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第百八十二話 決裂
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エウロパ教団の教えによれば、獣人は堕落して悪魔に魂を売った人間の末裔である。
そして魂が穢れきった獣人のなかから、魔界の瘴気が漏れ出し、この世界を破滅に導く。
そのきっかけの役割を果たす者こそ王門。
ゆえにこそ、教団は王門の所有者、その気配があるものを歴史の陰で抹殺し続けてきた。
マゴットやジーナが暗殺されなかったのは、ノルトランド帝国がエウロパ教徒の少ない獣人を擁護する国家であったことが大きい。
あと百年ほど遡れば、マゴットもジーナも無事には済まなかった可能性が高かった。
神の愛がこの世界を救うと信じて死んでいった過去の信徒たち。そして清貧に耐え人生を布教に捧げた聖職者。
その全ての人生が、実は太古の昔の異世界人の尻ぬぐいに過ぎなかったなど誰が言えるだろう。
「ですがそれでは人類が――――」
「神のために殉教することは信徒の誉れ。そして異教徒がいくら死んだところで何の問題があろうか!」
「それが本当は神のためではない犬死だとわかっていても?」
「人は誰もが信じるもののために死ぬのだ。この教団とて例外ではない!」
「そんなっ!」
シュエは教皇の覚悟を見誤っていたことを悟って蒼白になった。
彼女のように前世の記憶を持っているならばともかく、遥か彼方の記憶と長い歴史を積み上げてきた伝統や思いの力は時として真実に勝る。
教皇とて、何事もなく次元境界を封印できるならそうしたであろう。
「教団が滅びることを選択する権利があんたにあるのかな?」
「教皇たる者だからこそ、信仰のために死ねと命令することができるのだよ」
「はたして歴代の教皇もそう考えていたかな?」
バルドの問いに教皇は答えに詰まった。
なんとなれば教皇は先代の教皇から、教団の闇の歴史を知れば苦しむことになるだろうと諭されていた。それでもなお、教皇には果たすべき責任があるのだ、と。
「譲れないものがある。背負うものがある。それでも先に進まなければ結局は全てを裏切る、少なくとも僕はそう思っている」
「――――そうだな。譲れぬものと背負うべきものは往々にして両立しない」
培ったもの、託されたもの、目指すもの、望むもの、全てが完璧に満たされることはありえない。
「トリストヴィー国王よ。何を望みどこへ進む?」
「この大陸の人々が飢えと疫病と戦争に怯えなくてすむ世界に。もろもろやりたいことはあるが、究極的に国家の目的とはそれだ」
「心を救おうとは思わぬのか?」
「僕はそこまで思いあがっていないよ」
一人の専制君主が国民の心を救い導く、そんなことを悪質な洗脳だとバルドは思う。
「心が救われずしてなんの人生の意味があろうか」
「教皇自身が救われておらぬのではあまり説得力を感じないな」
「生憎救う立場の人間は救われぬのが世の定めというものよ。国王ならばわかるであろう?」
「僕は僧職と違ってありがたい家族に恵まれていてね」
国王の、為政者の立場は孤独であり、残酷である。
人の死を数字として認識して、必要とあれば死ねと命じなくてはならないのが国王という立場であった。
しかしバルドは孤独ではなかった。
どんなときにも決して離れることのない二人の人格がいた。
愛する妻たちも大きな味方ではあるが、一心同体というわけではない。本来ならそれが当たり前の人のあり方なのだが、バルドは幸か不幸かいつでも心のなかに味方がいたのである。
「いやな男だな。貴様はただ信仰の敵であったが、今は心の底から妬ましく憎く思うよ」
「憎まれるのは慣れてる」
「ふん、封印の宝珠が欲しいのならもう少ししおらしくしたらどうだ?」
教皇はいらだたしげに悪態をつくとワインを呷った。
小面憎い台詞を互い交わしているが、実のところ両者がしているのはただ納得のための確認である。
古の伝承とこの世界の向かう方向が、自分の想像とあっているのかどうか、それを信じられるかどうか。その確信を得るためにバルドと教皇は会話しているのであった。
「――――さて、そろそろ建前の話は置いておくか」
「そうだな」
「えっ? えっ?」
二人の会話についていけないシュエがおろおろと首を振る。この娘を王女として教育したカディロス王国の担当者を小一時間問い詰めたくなるバルドであった。
「封印の宝珠を差し出して、ひとまず休戦、ということにはならないのか?」
「無理だな。下手をすればアンサラー王国とソルディヴィディアンで教団が分裂する。それにここで膝を屈したととられれば信徒の心がもつまい」
「戦って壊滅しても心は守られると?」
「試練が信仰心を鍛えるということはあるものだ。むしろ平和で暖衣飽食をむさぼっていると信仰心は遠のく。皮肉なことだがな」
「金持ちに真の信徒はいないということか」
「面と向かっては言えぬことだがな」
割とこの二人気が合うのではないか、とシュエは困惑を隠せずにいた。
「結論からいえば、これから先の新たな時代のなかでエウロパ教が生き残っていくためには、我々が華々しく戦うことが必要だということだ」
「道連れにするには多すぎはしないか?」
「むしろ少ないほどだろう。いったい大陸にどれほどの信者がいると思っている?」
事実、バルドのトリストヴィー王国ですら、エウロパ教徒の数は国民の最大派閥である。ただバルドに反抗するつもりがないだけで、各国でも状況は似たようなものであった。
教団の指示に従わぬ穏健なエウロパ教徒に対し、楔を打ち込むためには生贄が必要だと教皇は言っているのであった。それも莫大な。
「まあ、勝ってしまっても構わんのだが」
「嘗めんな。今さら逆転させるほど甘くないわ」
「はっはっはっ! 神の敵らしく油断しておればよいものを」
兵数、士気、戦術、武装、経済力、政治力、その全てでバルドと連合軍はエウロパ教団を圧倒的に上回っている。
いかに鉄壁の信仰心をもってしても、全面開戦となればソルディヴィディアンは陥落を免れないだろう。
それは多少なりとも戦術に通じた信者たちも理解できるほど明白な答えであった。
当然だが教皇もそれをよくわかっている。
戦えば負ける。そして負ければ命がないということを。
「こんな野心ばかり大きな愚かな私でも捨てられぬものがあった。それが今はうれしい。かつて修道士として洗礼を受けた若い日を思い出すようだ」
そう、教皇にも信仰に命を捧げようと思った若く純粋な日々があった。
それがいつの間にか出世や富に囚われてしまったのは、司教に任命されたころからだろうか。
「一番厄介な男に信仰に目覚められてしまったな」
「信仰の敵があればこそだな」
「…………それは私たちの要求を聴き入れる気はない、ということなのでしょうか?」
不安そうにシュエは教皇に尋ねた。
教皇に会うと決めた時から、それがシュエにとってもっとも重要な問題なのである。が、あまりにも率直な質問であったために教皇とバルドは苦笑するほかなかった。
「お嬢さん、要求する。はい、いいえで答えられるほど世の中は単純なものではない。だからこそ人は神に問いかけずにはいられないのだ」
「非常に高度な積み木細工の建物が、いったいどの積み木を外しても建物が倒れずに済むか。必要なのはその選定だよ」
シュエは困惑したまま駄々をこねる子供のように頭を振った。
前世の人格も研究者でしかない彼女には、理解の難しい話であった。
「北の包囲は開けておく。前にも言ったが、僕は教団を排斥するつもりはない。法を犯さぬ限りにおいて信徒の権利は守られるだろう」
「そんなことは当然だ――――と言いたいところだが、ありがたく受けておこう。多少の嫌がらせはさせてもらうが、そこは勘弁してくれ」
「教皇が嫌がらせなんかするなよ」
