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第百七十四話 神話の世界その3
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それからおよそ一年後、ゾラスが中心となって、王都にコンスタンティノス魔導学校が開校された。
その目的が、コルネアにもう一度会いたい一心であるということは否定しない。
だが、ゾラスがこの世界の人間たちにより進んだフィンランディアの魔法文明の光を与えたいと思っているのも事実であった。
まだ技術こそ進んでいないが、この世界の人間は自分たちを温かく迎えてくれた。その恩を少しでも返したい。
十分に人間らしい理性と優しさをゾラスがこれほどに感じるのは久しぶりのことであった。
戦争中、同じ国の人間ですら研究者である自分に求めてきたのは軍事的な貢献だけであったことは、ゾラスの胸に重い不審の種を植え付けていた。
まるで機械のように利用されて人の心が傷つかぬはずもない。
それに比べこの世界の住人のなんと素直で優しいことだろう。
もちろん文明度はフィンランディアには遠く及ばなかった。そのことで彼らを蔑んでいる仲間も確かにいた。
実際のところこの大陸はフィンランディアに比べ組織や法律が未成熟であり、ゾラスたちが事実上支配階級として大陸を管理しているのも事実である。
その現状に慣れ、自然とこの世界の人間を下に見てしまうのは、ある程度やむを得ないことであろう。
だが、その差別意識が長く続けば結局は圧倒的に少数のフィンランディア人にとって破滅をもたらすとゾラスは考えていた。
だからこそ、両者の知識の差を縮めるべくゾラスは現地の民を集めた魔導学校の設立を強く後押ししたのである。
何より現地人の力を借りなくては、元の世界に戻ることなど夢のまた夢であるという現実があった。
もう一度コルネアに会うことを、ゾラスは決してあきらめるつもりはなかった。
「…………よろしいですか? ゾラス様」
「気を遣わなくても構わないよ?」
「で、でもゾラス様は大魔導(グランウィズ)様でいらっしゃるから…………」
大魔導(グランウィズ)はこのアウレリアに流されてきたバンヒュート族の中では最高位の魔導士にあたる。
本来大魔導長(グランウィズマスター)、大魔導(グランウィズ)、紫魔導(パープルウィズ)、魔導(ウィズ)、魔法士(ソーサラー)の順の位階があり、ゾラスは第二階位なのだが、バンヒュート族に三人しかいない第一階位はこの世界にはいないのだ。
「優秀な生徒は大歓迎さ」
ゾラスの言葉にはにかむような可愛らしい笑みを浮かべるのは、魔導学校の生徒であるメイラである。
コンスタンティノスの古い豪族の娘で、水色の瞳と涼し気な楚々とした美少女だが、その実魔導学校の誰より好奇心が旺盛だった。
授業の後にこうして質問に来るもの、生徒のなかではメイラが一番多かった。
「どうして魔法は大気中に出ると減衰してしまうんでしょうか?」
「そのあたりは次回の授業で説明しようと思っていたが……まあいい。魔法というのは要するに魔力の物理現象の再現、ないし変容にすぎない。水鉄砲のようなもので遠くに飛ばそうとすればより強い圧力がいる。さらに大気中には物理法則が働いているから、再現、変容する距離や面積が増大すればより魔力がいるわけだ。ゆえに、魔法は魔力が一定であるかぎり距離や面積に応じて減衰する」
大気中には物理法則を維持しようとする力が常に働いている。その力はゾラスたちは修復力と呼んでいる。
ゾラスの見るところ、この世界の修復力はフィンランディアに比べで三倍以上は強い。
そのためゾラスたちの魔法の威力もかなり弱体化しており、故郷へ帰るためにはさらなる技術の改良が必要であった。
「ありがとうございます。ゾラス様」
「いや、君には期待しているよ。なんといったかな、君の友人の少年にも」
「それはきっとラターシュですわ」
