恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文

高見 梁川

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向かい合ってるふたつの神社

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 これは、ハイキング中に見つけた奇妙な2つの神社の話である。

 谷底の道の両脇に鳥居を構え、急斜面に石段を積み上げ、向き合っている2つの神社があった。
 
 急ぐ山行ではないので、まず右側の石段を登り始めたが、気まぐれを起こした自分を恨みたくなるほどキツイ登りだった。

 ようやく上までたどり着くと、そこには小さなお堂があり、こんな場所にしては珍しく多くの絵馬がぶら下がっていた。

 絵馬というより木簡に近い代物だが、そこに書かれているのは、“何者かを深く怨み、不幸を願う気持ち”である。

※木簡(もっかん)

主に古代の東アジアで墨で文字を書くために使われた、短冊状の細長い木の板である。紙の普及により廃れたが、完全に存在を消したわけではなく、荷札などには長く用いられた。(Wikipediaより)

 木簡には、記入者の持ち物と思われる時計や筆記用具などが縛り付けられている。

 鈴なりに提げられた木簡の脇には、未記入の新しい木簡が真っ黒い木箱に入れられていた。

 嫌な気分で石段を降り、下まで行けば、そこには向き合って建つもう1つの神社の石段が聳えていた。

 ふとどうするべきかと考えたが、このまま立ち去るのは非常に心残りなので、先程の神社を背中に感じながら目の前の石段を登りつめた。

 小さなお堂に、ぶら下がった木簡。

 向き合った斜面に同じような光景が広がっていた。

 しかし手にとって読んだ木簡に書かれていたのは、“誰かの幸福や成功を願う言葉”である。

 受験合格祈願のように記入者本人に向けられた言葉もあった。

 そして、やはり身の回りの品が結び付けられている。

 だが幸福を願う気持ちに触れても、なぜか心が温まらない。

 腑に落ちぬ思いを抱えて石段を降りていると、竹ぼうきを持った七十半ばほどの老人が登ってきた。

 老人は俺の顔をじっと見つめ、「お前、奉納に来た顔じゃないな」と言うと、そのまま石段に腰を降ろしてしまった。

 成り行き上、俺もそこに座らざるを得ない。

 語りだした老人によれば、木簡を記入して奉納するなら、『両方の神社でそれをしなければならない』ということだった。

 怨むだけではダメ。

 幸福を願うだけでもダメ。

 決まりを守らない場合、記入者本人をとんでもない不幸が見舞うとのことだった。

 

「死ぬんですか?」


「寿命が伸び、ひたすら苦しんで生き続ける」


「幸福を願うだけでも?」


「そのようだ」


 怨み、不幸を願う木簡は、幸福を願う木簡よりも圧倒的に多かった。

 そして、もう1つの決まりごとを教えられた。

 『自らの不幸、幸福を願って奉納してはならない』

 果たしてここに奉納した人たちは、どんな未来が訪れたのだろうか。
 

 ちなみに、この山は首都圏にある。

  
 めっちゃ気になるので情報をお持ちの方管理人まで是非お知らせ願います!!
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