「獣人の王を相手に嫌がらせで止めてやるのだ。むしろ涙を流して感謝するところではないか?」
「頭の固い坊主の嫌がらせに涙が出そうさ」
本当は二人とも何が最善なのかわかっている。
しかし誰にとって最善なのか。
結局のところ己の信じる生き方にとって最善を選ぶ――――それが最悪の犠牲を産むものだとしても――――教皇の決断をバルドも否定しようとはしなかった。
「――――どうして破滅の道を選ぶのですか!」
納得できないというシュエの叫びは、存外に優しい教皇の笑みによって受け止められた。
「決まっている。かつて親よりもらって名をも捨てた私は、ただ唯一のエウロパ教団教皇だ。私が教団に殉じなくてどうするかね。だいたい案外神の奇跡がおきて何もかも丸く収めてくれるかもしれないじゃないか」
それでも納得のいかなそうなシュエであったが、教皇にはもう説得が通じないことは理解した。
「私にはわかりません……答えはいつもひとつしかないはずなのに」
シュエにとって、前世の記憶は疑うべくもない絶対的な事実である。世界を滅ぼす危機にあるというのに自分だけの小さな世界を守る理由がわからなかった。
「お嬢さん、覚えておきなさい」
教皇は説法を説く宗教者の顔になってシュエに言った。
「結局のところ信仰とは、本当は神に答えを求めるためのものではなく、自分に問い続けるものだ。神とは全知の答えるものではなく、愚かな私たちを優しく見守るものなのだ。いつか信仰に身をゆだねたくなったら思い出すがいい」
「――――自分の人生が恥じぬものであるよう、愚かに足掻くだけということさ。僕も、この男も」
答えることのできないシュエの代わりにバルドが言った。
――――わからない。
自分にはわからないのにバルドと教皇がわかりあっていることだけはわかる。
「それでは次は戦場で」
「戦場にも神の愛は惜しみなく注がれるであろう。もっとも、獣人にまで注がれるかどうかはわからないが」
「獣神ゾラスの加護があるさ」
「ふん、それすらも造られたものだと知りながらか?」
揶揄する教皇の言葉にバルドは傲然と胸を張った。
「――――それが人というものだろう?」
そして魂が穢れきった獣人のなかから、魔界の瘴気が漏れ出し、この世界を破滅に導く。
そのきっかけの役割を果たす者こそ王門。
ゆえにこそ、教団は王門の所有者、その気配があるものを歴史の陰で抹殺し続けてきた。
マゴットやジーナが暗殺されなかったのは、ノルトランド帝国がエウロパ教徒の少ない獣人を擁護する国家であったことが大きい。
あと百年ほど遡れば、マゴットもジーナも無事には済まなかった可能性が高かった。
神の愛がこの世界を救うと信じて死んでいった過去の信徒たち。そして清貧に耐え人生を布教に捧げた聖職者。
その全ての人生が、実は太古の昔の異世界人の尻ぬぐいに過ぎなかったなど誰が言えるだろう。
「ですがそれでは人類が――――」
「神のために殉教することは信徒の誉れ。そして異教徒がいくら死んだところで何の問題があろうか!」
「それが本当は神のためではない犬死だとわかっていても?」
「人は誰もが信じるもののために死ぬのだ。この教団とて例外ではない!」
「そんなっ!」
シュエは教皇の覚悟を見誤っていたことを悟って蒼白になった。
彼女のように前世の記憶を持っているならばともかく、遥か彼方の記憶と長い歴史を積み上げてきた伝統や思いの力は時として真実に勝る。
教皇とて、何事もなく次元境界を封印できるならそうしたであろう。
「教団が滅びることを選択する権利があんたにあるのかな?」
「教皇たる者だからこそ、信仰のために死ねと命令することができるのだよ」
「はたして歴代の教皇もそう考えていたかな?」
バルドの問いに教皇は答えに詰まった。
なんとなれば教皇は先代の教皇から、教団の闇の歴史を知れば苦しむことになるだろうと諭されていた。それでもなお、教皇には果たすべき責任があるのだ、と。
