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第二部 根を張り始めた私
奉仕活動
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のらりくらりとかわし続けること数時間。さすがにお互い疲れてきた。
とりあえず、私は今のところ決定的に処分理由になるようなことは言っていないはずだ。
古典ヴァドス語、勉強しておいて良かった……!
そして、馬車の中でさんざん勉強してたのに、どうやら私が古典ヴァドス語を勉強しているという報告は上がって来ていない模様。
だってこの二人、結構無防備に色々話してくれているもの。
書記さんと神官長のやり取りを聞いてなんか色々とわかって来た。
どうやら今回の件は私に対するどーのこーのというよりは「あの小僧」に対する恨みらしいということ。
「あの小僧」……これ、たぶん神官補のことだよね。
どうやら、神罰や奇跡の立ち会いは神官の出世的にはめちゃくちゃ大きな功績らしい。
奇跡を見届けるにふさわしい神官だと神に認められたということになるのか……。
アーロンに聞いたら「偶然に決まっている」とか、言いそうだけどな。
意思の儀式を執り行ったブラウン神官も、同じ理屈で今発言力が急増している……と。
そして、この師弟2人、というか、主に神官補を失脚させたい勢力が神殿内にある。
ここで、私を使おうという発想になったのね。
神罰が虚偽申告だったということになれば、今度はそれが神官補の失点になるから。
うーむ。
なんか、私、完全に巻き込まれてるような気がするな……。
などと考えながら極力表情筋を殺していたら、二人も焦ったようにヒソヒソと話をしている。
『とりあえず神殿長のお帰りまで待った方が良いですよ……』
細目の書記さんは必死で神官長を止めている。ありがとね。私には聞こえてるよ。君は気づいてないみたいだけど!
ちなみに君の古典ヴァドス語が、ちょっとヘタでゆっくりなのも助かってるよ!
しかし、神殿長の帰りを待った方が良いということは……。あれね。神殿長もグルなんだな……
『神殿長が帰ってくると準神官長も帰って来るではないか……!あの女、小うるさいわ、わきまえないわ……』
あ、でも、準神官長は味方になってくれるかもしれない……のかな??
なんて考えを巡らせるていると、「良いことを思いついた!」という感じのヒジョーに良い笑顔で神官長が言った。
「ふむ。それでは、貴方には自発的に本神殿の学舎で無期限の奉仕活動をしてもらいましょう」
は?
「いや、ちょっと、それって自発的でも何でもないですよね?」
「もちろん神殿長が帰ってきて判断が変わる可能性もあります。というか、もちろん本当に虚偽申告をなさってないなら心配することはないでしょう。なあに、半月もすれば帰ってきてきちんと沙汰があるはずです」
「いや、それがどうして奉仕活動につながるんですか?」
「え、いや、この雪の中、まさかあの田舎の村までお一人で歩いて帰られるつもりじゃないでしょう?滞在なさるなら奉仕活動をなさりたいと思われるのが普通でしょう……神罰を引き起こすほどの敬虔な信者とのことですから!」
ちょ……!
無理やり連れてきて、何で帰るときだけ私一人で徒歩の想定なのよ?!
「神もお喜びになられることでしょう。もしも私の決定が神のご意思に沿わないのであれば、すでに私は神罰を受けているはずですからね!」
神官長はウキウキと言葉をつなげる。
「なあに、ご心配なさることはない、掃除だの料理だの平民の女だったら誰でもやれるようなことですよ」
唖然とする私をよそ目に、神官長は書記に言った。
「一階の白の間を彼女の部屋としましょう。メリダに経緯を説明するように」
「えっ……でも白の間は……!」
「一応は客間ですし、暖炉もあります。ちょっと散らかってるかもしれませんが容疑者には十分だと思いますよ」
「いや、でも……」
「あの部屋にあるものはなんでもあげますから使ってください。おまかせします」
それでは……!と、さっぱりした顔をして神官長は部屋を出ていった。
……いつか目に物見せてさしあげるぜ!
