11 / 111
第十一話 戦い終わって
しおりを挟む その後、ガンバは数回の現地調査を行った。
オクトに察知されるわけにいかないから、リハーサルは出来ない。ぶっつけ本番、一発勝負だ。
僅かな同志を引き連れて、ガンバは死地へ赴いた。もう集落へ戻る事はない。成功しようがしまいが、どうせ死ぬ。
仕舞ってある魔物のコアを見やり、ガンバは手を触れた。
途端に、力を吸い取られてしまう。このコアは触れた途端に所有者の命を貪る性質を持っている、以前試運転で不完全な復活をさせた際、ガンバは数ヶ月昏睡してしまった。
もしも、完全に顕現させた場合……間違いなくガンバは死ぬ。でももう、構わないんだ。
ナルガの居ない世界に、生きている意味なんかない。最期は勇ましく戦って、彼女の下へ向かうんだ。
「ミック」
「なんだい?」
「この数日間、悪くはなかった。束の間だが、お前と居る時間だけは、心が安らいだ」
「そっか。私もさ、夢が叶って幸せだったよ。泡沫に潰れる夢だとしても、私にとって、救いだった」
ミックは馬を並ばせると、ガンバの手を握った。
小さな手を握りしめ、ガンバは唇を真一文字にした。
こんな愚か者のために、彼女は健気に献身をしてくれた。ミックが居なければ、恐らくガンバは、道半ばで倒れていただろう。
彼女には、感謝するしかない。許されるのであれば、彼女に願いを。
「ミック、たった一つだけ、約束してくれないか。俺が死んだら、お前も同じ所へ来てほしい。一人で彷徨うのは、俺でも寂しいからな」
「いいよ。あんたの行く先ならどこへでもついて行ってあげる。私が居る限り、寂しい思いなんか絶対にさせない」
本当は、ガンバにも生きていてほしかった。
でもガンバは、生きるのを諦めている。何度言っても、自分の人生に希望を持てなかった。……自分では、ガンバの希望になれなかった。
ミックは顔を伏せ、涙を隠した。
いいんだ、死後も彼と一緒に居る約束をしたんだ。生きて出来なかった事を、死んでから沢山、思う存分やってやる。
「さ、声を上げなよ。リーダーのあんたが暗くちゃ、皆やる気が出てこないよ」
「ああ……同志達よ! 雌伏の時は終わった! これより我らは、勇者オクトへの返報を行う! 奴は我らの誇り、我らの尊厳! 我らの象徴を奪い破壊した賊だ! 魔王様、ナルガ様への弔いのため、今こそ命を使う時! 必ずや彼奴を、勇者を滅ぼし! 我らが復讐の雪辱を果たすのだ!」
勇ましい雄たけびが上がった。ガンバ達は馬を駆り、作戦のポイントまで走っていく。
彼らにとって、最期の時間が幕を開けた。
オクトに察知されるわけにいかないから、リハーサルは出来ない。ぶっつけ本番、一発勝負だ。
僅かな同志を引き連れて、ガンバは死地へ赴いた。もう集落へ戻る事はない。成功しようがしまいが、どうせ死ぬ。
仕舞ってある魔物のコアを見やり、ガンバは手を触れた。
途端に、力を吸い取られてしまう。このコアは触れた途端に所有者の命を貪る性質を持っている、以前試運転で不完全な復活をさせた際、ガンバは数ヶ月昏睡してしまった。
もしも、完全に顕現させた場合……間違いなくガンバは死ぬ。でももう、構わないんだ。
ナルガの居ない世界に、生きている意味なんかない。最期は勇ましく戦って、彼女の下へ向かうんだ。
「ミック」
「なんだい?」
「この数日間、悪くはなかった。束の間だが、お前と居る時間だけは、心が安らいだ」
「そっか。私もさ、夢が叶って幸せだったよ。泡沫に潰れる夢だとしても、私にとって、救いだった」
ミックは馬を並ばせると、ガンバの手を握った。
小さな手を握りしめ、ガンバは唇を真一文字にした。
こんな愚か者のために、彼女は健気に献身をしてくれた。ミックが居なければ、恐らくガンバは、道半ばで倒れていただろう。
彼女には、感謝するしかない。許されるのであれば、彼女に願いを。
「ミック、たった一つだけ、約束してくれないか。俺が死んだら、お前も同じ所へ来てほしい。一人で彷徨うのは、俺でも寂しいからな」
「いいよ。あんたの行く先ならどこへでもついて行ってあげる。私が居る限り、寂しい思いなんか絶対にさせない」
本当は、ガンバにも生きていてほしかった。
でもガンバは、生きるのを諦めている。何度言っても、自分の人生に希望を持てなかった。……自分では、ガンバの希望になれなかった。
ミックは顔を伏せ、涙を隠した。
いいんだ、死後も彼と一緒に居る約束をしたんだ。生きて出来なかった事を、死んでから沢山、思う存分やってやる。
「さ、声を上げなよ。リーダーのあんたが暗くちゃ、皆やる気が出てこないよ」
「ああ……同志達よ! 雌伏の時は終わった! これより我らは、勇者オクトへの返報を行う! 奴は我らの誇り、我らの尊厳! 我らの象徴を奪い破壊した賊だ! 魔王様、ナルガ様への弔いのため、今こそ命を使う時! 必ずや彼奴を、勇者を滅ぼし! 我らが復讐の雪辱を果たすのだ!」
勇ましい雄たけびが上がった。ガンバ達は馬を駆り、作戦のポイントまで走っていく。
彼らにとって、最期の時間が幕を開けた。
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる