恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文

高見 梁川

文字の大きさ
上 下
167 / 250

迂回路に巣くう者

しおりを挟む
188 :1:2005/06/08(水) 15:12:30 ID:T8/BXARX0
2年ほど前のことです。
いつものようにデートのあと、付き合っているM君に下宿まで送ってもらっていました。
M君は自称霊が見える人で、当時私はあまり信じていなかったと言いますか、
そのことについて深く考えたこともありませんでした。
しかし、いつもそのことを思い出してしまうのが、この帰り道です。
実は帰り道の途中には、彼がどうしても通るのを嫌がる道があり、
そのため、いつもその道を迂回して送ってもらっていました。
彼いわく、その道には何かありえないようなものが憑いているので、近づきたくもないそうです。

でも、その日のデートはかなり遠出したこともあり、私はものすごく疲れていて、
少しでも早く家に帰りたいと思っていました。
この道を迂回すると、ものすごい遠回りをしなければ私の家には帰れません。
だからこの道を通って帰ろうとM君に提案したんですが、彼は頑なに反対。
結果ほとんど言い争いのようになってしまいました。
(というか、私が一方的に怒っていて、彼が必死に止めようとしていただけかも。ごめんM!)
最終的には、私がひとりでもこの道を通って帰ると主張すると、
M君もひとりで行かせるくらいならと、ついてきてくれることになりました。

その道に入ると、M君は目に見えて怯えていて、顔は真っ青でした。
時間は23時くらいでしたが、街灯もあって真っ暗というわけでもなく、私からすると普通の道。
私もやはり気になって訊いてみても、「今はまだ大丈夫」ということでした。
少し進むとY字路になっていて、私の家に帰るには左の方の道です。
このあたりになるとM君も少し落ち着いてきていて、
私も安心して、何の躊躇いもなくY字路の左側の道に入りました。

左側の道に足を踏み入れた瞬間、何か急にあたりの雰囲気が変わりました。
物音が一切しなくなって、心もち明かりが暗くなりました。
(M君がいうには、『本能的に目の前のものに集中したため、視界が狭まっただけ』ということです)
足が寒いところにずっと立っていたあとのように痺れて引きつり、上手く歩けません。
力も入らないので、その場に座り込んでいてもおかしくなかったのですが、
なぜかその引きつった足が体を支えていて、私はその場に立ち尽くしました。



77: 名無しさん@おーぷん 2015/06/22(月)22:13:20 ID:0wK
189 :2:2005/06/08(水) 15:12:49 ID:T8/BXARX0
いきなり前方から、ゴッと突風のようなものがきました。
感覚としては、すぐ横を電車や大型車が通過したときのあの感じです。
そしてその瞬間、
「サリョ(鎖虜?左路?)じゃ!サリョじゃ!」
という、大小の声があたりに鳴り響きました。
近いものは私のすぐ耳元で聞こえました。

突風のようなものが過ぎ去ったあと、私は呆然と立ったままでした。
M君は、先ほどまでとは比べ物にならないくらい血の気のない顔をしていましたが、
急に私のほうにやってきたかと思うと、ものすごく必死に私の足を何度も何度も平手で叩きました。
あとで赤く腫れ上がるくらい力を入れて叩かれたのですが、
このときは足の感覚がなく、全く痛みを感じませんでした。

でもすぐにやっぱり痛くなってきて、同時に足に感覚が戻って、私は地面に崩れ落ちました。
横を見るとM君も地面に座り込んで、相変わらず顔色は悪いのですが、
「もう大丈夫だから」と息を切らせていました。
M君によると、左の道に入った瞬間、前の方から黒いモヤモヤしたものが雪崩のように流れてきて、
私たちの体を包み込むように吹き抜けて行ったそうです。
私の足にはその黒いモヤモヤから出てきた無数の手が絡みついていたそうで、それを払い落としていたのだとか。
そのあとM君は、泣いている私を背負って下宿まで送ってくれて、朝まで一緒にいてくれました。愛だね。

その後、私は怖くてその道に近寄ることはなかったのですが、
半年ほどたって恐怖が薄れてきたころ、昼間だったら大丈夫だと思って見に行ってみました。
以前に何度か通ったことのある道だったのですが、注意して見てみると愕然としました。



78: 名無しさん@おーぷん 2015/06/22(月)22:13:32 ID:0wK
190 :3:2005/06/08(水) 15:13:05 ID:T8/BXARX0
まず、なんとそのたかだか50メートルほどの道に(Yの字になっていますが)、
小さな祠やお地蔵さまが計7つも密集しているんです。
そして、その道に面した家の玄関のほぼ全てに盛り塩がしてありました。
中にはお酒が置いてあったり、何枚ものお札がベタベタ貼ってある家も。
そして、この周辺ではありえないくらい、廃屋と化した空き家が目立ちました。
そういえば最初のほうで書いた、
『この道を迂回すると、ものすごい遠回りをしなければならない』というのもおかしな話です。
区画整備された町並みで、この一画だけ、
周囲の車道は大きく迂回するか、そこで行き止まりになるかしているんです。
唯一このY字路と、そこから分かれた毛細血管のような複雑な小道だけが、そこの交通手段となっています。

気味が悪いので、地元の人間である学校の先輩に訊いたところ、
この一画には昔、いわゆる部落があったそうです。
それだけではなく、戦時中に何か忌まわしい事件があったらしく、部落自体は終戦前になくなったのだとか。
(その事件の内容はタブーとされているらしく、先輩も知りませんでした)
しかし、地元の人間も忌諱して、その後もずっとその土地には手をつけず、
20年たって、ようやく外から来た人間が住み始めたのだとか。

いったい部落で何があったのか。『サリョ』というのは何なのか。
気になりますが、先輩やM君の忠告もあり、私はそれ以上調べることを止めました。
みなさんも、もし兵庫県の、某有名暴力団本部のある都市に行かれることがあれば、気をつけてください。
何故か主な車道が途切れたり迂回しているからと言って、むやみに近道しないように。


これ、「サルリョジョ」という韓国語かもしれない。
フランス語のHほどじゃないけど、韓国語はRの発音が日本語に比べて小さい。
しかも語調が強いので「サリョジャ!」に聞こえる。
「サルリョジョ」の意味は「助けて!」
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...