メイラの幼馴染であり、寡黙だが芯の強そうな黒い瞳の少年ラターシュは、ゾラスの見るところ生徒のなかでも頭ひとつ抜けている感がある。
「ああ、そうラターシュ君だったね」
この二人が、後にゾラスの腹心として研究の中心に関わることになろうとは、神ならぬ身のゾラスには知る由もないことであった。
そしてさらに七年の月日が経過する。
アウレリア大陸はバンヒュート族の知識を得て、王都コンスタンティノスを中心に空前の繁栄を極めていた。
だが、彼らの望郷の念は高まることはあっても減ることはなかった。
もちろんこの世界に骨を埋めようとする者もいた。
この世界の女性を妻に娶り、政府の高官となって権力をふるうことに溺れてしまった者もいる。
しかし繁栄を極めたといっても、それはあくまでこのアウレリア大陸基準のことであり、フィンランディア世界のそれには及ぶべくもない。
また医療技術の衰退が、少なからず彼らの健康不安を後押ししていた。
大半が研究者が中心であるだけに、なまじ諦めることができないことも大きいであろう。
時間さえあれば、帰還は技術的に決して不可能ではないのだ。
帰れるのならば帰りたいと考えるのは当然の反応ではあった。しかしリスクがないというわけではない。
なんといっても彼らがこのアウレリア大陸に漂着したのは、実験の失敗による副作用の結果なのである。
そんなリスクを承知していながら、ゾラスに諦めるという選択肢はなかった。
あの過酷な戦争中の祖国に残してきた恋人にもう一度会うまでは。
「準備完了しました。ゾラス様」
「ああ、ありがとうラターシュ」
メイラとともにゾラスの助手を務めるラターシュは、若き天才としてフォルガング族に匹敵する魔導技術者に成長していた。
魔力の量こそフォルガング族には及ばないが、知識も技術もなんら遜色ないレベルであり、アウレリア大陸の現地人のなかでは出色である。
まさに彼のような男を天才と呼ぶのであろう。
今回の実験を開始するにあたって、ラターシュが果たした役割は大きかった。
「…………ちょっと殺気立ってる人がいるのが気になります」
ひょっこりと顔を出して、不安そうに眉を顰めたのはメイラである。
どうやら一部のバンヒュート族技術者が、目の色を変えて意気込んでおり、迂闊に触れないほど殺気立っているらしい。
彼女もこの計画になくてはならない人物の一人だった。
この二人を得ただけで、魔導学校を開設した価値があったとゾラスは思う。
しかし二人の気質は必ずしも一致しているわけではない。
ラターシュはアウレリア大陸の発展にバンヒュート族の魔導技術が欠かせないと信じていたが、メイラは一方的にゾラスを慕っているという感じである。
というより、ゾラスが気づいていないだけで、メイラのゾラスに向ける視線は、明らかに恋する乙女のそれであった。
「実験、成功するといいですねゾラス様」
「不確定要素は多いが、こればかりは仕方がない」
もともとゾラスたちがここに飛ばされてきたのは事故だ。
どうしたって不確定要素を排除することはできない。
ゆえに実験は慎重に慎重を重ねる必要はあるとゾラスは考えていた。
だがそうは考えない者も当然ながらいる。
すでに七十の大台に差し掛かりそうなゾラスの上司、ウニクムなどはその筆頭であった。
命あるうちになんとしても故郷へと帰りたい。
そう思うだけの事情がウニクムにはある。なんといっても彼はこの世界に飛ばされてきた数日前に孫が誕生したばかりであった。
生きているうちに孫の顔が見たいと思うのも無理からぬことであろう。
「さて、行くか」
「はいっ!」
メイラとラターシュを左右に従えて、ゾラスは巨大なドーム型の実験施設へと向かった。
そこに待機していたのは、バンヒュート族の研究者五十名と現地アウレリア大陸人の生徒およそ二百人である。
この日のために動員された人数は、延べで一万人を超える。
それほどに大きなエネルギーが、境界構築のためには必要だった。
魔力の操作に耐えうる生徒をできる限り多く造り出すために、魔導学校の七年は費やされてきたと言ってもよい。
