異世界転生騒動記

高見 梁川

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2巻

2-2

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 教室から出て東側の階段を降りると、そこには各種の武装や訓練設備の整った、大きな闘技場がある。
 王立なだけあって潤沢じゅんたくな装備が置いてあり、コルネリアスではなかなか手に入らないきたえの美しい騎士槍を前にしたバルドは、面白そうに視線を彷徨さまよわせていた。

「バルド候補生、身体強化は使えるのか?」

 ロンバルドが後ろから声をかけた。

「問題ありません」
「そうか」

 いかに騎士学校といえど、入学前に身体強化をおさめている者はまれである。
 子供が身体強化に失敗して暴走すると、取り返しのつかない惨事さんじを招くことがあり、それを防ぐため、優秀な監督者が必要となるからだ。
 バルドはコルネリアス伯爵家の御曹司おんぞうしで、しかも両親が戦役の英雄だから、そんな心配など必要なかっただろうが。
 もしロンバルドがそんなことを考えていると知ったら、バルドは涙ながらにこう反論しただろう。「見守るなんてとんでもない。制御しなければ生き延びられない環境だったんです!」と。
 実際、マゴットは初めてバルドが強化を成功させると、その後は徹底的に実戦形式でバルドを鍛え上げた。
 口でものを教えるより、身体に覚えさせるのがマゴット流であった。

「なら話が早い。俺が相手をしてやろう」
「……光栄です」

 やはりこの人も、母と同じく、スパルタ方式を好むのだろうか。
 まさか編入初日に、しかも自己紹介の流れから講師相手に戦わなければならなくなったバルドは、かろうじてため息をみこんだ。
 ここで醜態しゅうたいをさらせば、学校生活に悪影響を及ぼすのは明白である。
 どういうわけか生徒たちにも注目されているし、同情の視線を向けてくる者までいる。
 もしかするとこの講師、かなりやばい奴なのではあるまいか。
 ――バルドの予想は当たっていた。
 ロンバルド・ウェイスリーは当年とって三十四歳。アントリム戦役の生き残りである。
 長く小隊長を務め、派手さはないものの頼りになる騎士として、紅炎こうえん騎士団に所属した。
 不幸なことに、二十八歳のときに訓練中の事故でひざを故障した彼は、騎士を引退してこの学校の講師に招かれたのだった。
 多くの講師のなかでも、間違いなく五本の指に入る強豪である。
 だからこそ、と言うべきだろうか。
 ロンバルドはバルドの内に秘められた獰猛どうもうな武の気配を、敏感に感じ取っていた。
 見た目には、そんなはずはないと誰もが笑うだろう。
 生徒たちも、小さくて華奢なバルドを講師自らしごくのは、可哀かわいそうだと考えているようだ。
 しかし一見ひ弱そうに見えるバルド自身はあくまでも自然体で、ロンバルドを恐れるような様子は微塵みじんもない。
 転入早々いきなり講師と手合せをするというのに、冷静に事態を受け入れていることがそもそもおかしかった。

(面白い……かもしれんな)

 久しぶりに、戦いの高揚こうように全身が支配されるのを感じて、ロンバルドは唇を歪ませる。
 引退してから久しく感じたことのない、すがすがしい感情だった。


「遠慮はいらん。かかってこい、バルド候補生」

 ロンバルドの身長はおよそ百八十五センチ、体重は九十キロを超える。
 身体能力を見定めるという理由で、互いに武装はしていない。
 せめてバルドだけでも武装させてやれよ、というギャラリーの内心の声は、表に出ることはなかった。

不肖ふしょうバルド・コルネリアス――行きます」

 そんなギャラリーの予想とは裏腹に、バルドはまったく恐れることなくロンバルドに向かって踏み込んだ。遠慮無用というロンバルドの言葉を受け、身体強化も出ししみなく使用している。
 その踏み込みの速さには、観戦していた、普段から無表情のシルクですら顔色を変えたほどだった。

(ほう、予想以上に鋭い……!)

 さすがに講師のロンバルドは、バルドが単純に速いだけではないことに気づいていた。
 身体強化の力に振り回されている者は、その圧倒的な速度に思考が追随ついずいできず、次の動作が遅れてしまう。そのまま相手に体当たりしてしまう粗忽者そこつものもいるほどである。
 しかしバルドは驚くほどの速度で突進しつつも、いつでも左右に方向転換するだけの余裕を残している。
 この柔軟さこそが、ロンバルドには何より驚きだった。
 それは、バルドが非常に高いレベルで身体強化を使いこなしていることの証左だからである。


 見守っている生徒たちの中では、シルクとブルックスだけがロンバルドと同じ結論に達していた。
 シルクは切れ長な金の瞳を大きく見開き、バルドを凝視ぎょうししている。
 一回生のなかでもっとも身体強化に優れた彼女ですら、今のバルドの真似をすることはおそらく不可能であると思われたからだった。

(――何者なの、あの子?)

 他人と関わっている余裕などない。何よりもまず自分が強い力を手にしなくては、悲願への道はひらけない――そう思いこんでいたシルクだが、なぜかバルドには興味を抱かずにはいられなかった。


 あえてフェイントを使わずに、まずは正面からバルドが掌打しょうだを繰り出す。
 だがそこにこめられた膂力りょりょくと速度は尋常なものではない。
 軽くあしらうつもりであったロンバルドも、本気でガードを固め、これを防ぐしかなかった。

(体重は軽いくせになんという重さだ!)

 ガードした左腕がしびれる感覚に、ロンバルドはまるで鈍器で殴られたようだと思った。
 とはいえ十分に余裕をもってその攻撃を受け止められたので、定石じょうせき通り、空いている右手でカウンター気味の拳を見舞う。
 そのときバルドがけざまにとった行動は、ロンバルドの予想をはるかに超えるものだった。

「何ぃっ?」

 気がついたときには、もうすでに、ロンバルドの大きな身体が高々と宙を舞っていた。
 自身の右拳が、わずかなところでバルドに避けられたところまでは記憶にある。
 しかしその後、いったい何がどうなって自分が宙に浮いているのかが、まったく理解できない。
 少なくともロンバルドには、バルドに〝投げられた〟という感覚はなかった。


(――この国では組打術くみうちじゅつはあまり普及していないのかな?)

 なんの抵抗もなく投げられたロンバルドの様子に、バルドはそう思った。
 近代になって柔道が普及するまで、西洋では柔術に類する武術が皆無に等しかったということを、バルドの前世であるおか雅晴まさはるが記憶していた。
 おそらくは戦闘スタイルと身体能力の差によるものであろう。
 組打術――古流柔術に分類されるそれは、戦国期、相手の首を落とすため地面に組み伏せることを目的として発達した技術である。
 白兵戦闘において相手より優位に立ち、首を落とすためには、単純な話、相手を転がしてしまえばよい。
 まだ銃も少なく、敵も味方も鎧兜よろいかぶとに身を包んでいた時代である。
 敵を転がすという効果は現代人が考える以上に大きいもので、そのすべを身につけている者は多かった。
 空手のような打撃系ではない武術、柔術の歴史が戦国期にさかのぼるのはそのためだ。柔術の技とは本来、その首を落とすために、敵を地面に転がすことを目的としているのである。
 ズシン、と大きな音がして、ロンバルドの巨体が背中から地面に叩きつけられた。
 身体強化した肉体にはそれほどのダメージはないが、落下の衝撃で息がつまり、身体が硬直するのは避けられない。
 いったい何が起こったのか。混乱した思考のまま反射的に起き上がろうとしたときには、すでにバルドの右手が首筋に添えられていた。

「――そこまで!」

 耳をふさぎたくなるような、ひび割れた大音声が響く。
 校長ラミリーズがいつの間にか闘技場に現れて、試合の終了を言い渡したのだった。


「してやられたな。あれはいったいどんな技なのだ?」

 ロンバルドは恥ずかしそうに頭を掻いたが、そこに敵意の色はない。どうやら純粋にバルドの技術に感嘆しているらしかった。
 実はバルドが仕掛けた掌打は誘いである。
 インパクトの瞬間、ロンバルドの体重が左に傾くのを見逃さず、掌打を放った右手でロンバルドの左の袖口を下げ、同時に左手でロンバルドの右足をすくった。
 要するに、単なる体崩たいくずしと掬い投げである。
 ここまで見事に決まったのは、相手の力を利用するという柔術に対して、力のバランスが崩れる身体強化は、相性が非常に悪かったからだろう。
 ロンバルドは自分の身体強化の力で、逆に墓穴を掘ったとも言えるのだ。

「ふむ……相手の力を逆に利用する……か」

 身体強化の効用があまりに圧倒的すぎるため、これまでかえりみられなかった発想であった。
 アウレリア大陸に〝柔よく剛を制す〟という言葉はない。
 しかしそれが自分を軽々と打ちのめしたという事実を、ロンバルドは素直に認めた。

「身体能力で相手より劣っている場合には非常に有用な技だな。バルド候補生、時間が空いたら教えてくれ」
「私のような者でよろしければ」

 互いに礼を交わし合うと、これまで時が止まったかのように静まり返っていた生徒たちから、大きな歓声があがった。

「すげえ! どうやったんだ今の?」
「魔法じゃねえの!?」
「信じられない! まるで先生が自分から飛んだように見えたぜ……」

 なかでもブルックスはバルドの見せた新たな武の可能性に、今すぐにも戦いたい欲求を必死に抑えていた。

(すげえ! すげえなんてもんじゃねえよ!)

 実のところ、最近ブルックスは身体強化などの魔法技術で伸び悩んでいる。
 今のところは武術のセンスと経験でおぎなっているが、いつか自分が弱者に転落するのではないかという恐怖を深刻に感じていた。
 バルドの技はたとえ魔法で劣勢におちいっても、武術はそれを凌駕りょうがすることができるという希望をブルックスに与えたのだ。

(俺だってやってやる! これで燃えなきゃ男じゃないぜ!)

「さて、バルド候補生」
「なんでしょう? 校長……」

 うれしくてたまらないという、満面の笑みを浮かべたラミリーズを見たバルドは、そこにいやな予感しか覚えなかった。
 実家のとある戦闘狂も、よくこうした無邪気な笑顔を見せていたからである。

「今度はわしと一勝負じゃ」
「そんなこったろうと思ったよ! ど畜生ちくしょう!」




 王都の中心部に通じる目抜き通りに、ひときわ大きな店構えの商会がある。
 その名をダウディング商会という。
 歴史ある総合商社というとわかりやすいだろうか。マウリシア国内であらゆる物品を取り扱い、国外との流通にも一定の影響力を与えるほどの大店おおだなである。
 そのダウディング商会の一室にあるソファで、セリーナは嫣然えんぜんと微笑んでいた。

「――それではどうしても店を売る気はない、と」

 壮年の男――クランの言葉に、セリーナは顔色ひとつ変えずに答える。

「これでも父から受け継いだ、思い出のある店ですので」
「ふむ……暖簾のれんというものは、商品に対する信用の担保でしかないのですがね。商人の本懐はより良い商品を、より安全に、より多くの大衆に届けることにある。その手段として我が傘下さんかに入るというのは、賢明な選択だと思うのですが」
「誰が、という主体性も、商人には非常に重要な要素ですわ。とりわけ、他の店が真似できない商品を扱っている場合には。ですから、私どもの商会を貴店にお譲りすることはできませんの」

 明快なセリーナの返答に、口惜しそうにクランは唇をむ。
 どうやら、わずか十九歳の女が経営する田舎商会とあなどりすぎていたようだ。
 謎の砂糖やゴート・コレクションという金細工きんざいくを独占的に販売するサバラン商会が、王都に支店を出すという話を聞きつけたのは、つい先日のことである。
 かもがネギを背負ってやってきたと思い、ダウディング商会の下で販売したらどうだと商談を持ちかけたまでは良かった。しかし目の前の少女は提示した大金には目もくれず、甘い罠にも決してかかろうとはしなかった。
 一度ダウディング商会の組織に組み入れさえすれば、あとはなんとでもやりようはある。
 ダウディング商会の諜報網ちょうほうもうをもってしても掴めなかった、商品の秘密さえ暴いてしまえば、いつでも切り捨てられる。
 そう思ったクランの目論見もくろみはもろくも崩れ去った。

