上 下
10 / 250

金閣寺の謎

しおりを挟む
 京都に修学旅行に行ったならば必ずや訪れるであろう金閣寺。
 そのまばゆい金箔の輝きに目を奪われる学生は多いであろう。管理人なども銀閣寺などより印象深く思ったものである。
 しかし高校生当時は知らなかったがこの金閣寺、決して見た目が派手なだけの寺ではない。
 いや、そもそもは寺ですらないのだ。
 そこには将軍足利義満の知られざる野望や現代に忘れ去られた驚異の構造が存在した。



 金閣寺は正式な名称を鹿苑寺といい、足利義満の法号である鹿苑院にちなんで名づけられてる。
 もともとは京都北山の義満の山荘であり、死後寺に改築されて現在の鹿苑寺となった。
 臨済宗の名僧夢窓疎石によって開山され、現在は臨済宗相国寺派に属している。
 この金閣寺、非常に特殊な造りをしていることで知られている。
 3階建の1階部分は寝殿造りであり、公家の様式で建築されているのだが、2階部分は武家造りであり、3階の究境頂は中国風の禅宗様で造られている。
 これは公家よりも武家がえらく、その武家よりも義満がえらいということを暗示していると言われている。
 当時義満は禅宗の僧として出家しており、また中国の明から日本国国王に任命されてもいた。
 自分こそは最高権力者であるというわけだ。
 このような見解に至る傍証はほかにも数多い。
 たとえば金閣寺の屋根の頂点には黄金の鳳凰が飾られているが、これは非常に縁起の悪い、というよりも皇室にとっては無礼な代物である。
 なぜなら鳳凰とは中国で新たな天子が現れたときに地上に姿を現す瑞鳥とされており、天皇家が交替することを暗示しかねないものであるからだ。
 日本のどこを探しても鳳凰をここまで堂々と見せつけているのは金閣寺以外に平等院鳳凰堂があるのみである。
 平等院鳳凰堂も摂関政治が頂点に達し、「この世をば、我が世とぞ思う」と詠んだ藤原道長の息子頼道が建てたことも天皇家に対する軽視が生んだことを暗示しているように思えてならない。

 また当時内裏の北側には相国寺の七重の塔がそびえ立っていて内裏を見下ろすような立地に眉をひそめる者は多かった。
 現在東京で建築される高層ビルには、皇居を見下ろすことが出来ない程度の高さにするという暗黙の了解があるが、当時はこうしたタブーに対する批判はさらにつよかったであろうと思われる。



 全長109m東大寺五重の塔が54mなので桁外れの高さを誇る。たびたび放火されその後再建されることはなかった。


 それだけではない。
 天皇家が使う鴨川の水は一旦相国寺に引きいれられ、相国寺を経由して御所に届くようになっていた。
 その気になればいつでも御所の飲料水を差し止めることができたのである。
 次男である義嗣を皇太子格とし、自らも太政法皇(出家した天皇のこと)の宣旨を受けた義満の野望がどこまで先を見据えていたかはわからない。
 興味のある方は井沢元彦氏の天皇になろうとした将軍を是非ご覧になっていただきたい。


 
 さて、金閣寺をめぐる謎はそれだけではない。
 金閣寺といえば誰もがその燦然と輝く金箔を思い浮かべるが、戦前の観光案内で金閣寺の売り文句は別にあった。
 
 「金閣寺をごろうじなしたか、なんと楠一枚板ではないか」

 という唄い言葉もあったという。
 金閣寺の3階部分である究境頂の天井はなんと一本の楠から切り出されたというのである。

  現在日本最大と言われる蒲生の大楠は 高さ30m、幹回り24.22mの巨大さだ。


 究境頂の天井はおよそ3間、つまり5.4mである。
 この一辺が5.4mの正方形を切り出すには日本最大の蒲生の大楠でも足りない。
 最低でも幹回りで26m以上のサイズが必要なのである。
 あの有名な屋久島の縄文杉でも幹回りは16mほどでそれでも樹齢は3000年を超えるという。
 いったいどれほど巨大で長い年月を生きてきた楠から切り出されたのか、金閣寺に保管される資料からはいっさい窺うことができない……。


しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...