにゃああああっ!」
羞恥のあまり、葉月は再びシーツを頭からかぶる。
これが兄妹や友人であれば、これほどの羞恥は感じなかったかもしれないが、ティータは葉月がこれまで見たこともない絶世の美女である。
葉月が人形のような硬質の可愛らしさだとすれば、ティータのそれはまさに肉感的な造形美そのものだ。
彼女の前には女神ですら、その美しさが霞むであろう。
いかにも小動物的な葉月の反応にティータの悪戯心がむくむくと鎌首をもたげてしまったとしても誰が責められるだろうか。
「ほらほら、顔を出して。おはようハヅキ」
優しく微笑んでシーツをめくるティータに、葉月も決まり悪そうに視線をそらしながら返事を返した。
「おはよう、ティー……んむっ?」
観念してシーツから顔をのぞかせた葉月に覆いかぶさるようにして、ティータの長いまつ毛と、潤いに満ちながらも肉厚のある唇が迫っていた。
そして二人の距離がゼロになり、ティータの唇が、葉月の小さな唇を包むようにして、まるでついばむように一回、二回と唇は重ねられた。
「葉月らしい、なんとも可愛らしい唇じゃな」
小ぶりだが、弾力と柔らかさに満ちて、ほのかに甘い。
機嫌よさそうに破顔するティータの前で、みるみるうちに葉月の瞳が潤み、目じりに涙が溜まり始めるとさすがにティータはあせった。
「ど、どうしたのだ? ハヅキ! どこか具合でも……」
「――私のファーストキスを返せ! ばかあああああ!」
ドゴオオオオッ!
「ふんもっふ!」
葉月の渾身のボディーブローを食らったティータは、弾丸のように弾け飛んだ。
しかし肉体的には大ダメージを負いつつも、葉月のファーストキスの言葉に、してやったりと会心の笑みを浮かべているあたり、割と余裕がありそうである。
「いたたたたたた……ハヅキは照れ屋じゃのう……」
「どうしてその程度で済んでいるのかわからないけど、貴女には手加減する必要はないことだけはわかったわ」
ポキリポキリと指を鳴らす葉月の鬼気迫る様子に、ティータは顔面を蒼白にしていやいやと首を振った。
一見何事もなさそうな顔をしているが、葉月の一撃のダメージは危うくリバースするほどには効いていたのだ。
まともな人間なら間違いなく、悶絶どころでは済まなかったはずである。
葉月も葉月だが、ティータの耐久力もたいがいと言えるだろう。
「だ、だいたいだな。家族であればおはようのキスは当たり前であろ?」
「どこの家族が起きぬけにマウストゥマウスするっていうのよ!」
「おはようのキスといただきますのキスといってらっしゃいのキスとおやすみなさいのキスは基本ではないのか?」
「あんたの親は何回娘にキスしてたのよおおおっ!」
一生分のつっこみを使い果たしそうな勢いで、葉月は荒い息で絶叫した。
何かが根本的に間違っている気がした。
「……念のために聞くわ。そうでないと貞操が危うい気がするし。ティータの日常を朝から説明してくれる?」
気が付いたら初体験が同性相手、などという事態は決して容認するわけにはいかない。
ティータはいかにも心外な、と肩をすくめると語りだした。
「朝目が覚めたら父上と母上にキスするだろう? 次に顔を洗って歯を磨いたら朝食になるわけだが、お互いに温めたミルクを口うつしで飲ませ合い――――」
「アウトおおおおおおおおおっ!」
何回絶叫させたら気が済むのだろう。
思わず亡き兄に口うつしでミルクを飲ませてもらう情景を想像してしまい、葉月は顔を真っ赤にしてぶんぶんと両手を振った。
「口うつしは親愛表現と同時に、無病息災を願うしきたりと聞いたのじゃが」
「どこをどうしたら口うつしが無病息災になるのよ!」
「唾液は抵抗力を促進するのではないのか?」
「それはいったいどこの本当は恐ろしい家庭の医学よ!」
動物が傷をなめ合うのと、同じ感覚で口うつしをするんじゃない!