「――王都はあなたが思うほど甘い場所ではありませんよ?」

 クランの捨て台詞ぜりふのような言葉に、セリーナは余裕の微笑で返した。

「お気遣いありがとうございます、クラン様。これでも私、ぶんはわきまえてるつもりですわ」

 クランは忌々いまいましそうに表情を歪める。名門商社のエリート然とした仮面がはがれたかのように、獣臭を放つ生臭い顔であった。

「本当にそうならばよろしいのですがね」
「ご用命があればサバラン商会はいつでも歓迎いたしますわ。それではごきげんよう」

 そんなクランの嫌みも意に介さず、セリーナは綺麗にお辞儀をしてみせると、ダウディング商会を辞去したのだった。


「どうでしたい? 会頭かいとう

 店の前で待っていた巨人――バルドから紹介されて雇用している傭兵ようへいのグリムルは、値踏みするような目をセリーナに向けた。

「はんっ! 案の定乗っ取りの話や。うちも甘く見られたもんやな」

 敵地から脱出してようやく緊張がけたのか、セリーナは途端にいつものくだけた口調に戻って答えた。
 ダウディング商会の目論見はわかっている。
 砂糖や金メッキという、現在サバラン商会が独占している技術を吸いあげて、絞れるだけ絞ったら切り捨てる腹だ。
 もちろん、ダウディング商会の内部からのしあがるという選択肢もないではないが、父の残してくれた商会が食い物にされるのを、許せるセリーナではない。
 そして、今はそんなことよりも――!

「ふふふ……セイルーン! 自分にだけ美味おいしい思いはさせへんで! バルドの傍におるのはこのうちや!」

 まさにそのためにこそ、セリーナは王都に、本店並みの規模を持つ支店を構えることにしたのだから。たとえ騎士学校にいようと、バルドがセリーナのビジネスパートナーであることは何ら変わらない。


「会頭ってば、どうしたの?」

 屋台で串焼きをつまんでいたらしい、同じく傭兵のミランダがグリムルに尋ねた。

「ほっとけ、いつもの発作だ」

 なかなかどうしてセリーナはやり手の商人なのだが、バルドのことになると理性のたがが外れるらしい。
 薄情にも仲間のジルコをマゴットの元に残して、ミランダとグリムルとセルは、セリーナに雇われて王都にやってきていた。
 ジャムカは新たな戦場へと旅立ち、ミストルはあまりに可哀そうなジルコに付き合うため、コルネリアス領に残っている。
 さっさと仲間を見捨てて逃げ出した自分たちを、さぞや恨んでいることだろう。
 まあ、悪いがご愁傷様しゅうしょうさまというほかない。
 あのままマゴットにおびえて暮らすなど、想像したくもないからだ。

「待っててや! バルド――!」

 せっかくの美少女が雄々おおしく叫ぶ残念な様子に、傭兵たちは疲れたように顔を見合わせて、苦笑するのだった。


 一方、当ての外れたクランとしては、このままサバラン商会に王都内でフリーハンドを与えるわけにはいかなかった。それは競争の激しいダウディング商会内での、自分の地位の低下を意味するだけに、何らかの手を打つ必要に迫られる。

「ふん。金や地位には転ばなかったようだが、はたしておどしにはどうかな?」

 国内きっての大店だけに、傭兵や裏社会にはそれなりの伝手つてがある。
 美しい商家の娘が誘拐ゆうかいされたり暴行されたりしてしまうのは、治安の良い王都でも決してない話ではない。
 所詮は若い娘だ。殺してしまっては秘密が探れないから、商売をする気力がなくなる程度に痛めつけてやればよいだろう。
 そう考えたクランだが、のっけからその計画もつまずくことになる。