と、私は思わず拳を握った。
とりあえず、私は今のところ決定的に処分理由になるようなことは言っていないはずだ。
古典ヴァドス語、勉強しておいて良かった……!
そして、馬車の中でさんざん勉強してたのに、どうやら私が古典ヴァドス語を勉強しているという報告は上がって来ていない模様。
だってこの二人、結構無防備に色々話してくれているもの。
書記さんと神官長のやり取りを聞いてなんか色々とわかって来た。
どうやら今回の件は私に対するどーのこーのというよりは「あの小僧」に対する恨みらしいということ。
「あの小僧」……これ、たぶん神官補のことだよね。
どうやら、神罰や奇跡の立ち会いは神官の出世的にはめちゃくちゃ大きな功績らしい。
奇跡を見届けるにふさわしい神官だと神に認められたということになるのか……。
アーロンに聞いたら「偶然に決まっている」とか、言いそうだけどな。
意思の儀式を執り行ったブラウン神官も、同じ理屈で今発言力が急増している……と。
そして、この師弟2人、というか、主に神官補を失脚させたい勢力が神殿内にある。
ここで、私を使おうという発想になったのね。
神罰が虚偽申告だったということになれば、今度はそれが神官補の失点になるから。
うーむ。
なんか、私、完全に巻き込まれてるような気がするな……。
などと考えながら極力表情筋を殺していたら、二人も焦ったようにヒソヒソと話をしている。
『とりあえず神殿長のお帰りまで待った方が良いですよ……』
細目の書記さんは必死で神官長を止めている。ありがとね。私には聞こえてるよ。君は気づいてないみたいだけど!
ちなみに君の古典ヴァドス語が、ちょっとヘタでゆっくりなのも助かってるよ!
しかし、神殿長の帰りを待った方が良いということは……。あれね。神殿長もグルなんだな……
『神殿長が帰ってくると準神官長も帰って来るではないか……!あの女、小うるさいわ、わきまえないわ……』
あ、でも、準神官長は味方になってくれるかもしれない……のかな??
なんて考えを巡らせるていると、「良いことを思いついた!」という感じのヒジョーに良い笑顔で神官長が言った。
「ふむ。それでは、貴方には自発的に本神殿の学舎で無期限の奉仕活動をしてもらいましょう」
は?
「いや、ちょっと、それって自発的でも何でもないですよね?」
「もちろん神殿長が帰ってきて判断が変わる可能性もあります。というか、もちろん本当に虚偽申告をなさってないなら心配することはないでしょう。なあに、半月もすれば帰ってきてきちんと沙汰があるはずです」
「いや、それがどうして奉仕活動につながるんですか?」
「え、いや、この雪の中、まさかあの田舎の村までお一人で歩いて帰られるつもりじゃないでしょう?滞在なさるなら奉仕活動をなさりたいと思われるのが普通でしょう……神罰を引き起こすほどの敬虔な信者とのことですから!」
ちょ……!
無理やり連れてきて、何で帰るときだけ私一人で徒歩の想定なのよ?!
「神もお喜びになられることでしょう。もしも私の決定が神のご意思に沿わないのであれば、すでに私は神罰を受けているはずですからね!」
神官長はウキウキと言葉をつなげる。
「なあに、ご心配なさることはない、掃除だの料理だの平民の女だったら誰でもやれるようなことですよ」
唖然とする私をよそ目に、神官長は書記に言った。
「一階の白の間を彼女の部屋としましょう。メリダに経緯を説明するように」
「えっ……でも白の間は……!」
「一応は客間ですし、暖炉もあります。ちょっと散らかってるかもしれませんが容疑者には十分だと思いますよ」
「いや、でも……」
「あの部屋にあるものはなんでもあげますから使ってください。おまかせします」
それでは……!と、さっぱりした顔をして神官長は部屋を出ていった。
……いつか目に物見せてさしあげるぜ!
と、私は思わず拳を握った。
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