「譲れないものがある。背負うものがある。それでも先に進まなければ結局は全てを裏切る、少なくとも僕はそう思っている」
「――――そうだな。譲れぬものと背負うべきものは往々にして両立しない」
培ったもの、託されたもの、目指すもの、望むもの、全てが完璧に満たされることはありえない。
「トリストヴィー国王よ。何を望みどこへ進む?」
「この大陸の人々が飢えと疫病と戦争に怯えなくてすむ世界に。もろもろやりたいことはあるが、究極的に国家の目的とはそれだ」
「心を救おうとは思わぬのか?」
「僕はそこまで思いあがっていないよ」
一人の専制君主が国民の心を救い導く、そんなことを悪質な洗脳だとバルドは思う。
「心が救われずしてなんの人生の意味があろうか」
「教皇自身が救われておらぬのではあまり説得力を感じないな」
「生憎救う立場の人間は救われぬのが世の定めというものよ。国王ならばわかるであろう?」
「僕は僧職と違ってありがたい家族に恵まれていてね」
国王の、為政者の立場は孤独であり、残酷である。
人の死を数字として認識して、必要とあれば死ねと命じなくてはならないのが国王という立場であった。
しかしバルドは孤独ではなかった。
どんなときにも決して離れることのない二人の人格がいた。
愛する妻たちも大きな味方ではあるが、一心同体というわけではない。本来ならそれが当たり前の人のあり方なのだが、バルドは幸か不幸かいつでも心のなかに味方がいたのである。
「いやな男だな。貴様はただ信仰の敵であったが、今は心の底から妬ましく憎く思うよ」
「憎まれるのは慣れてる」
「ふん、封印の宝珠が欲しいのならもう少ししおらしくしたらどうだ?」
教皇はいらだたしげに悪態をつくとワインを呷った。
小面憎い台詞を互い交わしているが、実のところ両者がしているのはただ納得のための確認である。
古の伝承とこの世界の向かう方向が、自分の想像とあっているのかどうか、それを信じられるかどうか。その確信を得るためにバルドと教皇は会話しているのであった。
「――――さて、そろそろ建前の話は置いておくか」
「そうだな」
「えっ? えっ?」
二人の会話についていけないシュエがおろおろと首を振る。この娘を王女として教育したカディロス王国の担当者を小一時間問い詰めたくなるバルドであった。
「封印の宝珠を差し出して、ひとまず休戦、ということにはならないのか?」
「無理だな。下手をすればアンサラー王国とソルディヴィディアンで教団が分裂する。それにここで膝を屈したととられれば信徒の心がもつまい」
「戦って壊滅しても心は守られると?」
「試練が信仰心を鍛えるということはあるものだ。むしろ平和で暖衣飽食をむさぼっていると信仰心は遠のく。皮肉なことだがな」
「金持ちに真の信徒はいないということか」
「面と向かっては言えぬことだがな」
割とこの二人気が合うのではないか、とシュエは困惑を隠せずにいた。
「結論からいえば、これから先の新たな時代のなかでエウロパ教が生き残っていくためには、我々が華々しく戦うことが必要だということだ」
「道連れにするには多すぎはしないか?」
「むしろ少ないほどだろう。いったい大陸にどれほどの信者がいると思っている?」
事実、バルドのトリストヴィー王国ですら、エウロパ教徒の数は国民の最大派閥である。ただバルドに反抗するつもりがないだけで、各国でも状況は似たようなものであった。
教団の指示に従わぬ穏健なエウロパ教徒に対し、楔を打ち込むためには生贄が必要だと教皇は言っているのであった。それも莫大な。
「まあ、勝ってしまっても構わんのだが」
「嘗めんな。今さら逆転させるほど甘くないわ」
「はっはっはっ! 神の敵らしく油断しておればよいものを」
兵数、士気、戦術、武装、経済力、政治力、その全てでバルドと連合軍はエウロパ教団を圧倒的に上回っている。
いかに鉄壁の信仰心をもってしても、全面開戦となればソルディヴィディアンは陥落を免れないだろう。