「馬鹿を言うな! サバラン商会っていやあ、銀光ぎんこうのお手つきだろうが! 俺達を殺す気か!」
「クランさんよう……あまり俺達をごま扱いするなら、こっちにも考えってもんがあるんですぜ?」

 まったく想定外なことに、クランを待っていたのは罵詈雑言ばりぞうごんと拒絶の嵐であった。
 わずかでもアントリム戦役に従軍した経験がある者なら、銀光マゴットを敵に回すということは、死を意味すると知っていた。
 戦争経験のないクランはそのことがわからなかったために、なぜ彼らがこれほど強硬に拒否するのかを、理解できずにいたのだった。

「――悪いことは言わん。手を出すな。と敵対するなど、王国騎士団一個大隊を相手にするよりはるかに性質たちが悪いことなんだ」

 これまでクランが大枚をはたいて協力関係を築いてきた裏組織は、必死の要請にもかかわらず、にべもなくこれを拒絶した。なかには「今後協力関係を解消する」と言ってきた者までいたので、逆にクランのほうが頭を下げるはめになったほどである。
 どうしてあんな田舎商会のために、ダウディング商会の幹部である自分がここまで理不尽りふじんな目にうのか。
 怒りを持て余したクランは、それが破滅への一本道であるということに気づかずにいた。
 裏組織の面々が口々に言いつのった銀光マゴットの伝説は、決して嘘でも誇張こちょうでもなく、むしろ控えめな事実なのだということを、クランは信じることができなかったのである。




 レパルスは王都キャメロンで、傭兵ギルドを取り仕切るギルドマスターである。
 すでに初老の域に達しつつも、髪は黒々として若々しい。鍛え抜いたはがねの身体は、全盛期ほどではないにしろ、まだまだ彼が現役であることを物語っていた。
 今でこそギルドマスターなどという地位に収まっているが、〝双剣のレパルス〟と言えば、同業の傭兵たちが先を争うように頭を下げていた時期もあった。
 かつての栄光の日々を懐かしむように、レパルスは目を細める。
 一線を退いて十年。それまでの知名度の高さもあってか、いつの間にかレパルスは、本人も意図せぬうちに責任ある地位に上りつめていた。
 しかし、自分が傭兵としての限界を悟るきっかけとなった出来事を、一度たりとも忘れたことはない。
 窓辺から見上げる視線の先で、白い閃光とともに、遠雷が低い轟音ごうおんとどろかせていた。
 そのまばゆきらめきのなかに、ゾッとする記憶を呼び起されて、レパルスは人知れず背筋を震わせる。

「あの晩も……こんな嵐だった」

 雷鳴と豪雨が吹きすさぶ夜の光景を、今でも稀に夢に見る。
 銀髪を翻す、人の形をした悪魔の姿とともに。




 本当にひどい有様だった。
 レパルスは負傷者でごった返した血生臭い回廊かいろうを進み、城壁の周囲に群がるハウレリア王国軍にうんざりした視線を向けた。
 過日の会戦で、マウリシア王国軍は敵の名将ソユーズに完膚かんぷなきまでの敗北を喫しており、その損害を回復するためにしばしの時間を必要としていた。
 逆にセルヴィー侯爵軍を中心としたハウレリア側としては、マウリシア王国軍が損害を回復する前に、なんとしてもコルネリアス領を落とし、穀倉マールバラ大平原を手中に収めなくてはならなかった。
 味方の援軍が到着するまで、独力で持久することを強いられたイグニス・コルネリアスは、堅固けんごで知られるコルネリアス城塞にってこれを迎撃し、獅子奮迅ししふんじんの働きによって敵の大軍を拘束することに成功していたのである。
 しかし圧倒的少数での戦いを経て、マウリシア軍は確実に消耗していた。このままのペースだと全滅するまで、おそらく半月はかからないだろう、というのがレパルスの見解だった。

(――そろそろ潮時かな)


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