「……午前中は畑仕事をすることが多いな。あとは胸を揉んでもらいながら昼寝をするくらいか」
「アウト! アウト! アウト! チェンジいいいいい!」
「何が嫌なのじゃハヅキ? 気持ちいいうえに安眠できて一石二鳥じゃぞ?」
「なんで眠れるのよ! 興奮して眼が冴えちゃうでしょ普通? というかそもそも簡単に胸を揉ませるんじゃないわよっ!」
葉月は、ティータに胸を揉みしだかれる前で本当に良かったと思った。
スキンシップとはいえ、ティータに胸を揉まれるのは、女性としてのプライドとか、いけない感覚とか、問題しかない。
「そ、そんな……葉月の可愛い胸を揉むお昼休みを楽しみにしてたのに……」
「お願いだからほかの楽しみを見つけて頂戴っ! ていうか、今どこを強調した!」
故人の悪口を言いたくはないが、ティータの両親はどういう教育をしていたのだろう。
あまりにも常識をかけはなれたティータが、他者とのコミュニケーションにおいて不利益を被るとはかんがえなかったのだろうか。
この世界の一般常識が、実はティータのほうであったりしたら……葉月は乾いた哂いとともに、その可能性について見て見ぬふりをすることに決めた
「……なら今度は妾がハヅキの胸に甘えさせてもらおうか」
控えめながら、弾力ある柔らかな葉月の胸に、ティータは鼻先を擦りつけた。
「えええっ! やんっ! 顔動かしちゃだめえっ!」
「ふふふ……よいではないか、よいではないか!」
少女の弱みにつけこむ悪代官と化したティータは、葉月の起伏は薄いが、どうやら感度の高い胸の感触を堪能した。
身長でも体重でも劣る葉月は、必死にもがくが、ティータを引き剥がせずに、甘い悲鳴を漏らすのだった。
胸の頂点を鼻先で刺激されて、葉月はたまらず甘い悲鳴をあげる。
「もう、もうだめええええええっ!」
小一時間ほどティータの抱き枕にされていただろうか。
もはや声も枯れ果てた、という風情で葉月は脱力して身体を横たえていた。
その姿はややもすれば、情交の事後を彷彿とされる危うい色気に満ちていて、ティータは満足したはずの情欲を抑えるのに苦労しなければならなかった。
(この気持ちはなんだろう? )
後から後から葉月への愛情が溢れだして止まらないのをティータは自覚した。
これはまともに考えればおかしな話だ。何といってもティータは傷ついた葉月を保護しただけで、碌に時間も経過していないのである。
彼女が同じ魔王の血を色濃く引く血族であるということもあるかもしれない。
しかしそれだけでは説明のつかないシンパシーは、自分が彼女と同じく、世界中から忌み嫌われ、追われる者であることが大きいのではないか。
孤独を友とし、いつか自分を救い出してくれる誰かを求め続けてきた、そんな寂しい魂が共鳴しあっているような、そんな気がするのである。
何より、異世界からの来訪者である葉月には、このアヴァロンにまつわるしがらみが、一切ないことが素晴らしかった。
(妾は――もうハヅキを手放せないかもしれない……)
両親を亡くしてどれだけの時間を一人で過ごしてきたことか。
ティータはこの愛らしくも孤独な来訪者に、すっかり依存し始めていることを認めざるを得なかった。
(くふふ……次はどう可愛がってあげようかの)
荒い息を吐いて全身を紅潮させていた葉月は、時ならぬ寒気に背筋がゾッとするのを感じたのだった。
――――翌日、流されるままに同じベッドでティータと眠ることになった葉月は、久しく感じることのなかった他人のぬくもりが、これほど安心感を生むものかと改めて気づかされた。
睡魔と格闘しながら、動物的な本能でティータがお尻を揉もうとしてくるのも、それに比べれば些細なものに感じられる。
いや、乙女としてそれはどうか、と思わなくもないのだけれど。
もう何年も経験したことのない熟睡――御防人の夜襲を警戒していつでも起きられるようにしていた――は身も蕩けるほどに甘美なものであった。
長年の、魂にまでこびりついたような恐怖と猜疑と孤独が、綺麗に洗われていくような感覚である。
たとえようもない恍惚感に浸って、葉月は瞼を開く。
すると悪戯っぽく微笑んだティータが、愛おしそうに目尻を下げて葉月を見つめていた。
目と目があった瞬間、たちまち葉月は赤くなって絶句した。
ティータが、自分の寝顔を見つめていたことに気づいたからだ。
「ななななっ! 何見てるんですか! 私の寝顔なんて……!」
「可愛い寝顔じゃったぞ」
「ふにゃああああっ!」
羞恥のあまり、葉月は再びシーツを頭からかぶる。
これが兄妹や友人であれば、これほどの羞恥は感じなかったかもしれないが、ティータは葉月がこれまで見たこともない絶世の美女である。
葉月が人形のような硬質の可愛らしさだとすれば、ティータのそれはまさに肉感的な造形美そのものだ。
彼女の前には女神ですら、その美しさが霞むであろう。
いかにも小動物的な葉月の反応にティータの悪戯心がむくむくと鎌首をもたげてしまったとしても誰が責められるだろうか。
「ほらほら、顔を出して。おはようハヅキ」
優しく微笑んでシーツをめくるティータに、葉月も決まり悪そうに視線をそらしながら返事を返した。
「おはよう、ティー……んむっ?」
観念してシーツから顔をのぞかせた葉月に覆いかぶさるようにして、ティータの長いまつ毛と、潤いに満ちながらも肉厚のある唇が迫っていた。
そして二人の距離がゼロになり、ティータの唇が、葉月の小さな唇を包むようにして、まるでついばむように一回、二回と唇は重ねられた。
「葉月らしい、なんとも可愛らしい唇じゃな」
小ぶりだが、弾力と柔らかさに満ちて、ほのかに甘い。
機嫌よさそうに破顔するティータの前で、みるみるうちに葉月の瞳が潤み、目じりに涙が溜まり始めるとさすがにティータはあせった。
「ど、どうしたのだ? ハヅキ! どこか具合でも……」
「――私のファーストキスを返せ! ばかあああああ!」
ドゴオオオオッ!
