32 / 250
京都長岡ワラビ取り殺人事件
しおりを挟む1979年5月23日、長岡天神駅前のスーパー「イズミヤ」のパート仲間で、長岡京市に住んでいた水野さん(当時32歳)と明石さん(当時43歳)はスーパーの仕事を終え、そのまま自転車で午前10時、同市奥海印寺の通称「野山」(美竹台住宅地の裏山河陽が丘内の竹林)にワラビ採りに出掛けた。野山は標高も低く近所の人が山菜やタケノコ狩りをピクニックがてら家族で楽しむような場所だった。
しかし何度もワラビ採りに出かけていたはずの明石さん、3時半には子供を保育所に迎えに行く予定だった水野さんはそのまま消息をたった。
家族の通報を受けた向日町署が捜索したところ、25日午前10時半ごろ、山頂近くで2人の遺体を発見した。水野さんは左胸を包丁で刺され、明石さんは首を絞められて死んでいた。
現金や腕時計など2人の所持品は奪われていなかった。持ち歩いていたリュックの中には、所持金、空の弁当、ワラビの束がそのまま入っていたことと、検死の結果から二人は昼食の弁当を食べた正午過ぎから午後2時半の間と考えられた。
明石さんのはいていたジーパンの右ポケットから、「オワレている たすけて下さい この男の人わるい人」と裏に鉛筆で走り書きされた、勤め先のスーパー「イズミヤ」のしわくちゃのレシートが見つかった。
警察の捜索は徹底していて現場の山道の表層土砂を全部ふるいにかけて、メモを書いたのに使用されたと思われる鉛筆の芯(先の部分)を遺体から約17メートル離れた土砂の中から発見しているが鉛筆自体は見つかっていない。おそらくは犯人が持ち帰ったものと思われる。
主婦2人の遺体にはそれぞれ数十カ所殴られた跡があり、骨の痛み具合から判断して犯人は空手などの武術の心得がある者との見方が有力である。
また主婦から採取された体液を警察庁科学警察研究所で鑑定の結果、犯人の血液型はO型と判明している。だが、白昼に主婦2人を一度に襲い、多数の殴打の跡があることなどから複数犯の可能性もある。
遺留品は凶器の包丁だけ。だが、指紋は検出されなかった。岐阜県関市で作られた約7万本の中の1本とみられているが、販売ルートは解明されていない。
府警捜査本部(向日町署)は捜査員延べ約二万五千人を投入。犯人は足跡などからスニーカーを履いた力の強い男などとわかった。
犯行当日は山菜取りシーズンだったので、15・6人が野山に入山しており車両も5・6台駐車していた。宅地造成地があり、大阪府豊中市から40数名の作業員が工事に携わっていた。
被害者の暴行の跡は絶句の一言である。
明石さん・・・(43歳)全身約30箇所の皮下出血、手拳や蹴り上げられたような跡があった。左右計9本もの肋骨が折れ、しかも肝臓が破裂していた。
シャツに乱れはあったものの、きちんとジーパンをはいていた、が、膣内からは体液が検出され暴行された形跡があった。首を両手で絞められたことによる窒息死。
水野さん・・・(32歳)は約50箇所の皮下出血、同じく手拳や蹴り上げられたような跡があった。衣服に0型の血液型と特定された体毛が付着していた。胸を包丁で刺傷した事による失血死。
胸には肋骨を切断して、心臓から肺にまで達する包丁が突き刺さったままだった。発見当時、下半身の下着が引き裂かれて、ジーパンや靴が遺体近くに散乱しており、性的暴行を受けた可能性も示唆していたがこちらは体液は検出されなかった。
●『別冊宝島Real 迷宮入り!?未解決殺人事件の真相―真犯人たちは、いまどこにいるのか? 』
田宮 栄一(編)宝島社2003年10月 より以下抜粋
○長岡京市内に住む不良グループのKとM(建築手伝い)。殺害時間直後に野山から急ぎ足で下山してきたという目撃情報があり重要参考人となった。Kには空手の心得もありサイクリング車でたびたび野山への道を走っていた。
