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人類史上もっとも多くの生命を飲み込んだ湖 バイカル湖
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バイカル湖はロシアシベリアに位置する地球最大の湖であり、その広さは実に琵琶湖の四十六倍を誇る。
水深も1634mと世界の湖のなかでもっとも深く、世界でもっとも古い古代湖であるとも言われている。
非常に透明度の高い水質で、別名シベリアの真珠ともいわれるバイカル湖だが、その歴史は悲劇で彩られていた。
ロマノフ王朝がロシア革命によって滅ぼされ、ソビエト政府率いる赤軍と、旧帝政ロシア側の白軍はそれぞれ一歩も退かず泥沼の内戦を繰り広げていた。
しかし1919年11月、白軍の重要拠点であった東オムスクが陥落すると、白軍の劣勢は隠せぬものとなった。
彼らはソビエト政府の弾圧から逃れるように、さらに東へ、シベリアへの逃避行を開始する。
白軍兵士50万人、そして貴族や僧侶その家族の数は75万人に達しようとしていた。
まだシベリア鉄道もない時代、彼らは徒歩によって8000キロもの大移動を開始したのである。
折悪しく季節は冬。気温は毎日氷点下20度を下回り、激しい吹雪などで凍死者が続出した。
20万の人間が一晩で凍死した日もあった。それでも、「死の行進」は休むことなく続けられ、3ヵ月後には125万人がたった25万人となってしまった。燃料、食料も底をつき、運搬用の馬も次々と倒れていった。
残った25万の人々は、それでもなんとか2000キロ離れたイルクーツクまでたどり着いた。しかし、人々の前には凍った巨大なバイカル湖がたちふさがっていたのだ。
湖の向こう側にいけば、赤軍の手から完全に逃れられる。
というより今さら湖を迂回する食糧も体力も彼らには残されていなかった。
最後の力を振り絞って人々は厚い氷に覆われた、巨大なバイカル湖を横断しはじめた。ところが自然はそれを許してはくれなかった。
もともとバイカル湖周辺はブロッキング高気圧が発生しやすく、天候が荒れやすい。
疲れ切った前代稀に見る激しい寒波が彼らを襲った。
猛吹雪により気温は例年を下回る氷点下30度まで下がり、一瞬にして意識を失うほどの強烈な寒さで、人々は歩きながら次々と凍っていった。
たまたま産気づいてしまった妻を隠すように覆いかぶさった夫は、妻と生まれた子供ともども凍りついて立ったままの氷像と化した。
湖の上を走る竜のように、うねうねと曲がりくねった氷像の列は、やがて春を迎えて溶けだした湖面にゆっくりと飲み込まれていく。
オムスクを離れた125万人もの逃亡者は、一人残さずバイカル湖の青い湖面に消えていったのである。
これは有名な都市伝説であり、125万の死者は現在もなお確認されていない。
しかし人が立ったまま凍死する事故が絶えない、厳寒の気候であることもまた事実である。
というか、共産圏の死者数は、都市伝説かと思うと実際はそれ以上死んでいたりする魔境なので、あるいは死者数はさらに多いという可能性も否定できない。
水深も1634mと世界の湖のなかでもっとも深く、世界でもっとも古い古代湖であるとも言われている。
非常に透明度の高い水質で、別名シベリアの真珠ともいわれるバイカル湖だが、その歴史は悲劇で彩られていた。
ロマノフ王朝がロシア革命によって滅ぼされ、ソビエト政府率いる赤軍と、旧帝政ロシア側の白軍はそれぞれ一歩も退かず泥沼の内戦を繰り広げていた。
しかし1919年11月、白軍の重要拠点であった東オムスクが陥落すると、白軍の劣勢は隠せぬものとなった。
彼らはソビエト政府の弾圧から逃れるように、さらに東へ、シベリアへの逃避行を開始する。
白軍兵士50万人、そして貴族や僧侶その家族の数は75万人に達しようとしていた。
まだシベリア鉄道もない時代、彼らは徒歩によって8000キロもの大移動を開始したのである。
折悪しく季節は冬。気温は毎日氷点下20度を下回り、激しい吹雪などで凍死者が続出した。
20万の人間が一晩で凍死した日もあった。それでも、「死の行進」は休むことなく続けられ、3ヵ月後には125万人がたった25万人となってしまった。燃料、食料も底をつき、運搬用の馬も次々と倒れていった。
残った25万の人々は、それでもなんとか2000キロ離れたイルクーツクまでたどり着いた。しかし、人々の前には凍った巨大なバイカル湖がたちふさがっていたのだ。
湖の向こう側にいけば、赤軍の手から完全に逃れられる。
というより今さら湖を迂回する食糧も体力も彼らには残されていなかった。
最後の力を振り絞って人々は厚い氷に覆われた、巨大なバイカル湖を横断しはじめた。ところが自然はそれを許してはくれなかった。
もともとバイカル湖周辺はブロッキング高気圧が発生しやすく、天候が荒れやすい。
疲れ切った前代稀に見る激しい寒波が彼らを襲った。
猛吹雪により気温は例年を下回る氷点下30度まで下がり、一瞬にして意識を失うほどの強烈な寒さで、人々は歩きながら次々と凍っていった。
たまたま産気づいてしまった妻を隠すように覆いかぶさった夫は、妻と生まれた子供ともども凍りついて立ったままの氷像と化した。
湖の上を走る竜のように、うねうねと曲がりくねった氷像の列は、やがて春を迎えて溶けだした湖面にゆっくりと飲み込まれていく。
オムスクを離れた125万人もの逃亡者は、一人残さずバイカル湖の青い湖面に消えていったのである。
これは有名な都市伝説であり、125万の死者は現在もなお確認されていない。
しかし人が立ったまま凍死する事故が絶えない、厳寒の気候であることもまた事実である。
というか、共産圏の死者数は、都市伝説かと思うと実際はそれ以上死んでいたりする魔境なので、あるいは死者数はさらに多いという可能性も否定できない。
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