「ふんもっふ!」
葉月の渾身のボディーブローを食らったティータは、弾丸のように弾け飛んだ。
しかし肉体的には大ダメージを負いつつも、葉月のファーストキスの言葉に、してやったりと会心の笑みを浮かべているあたり、割と余裕がありそうである。
「いたたたたたた……ハヅキは照れ屋じゃのう……」
「どうしてその程度で済んでいるのかわからないけど、貴女には手加減する必要はないことだけはわかったわ」
ポキリポキリと指を鳴らす葉月の鬼気迫る様子に、ティータは顔面を蒼白にしていやいやと首を振った。
一見何事もなさそうな顔をしているが、葉月の一撃のダメージは危うくリバースするほどには効いていたのだ。
まともな人間なら間違いなく、悶絶どころでは済まなかったはずである。
葉月も葉月だが、ティータの耐久力もたいがいと言えるだろう。
「だ、だいたいだな。家族であればおはようのキスは当たり前であろ?」
「どこの家族が起きぬけにマウストゥマウスするっていうのよ!」
「おはようのキスといただきますのキスといってらっしゃいのキスとおやすみなさいのキスは基本ではないのか?」
「あんたの親は何回娘にキスしてたのよおおおっ!」
一生分のつっこみを使い果たしそうな勢いで、葉月は荒い息で絶叫した。
何かが根本的に間違っている気がした。
「……念のために聞くわ。そうでないと貞操が危うい気がするし。ティータの日常を朝から説明してくれる?」
気が付いたら初体験が同性相手、などという事態は決して容認するわけにはいかない。
ティータはいかにも心外な、と肩をすくめると語りだした。
「朝目が覚めたら父上と母上にキスするだろう? 次に顔を洗って歯を磨いたら朝食になるわけだが、お互いに温めたミルクを口うつしで飲ませ合い――――」
「アウトおおおおおおおおおっ!」
何回絶叫させたら気が済むのだろう。
思わず亡き兄に口うつしでミルクを飲ませてもらう情景を想像してしまい、葉月は顔を真っ赤にしてぶんぶんと両手を振った。
「口うつしは親愛表現と同時に、無病息災を願うしきたりと聞いたのじゃが」
「どこをどうしたら口うつしが無病息災になるのよ!」
「唾液は抵抗力を促進するのではないのか?」
「それはいったいどこの本当は恐ろしい家庭の医学よ!」
動物が傷をなめ合うのと、同じ感覚で口うつしをするんじゃない!
「……午前中は畑仕事をすることが多いな。あとは胸を揉んでもらいながら昼寝をするくらいか」
「アウト! アウト! アウト! チェンジいいいいい!」
「何が嫌なのじゃハヅキ? 気持ちいいうえに安眠できて一石二鳥じゃぞ?」
「なんで眠れるのよ! 興奮して眼が冴えちゃうでしょ普通? というかそもそも簡単に胸を揉ませるんじゃないわよっ!」
葉月は、ティータに胸を揉みしだかれる前で本当に良かったと思った。
スキンシップとはいえ、ティータに胸を揉まれるのは、女性としてのプライドとか、いけない感覚とか、問題しかない。
「そ、そんな……葉月の可愛い胸を揉むお昼休みを楽しみにしてたのに……」
「お願いだからほかの楽しみを見つけて頂戴っ! ていうか、今どこを強調した!」
故人の悪口を言いたくはないが、ティータの両親はどういう教育をしていたのだろう。
あまりにも常識をかけはなれたティータが、他者とのコミュニケーションにおいて不利益を被るとはかんがえなかったのだろうか。
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