○主婦二人が野山を上っていった10分後に入山した25歳から30歳くらいの白いシャツ、ジーパンのようなズボンの二人連れ。身元判明せず。
○事件の前年同時期にワラビ採りをしていた主婦に声をかけた、40~45歳くらい、身長170cmのねずみ色の作業着を着た男。長さ30cmくらいの包丁を持ち、奥さん、ワラビ採れますか」と声をかけた。
○事件の数年前から横行していたタケノコ泥棒。タケノコを掘り返すのではなく、地上に出た部分を包丁できりとり持ちかえるというもの。事件発生後1年間で被害がぷっつり消えた。
(警察が出入りしているんだから当たり前だが・・・・・)
○現場付近に残されていた足跡の中で、登山靴やレジャーシューズのような溝のある靴跡ではなく、二つだけ革靴の可能性が高い溝も模様もない足跡があった。6日前にワラビ採りをしていた主婦に声をかけた挙動不審な中年男(似顔絵が作成され、一般公開された)。
スポーツシャツで軽装。サラリーマンタイプの男。
1994年5月24日、有力な手掛かりを得られぬままこの事件は公訴時効が成立した。
時間の経過を考えるならば真犯人が生きているうちに名乗りでないかぎり、この事件の謎が解明することはないだろう。
さらにこの事件が恐ろしいのは後日談があったということだ。
実はこのとき、ワラビ取りにいっていたのは二人ではなかったのである。
もう一人の主婦が同行していて、急な所要のために途中で引き返して事なきを得ていたのだった。
○中日新聞1984年05月16日(水)朝刊主婦殺し放火 京都 首や背中メッタ刺し
【京都】十五日午後二時五十分ごろ、京都府長岡京市神足xノxノx、国鉄職員xxさん(54)方から出荷、木造二階建て約百十平方メートルのうち、一回の六畳居間の一部を焼いた。
居間からxxさんの妻xxさん(48)が死体で発見された。体に刺し傷があり、京都府警捜査一課は殺人放火事件と断定、向日町署に捜査本部を置き捜査を始めた。
調べによると、xxさんは居間の中央にうつ伏せになって倒れており、左耳の下に深い傷が数カ所あり、背中にも十数カ所の切り傷があった。
死体の上には居間の押入れにあった衣類数十点と布団数枚が高さ五、六十センチにわたり重ねられ、布団や布団からはみ出ていた手足や頭の一部、周囲の畳が燃えていた。一、二階には点々と血痕があった。
同本部は、犯人がxxさんを刺殺した後、放火したとみて物色の跡や被害品の有無などを調べている。xxさんは左耳下の傷の出血による失血死か、目にうっ血の跡があることから首を絞められたことも考えられるとして、十六日遺体を解剖し詳しい死因を調べる。
隣家の主婦が火事に気付き声を掛けたが応答がなかったため一一九番。消火作業に当たった消防士の話では、xxさん宅の裏口が開いていたという。
xxさん方は夫婦と会社員の長男(27)長女(23)の四人暮らし。事件当時はxxさん一人だった。近くに住む小学校時代の同級生の男性(48)は
「恨みを買うような人ではないのだが」 と話していた。
現場は国鉄神足駅の約百五十メートル北西で,商店街に面した古くからの住宅街。昼間は人通りが少ない所。
奇跡的な偶然で生き残った主婦もまた怨恨としか思われぬ方法で惨殺。
いったい彼女たちの背後にどんな関係があったのか。
これはソースもとれぬ都市伝説であると断っておくが、実は主婦は売春を通じて暴力団組織とつながりがあったという噂もある。
いずれにしろ人気のない山で惨殺された彼女たちが、真相を語ることは永遠にないのである。
12
お気に入りに追加
1,653
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる