恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文

高見 梁川

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だからフラグは立てるな、とあれほど――

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アメリカ合衆国の南北戦争当時、ジョン・セジウィックという将軍がいた。
勇猛果敢な将軍であったらしく、頻繁に負傷しており特に南北戦争の転換点のひとつ、「アンティータムの戦い」では三発の銃弾を浴びるという重傷を負った。
部下たちにはジョンおじさんと慕われ、身をもって勇気を部下に示す古き良き時代の軍人であったようだ。

負傷はするものの、順調に戦歴を重ねていくジョンは1862年には軍団長にまで昇進した。
派手さはないが、堅実な用兵家であり、決して猪突猛進型の猛将ではなかったという。北軍の総指揮官であり後の大統領ユリシーズ・グラントの信頼も厚かった。
余談になるが、映画ダンスウィズウルブスに登場するセジウィック砦は、おそらくジョンが名前の由来である。
しかし前線に身を置くスタイルはその後も変わらず、部下の参謀などは「もう少し安全な場所から指揮してください」と進言を繰り返していた。
そのたびにジョンはこう答えたという。
「指揮官が死を恐れぬからこそ兵士は勇敢に戦える」

その言葉は完全に正しく、指揮官先頭は旧世代の戦争の華であったともいえる。
だが南北戦争は、おそらく近代最初の総力戦であり火力戦であった。
ナポレオンの登場以後、指揮官先頭はあまりに危険で致死率の高いものになろうとしていた。
それでもジョンは最前線で戦い続けた。


「この戦争はもうすぐ終わる」
ゲティスバーグの戦いに勝利した後、ジョンはそう口にしたという。
事実その後、南軍がかつての勢いを取り戻すことはなく、絶望的な防御戦闘を行うのみになっていく。
「今年のクリスマスには間に合いそうだ」
残念ながらクリスマスまでに終わると言われて終わった戦争はない。
とはいえ9月にはアトランタが、翌年5月には首都リッチモンドが陥落したことを考えれば、ジョンの考えはそれほど的外れではなかったともいえる。
だが、それを口にしてしまったことが大問題だった。


運命の1864年5月9日大砲陣地の構築中、一発の銃声が轟き参謀や士官たちは慌てて物陰に隠れた。
その様子を見ていたジョンは呆れたように大仰に首を振った。


「たった一発の銃弾に何をそんなに怯えているのかね? これほど距離が離れていれば、たとえ私が象でも敵の弾など当たりゃし――――」


ピコーンとジョンの頭にフラグが立ったかどうかは定かではない。
しかし彼の死は味方ばかりか、敵の総司令官ロバート・エドワーズ・リー将軍をも悲しませたという。
死に方はともかく優秀で尊敬に値する人物であったことは間違いあるまい。
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