こうしてついに実験にこぎつけることができたことが、ゾラスには非常に感慨深いものに思えてならなかった。
「魔力増幅炉(マジックパイル)の安定度は?」
「現在百%」
「誤差0・2%!」
「魔力供給、二分後に臨界に達します!」
うれしそうにゾラスが頷いた。
エンジニアの半分以上は彼がこの七年の間に育て上げた人材たちであり、その技量は確かな成長の跡が窺えた。
これならばもし自分たちがいなくなっても、きっと文明を進化させていくことが可能であろう。
「境界同調実験、開始します!」
オペレーターの宣言とともに、あの運命の日以来となる、異世界との次元境界同調の実験が始まった。
膨大なエネルギーがその波長を次元境界で変化させていく。
「同調率現在34%!」
「…………まずは順調かな?」
侵食率の違いから、暴走を引き起こした前回の実験の轍を踏むわけにはいかなかった。
まずは50%までのデータを取れればよいとゾラスは考えていたのだが、ゾラスを除く技術者たちの意見は別であった。
「同調率50%」
「よし、このあたりで…………」
「出力あげろ! 同調率を70%まで引き上げる!」
「危険です! マグワイア殿!」
「実験の責任者は私だ!」
ゾラスと並ぶ大魔導(グランウィズ)であり、年長でもあるマグワイアは確かに名目上は責任者である。
しかし本当の指揮者が誰であるかほとんどの人間はわかっている。魔導学校の生徒出身にその傾向は強い。
逆にマグワイアに従おうとする人間もいた。
バンヒュート族の技術者で、古株の人間ほど名目上とはいえ責任者であるマグワイアの判断に従おうとした。
結果的に実験は続行され、同調率はゾラスの危惧をよそにみるみる上昇していったのである。
「同調率、82%!」
「さすがにこれ以上は…………」
無理にでも実験を止めようとゾラスが足を踏み出した時である。
「あれは…………」
「月だ! あれは我らのセレスティアの月だぞ!」
同調率が80%を超えた次元境界の向こうに、特徴的な二重の輪に包まれた懐かしい月が現われ、束の間ゾラスも意識を奪われずにはいられなかった。
その目的が、コルネアにもう一度会いたい一心であるということは否定しない。
だが、ゾラスがこの世界の人間たちにより進んだフィンランディアの魔法文明の光を与えたいと思っているのも事実であった。
まだ技術こそ進んでいないが、この世界の人間は自分たちを温かく迎えてくれた。その恩を少しでも返したい。
十分に人間らしい理性と優しさをゾラスがこれほどに感じるのは久しぶりのことであった。
戦争中、同じ国の人間ですら研究者である自分に求めてきたのは軍事的な貢献だけであったことは、ゾラスの胸に重い不審の種を植え付けていた。
まるで機械のように利用されて人の心が傷つかぬはずもない。
それに比べこの世界の住人のなんと素直で優しいことだろう。
もちろん文明度はフィンランディアには遠く及ばなかった。そのことで彼らを蔑んでいる仲間も確かにいた。
実際のところこの大陸はフィンランディアに比べ組織や法律が未成熟であり、ゾラスたちが事実上支配階級として大陸を管理しているのも事実である。
その現状に慣れ、自然とこの世界の人間を下に見てしまうのは、ある程度やむを得ないことであろう。
だが、その差別意識が長く続けば結局は圧倒的に少数のフィンランディア人にとって破滅をもたらすとゾラスは考えていた。
だからこそ、両者の知識の差を縮めるべくゾラスは現地の民を集めた魔導学校の設立を強く後押ししたのである。
何より現地人の力を借りなくては、元の世界に戻ることなど夢のまた夢であるという現実があった。
もう一度コルネアに会うことを、ゾラスは決してあきらめるつもりはなかった。
「…………よろしいですか? ゾラス様」
「気を遣わなくても構わないよ?」
「で、でもゾラス様は大魔導(グランウィズ)様でいらっしゃるから…………」
大魔導(グランウィズ)はこのアウレリアに流されてきたバンヒュート族の中では最高位の魔導士にあたる。
本来大魔導長(グランウィズマスター)、大魔導(グランウィズ)、紫魔導(パープルウィズ)、魔導(ウィズ)、魔法士(ソーサラー)の順の位階があり、ゾラスは第二階位なのだが、バンヒュート族に三人しかいない第一階位はこの世界にはいないのだ。
「優秀な生徒は大歓迎さ」
ゾラスの言葉にはにかむような可愛らしい笑みを浮かべるのは、魔導学校の生徒であるメイラである。
コンスタンティノスの古い豪族の娘で、水色の瞳と涼し気な楚々とした美少女だが、その実魔導学校の誰より好奇心が旺盛だった。
授業の後にこうして質問に来るもの、生徒のなかではメイラが一番多かった。
「どうして魔法は大気中に出ると減衰してしまうんでしょうか?」
「そのあたりは次回の授業で説明しようと思っていたが……まあいい。魔法というのは要するに魔力の物理現象の再現、ないし変容にすぎない。水鉄砲のようなもので遠くに飛ばそうとすればより強い圧力がいる。さらに大気中には物理法則が働いているから、再現、変容する距離や面積が増大すればより魔力がいるわけだ。ゆえに、魔法は魔力が一定であるかぎり距離や面積に応じて減衰する」
大気中には物理法則を維持しようとする力が常に働いている。その力はゾラスたちは修復力と呼んでいる。
ゾラスの見るところ、この世界の修復力はフィンランディアに比べで三倍以上は強い。
そのためゾラスたちの魔法の威力もかなり弱体化しており、故郷へ帰るためにはさらなる技術の改良が必要であった。
「ありがとうございます。ゾラス様」
「いや、君には期待しているよ。なんといったかな、君の友人の少年にも」
「それはきっとラターシュですわ」
メイラの幼馴染であり、寡黙だが芯の強そうな黒い瞳の少年ラターシュは、ゾラスの見るところ生徒のなかでも頭ひとつ抜けている感がある。
「ああ、そうラターシュ君だったね」
この二人が、後にゾラスの腹心として研究の中心に関わることになろうとは、神ならぬ身のゾラスには知る由もないことであった。
そしてさらに七年の月日が経過する。
アウレリア大陸はバンヒュート族の知識を得て、王都コンスタンティノスを中心に空前の繁栄を極めていた。
だが、彼らの望郷の念は高まることはあっても減ることはなかった。
もちろんこの世界に骨を埋めようとする者もいた。
この世界の女性を妻に娶り、政府の高官となって権力をふるうことに溺れてしまった者もいる。
しかし繁栄を極めたといっても、それはあくまでこのアウレリア大陸基準のことであり、フィンランディア世界のそれには及ぶべくもない。
また医療技術の衰退が、少なからず彼らの健康不安を後押ししていた。
大半が研究者が中心であるだけに、なまじ諦めることができないことも大きいであろう。
時間さえあれば、帰還は技術的に決して不可能ではないのだ。
帰れるのならば帰りたいと考えるのは当然の反応ではあった。しかしリスクがないというわけではない。
なんといっても彼らがこのアウレリア大陸に漂着したのは、実験の失敗による副作用の結果なのである。
そんなリスクを承知していながら、ゾラスに諦めるという選択肢はなかった。
あの過酷な戦争中の祖国に残してきた恋人にもう一度会うまでは。
「準備完了しました。ゾラス様」
「ああ、ありがとうラターシュ」
メイラとともにゾラスの助手を務めるラターシュは、若き天才としてフォルガング族に匹敵する魔導技術者に成長していた。
魔力の量こそフォルガング族には及ばないが、知識も技術もなんら遜色ないレベルであり、アウレリア大陸の現地人のなかでは出色である。
まさに彼のような男を天才と呼ぶのであろう。
今回の実験を開始するにあたって、ラターシュが果たした役割は大きかった。
「…………ちょっと殺気立ってる人がいるのが気になります」
ひょっこりと顔を出して、不安そうに眉を顰めたのはメイラである。
どうやら一部のバンヒュート族技術者が、目の色を変えて意気込んでおり、迂闊に触れないほど殺気立っているらしい。
彼女もこの計画になくてはならない人物の一人だった。
この二人を得ただけで、魔導学校を開設した価値があったとゾラスは思う。
しかし二人の気質は必ずしも一致しているわけではない。
ラターシュはアウレリア大陸の発展にバンヒュート族の魔導技術が欠かせないと信じていたが、メイラは一方的にゾラスを慕っているという感じである。
というより、ゾラスが気づいていないだけで、メイラのゾラスに向ける視線は、明らかに恋する乙女のそれであった。
「実験、成功するといいですねゾラス様」
「不確定要素は多いが、こればかりは仕方がない」
もともとゾラスたちがここに飛ばされてきたのは事故だ。
どうしたって不確定要素を排除することはできない。
ゆえに実験は慎重に慎重を重ねる必要はあるとゾラスは考えていた。
だがそうは考えない者も当然ながらいる。
すでに七十の大台に差し掛かりそうなゾラスの上司、ウニクムなどはその筆頭であった。
命あるうちになんとしても故郷へと帰りたい。
そう思うだけの事情がウニクムにはある。なんといっても彼はこの世界に飛ばされてきた数日前に孫が誕生したばかりであった。
生きているうちに孫の顔が見たいと思うのも無理からぬことであろう。
「さて、行くか」
「はいっ!」
メイラとラターシュを左右に従えて、ゾラスは巨大なドーム型の実験施設へと向かった。
そこに待機していたのは、バンヒュート族の研究者五十名と現地アウレリア大陸人の生徒およそ二百人である。
この日のために動員された人数は、延べで一万人を超える。
それほどに大きなエネルギーが、境界構築のためには必要だった。
魔力の操作に耐えうる生徒をできる限り多く造り出すために、魔導学校の七年は費やされてきたと言ってもよい。
こうしてついに実験にこぎつけることができたことが、ゾラスには非常に感慨深いものに思えてならなかった。
「魔力増幅炉(マジックパイル)の安定度は?」
「現在百%」
「誤差0・2%!」
「魔力供給、二分後に臨界に達します!」
うれしそうにゾラスが頷いた。
エンジニアの半分以上は彼がこの七年の間に育て上げた人材たちであり、その技量は確かな成長の跡が窺えた。
これならばもし自分たちがいなくなっても、きっと文明を進化させていくことが可能であろう。
「境界同調実験、開始します!」
オペレーターの宣言とともに、あの運命の日以来となる、異世界との次元境界同調の実験が始まった。
膨大なエネルギーがその波長を次元境界で変化させていく。
「同調率現在34%!」
「…………まずは順調かな?」
侵食率の違いから、暴走を引き起こした前回の実験の轍を踏むわけにはいかなかった。
まずは50%までのデータを取れればよいとゾラスは考えていたのだが、ゾラスを除く技術者たちの意見は別であった。
「同調率50%」
「よし、このあたりで…………」
「出力あげろ! 同調率を70%まで引き上げる!」
「危険です! マグワイア殿!」
「実験の責任者は私だ!」
ゾラスと並ぶ大魔導(グランウィズ)であり、年長でもあるマグワイアは確かに名目上は責任者である。
しかし本当の指揮者が誰であるかほとんどの人間はわかっている。魔導学校の生徒出身にその傾向は強い。
逆にマグワイアに従おうとする人間もいた。
バンヒュート族の技術者で、古株の人間ほど名目上とはいえ責任者であるマグワイアの判断に従おうとした。
結果的に実験は続行され、同調率はゾラスの危惧をよそにみるみる上昇していったのである。
「同調率、82%!」
「さすがにこれ以上は…………」
無理にでも実験を止めようとゾラスが足を踏み出した時である。
「あれは…………」
「月だ! あれは我らのセレスティアの月だぞ!」
同調率が80%を超えた次元境界の向こうに、特徴的な二重の輪に包まれた懐かしい月が現われ、束の間ゾラスも意識を奪われずにはいられなかった。
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