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番町皿屋敷お菊さんの正体

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管理人が中学生のころ、ハロウィンという恐怖雑誌が創刊された(現在は廃刊)
そこで連載されていたカルラ舞うシリーズと生き人形以来のファンで永久保貴一先生がいる。
このお菊さんの考察は、歴史民俗学に精通した永久保先生のものであり、非常に興味深く拝見した。



 そもそも番町皿屋敷とは、現在の東京都千代田区に住む(大番衆の屋敷が並んでいたことから番町とよばれていたらしい)青山主膳の屋敷のこととされる。
 ここに勤めていた女中のお菊が、伝来の皿を割って罪を着せられ手討ちにされたとも井戸に身を投げたとも言われ、祟りがあったというお話である。
 しかしお菊が死ぬ理由にはいくつかのパターンがあり、もっとも有名なのは愛人になることを断られたため腹いせに罪をなすりつけたというものであろう。
 逆に二人が相思相愛であって、お菊が愛する主人の心を試すためにあえて皿を割った。そして愛情を疑われたことに激怒した主人によって手討ちにされたという悲恋のパターンもある。
 さらに岡山県の播州皿屋敷では家老の横領の企みをお菊が盗み聞きしてしまったために、秘密を保持するためお菊を冤罪で処刑したというスパイものパターンまであるのである。

 ここで少し脱線するが、大番衆が所持する先祖伝来の色絵皿の価値はいかほどであろうか。
 当時の高級色絵皿といえば、南京、万暦、日本なら色鍋島、そんなあたりの十枚組完品となると現在の価値に換算すると数千万から下手をすると億に届く可能性があり、しかもそれは先祖の手柄を証明する品であったはずである。
 たかが皿を割っただけじゃん、という現代の感覚で判断してはならないことは覚えていただきたい。

 さて、この皿屋敷だが実は日本中に存在する。
 番町、播州ばかりか島根県、福岡県、兵庫県、長野県、高知県、大阪府、群馬県、京都府さらには管理人の大学時代を過ごした埼玉県熊谷市の隣、行田市にもあるようだ。
 いったいなぜこれほど全国的に皿屋敷の伝承が残されているのか。
 民俗学の大家である折口信夫先生は、「お菊の伝承はククリヒメと関りがある。これはヒントにとどめる」という言葉を残された。

 ククリヒメという神様はなんだろう?
 菊理媛といい、また別名を白山比羊という。
 全国二千七百もある白山神社の祭神であり、曹洞宗の裏神でもある。
 この裏神というのは、表の宗派を闇から擁護するバックボーンのことで、例えば真言宗の裏神は荼枳尼天であり、天台宗の裏神は摩多羅神だ。
 そんなククリヒメであるが、古事記には黄泉平坂で伊弉諾尊に助言を与えるワンシーンにしか登場しない。


 永久保先生の考察によれば、ククリヒメとは文字通りくくられた存在。
 すなわち生贄である。
 かつて古代の日本では稲作の豊穣を願い毎年娘が生贄に捧げられていた。
 この伝統を廃したのがスサノオであり、生贄から救われた稲田姫こそがククリヒメの原形。
 さらに皿屋敷の皿はおそらくさらし首のさら、番町の番は処刑の番人(番太と呼ばれていた)ではないか。

 つまり農耕文化のなかでかつて行われていた生贄の儀式。
 その伝承が昇華され神となったのがククリヒメ、零落して化け物となったのがお菊。
 両者はもともとは同一の存在だったのではないか、という圧巻の考察でした!

 興味のある方は「検証皿屋敷」 ナンバーナイン をお読みください!

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