それは多少なりとも戦術に通じた信者たちも理解できるほど明白な答えであった。
当然だが教皇もそれをよくわかっている。
戦えば負ける。そして負ければ命がないということを。
「こんな野心ばかり大きな愚かな私でも捨てられぬものがあった。それが今はうれしい。かつて修道士として洗礼を受けた若い日を思い出すようだ」
そう、教皇にも信仰に命を捧げようと思った若く純粋な日々があった。
それがいつの間にか出世や富に囚われてしまったのは、司教に任命されたころからだろうか。
「一番厄介な男に信仰に目覚められてしまったな」
「信仰の敵があればこそだな」
「…………それは私たちの要求を聴き入れる気はない、ということなのでしょうか?」
不安そうにシュエは教皇に尋ねた。
教皇に会うと決めた時から、それがシュエにとってもっとも重要な問題なのである。が、あまりにも率直な質問であったために教皇とバルドは苦笑するほかなかった。
「お嬢さん、要求する。はい、いいえで答えられるほど世の中は単純なものではない。だからこそ人は神に問いかけずにはいられないのだ」
「非常に高度な積み木細工の建物が、いったいどの積み木を外しても建物が倒れずに済むか。必要なのはその選定だよ」
シュエは困惑したまま駄々をこねる子供のように頭を振った。
前世の人格も研究者でしかない彼女には、理解の難しい話であった。
「北の包囲は開けておく。前にも言ったが、僕は教団を排斥するつもりはない。法を犯さぬ限りにおいて信徒の権利は守られるだろう」
「そんなことは当然だ――――と言いたいところだが、ありがたく受けておこう。多少の嫌がらせはさせてもらうが、そこは勘弁してくれ」
「教皇が嫌がらせなんかするなよ」
「獣人の王を相手に嫌がらせで止めてやるのだ。むしろ涙を流して感謝するところではないか?」
「頭の固い坊主の嫌がらせに涙が出そうさ」
本当は二人とも何が最善なのかわかっている。
しかし誰にとって最善なのか。
結局のところ己の信じる生き方にとって最善を選ぶ――――それが最悪の犠牲を産むものだとしても――――教皇の決断をバルドも否定しようとはしなかった。
「――――どうして破滅の道を選ぶのですか!」
納得できないというシュエの叫びは、存外に優しい教皇の笑みによって受け止められた。
「決まっている。かつて親よりもらって名をも捨てた私は、ただ唯一のエウロパ教団教皇だ。私が教団に殉じなくてどうするかね。だいたい案外神の奇跡がおきて何もかも丸く収めてくれるかもしれないじゃないか」
それでも納得のいかなそうなシュエであったが、教皇にはもう説得が通じないことは理解した。
「私にはわかりません……答えはいつもひとつしかないはずなのに」
シュエにとって、前世の記憶は疑うべくもない絶対的な事実である。世界を滅ぼす危機にあるというのに自分だけの小さな世界を守る理由がわからなかった。
「お嬢さん、覚えておきなさい」
教皇は説法を説く宗教者の顔になってシュエに言った。
「結局のところ信仰とは、本当は神に答えを求めるためのものではなく、自分に問い続けるものだ。神とは全知の答えるものではなく、愚かな私たちを優しく見守るものなのだ。いつか信仰に身をゆだねたくなったら思い出すがいい」
「――――自分の人生が恥じぬものであるよう、愚かに足掻くだけということさ。僕も、この男も」
答えることのできないシュエの代わりにバルドが言った。
――――わからない。
自分にはわからないのにバルドと教皇がわかりあっていることだけはわかる。
「それでは次は戦場で」
「戦場にも神の愛は惜しみなく注がれるであろう。もっとも、獣人にまで注がれるかどうかはわからないが」
「獣神ゾラスの加護があるさ」
「ふん、それすらも造られたものだと知りながらか?」
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