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第二部 根を張り始めた私
古典ヴァドス語
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「昨日、あの後……考えていたのです」
翌朝、朝食の準備をしている私に神官補は切り出した。
一晩ぐっすり寝たせいか顔色が良い。
今日はパジャマ……というか寝巻きを作ってあげる予定。パジャマはまだズボンを履くのが難しいんじゃないかと思うのよ。
「マージョさん、古典ヴァドス語を勉強しませんか?」
は? 古典ヴァドス語……ですか?
「はい。古典ヴァドス語です。子供のうちに勉強しないと習得は難しいですが、ちょっと単語が分かるだけでもお役に立つかもしれません。大きい契約書は古典ヴァドス語で書かれることも多いですし……。もしも興味がお有りでしたら……」
「教えてもらえるんですか?! お願いしますっ!」
大きな声が出た。
古典ヴァドス語は、この世界のエリートの共通語であり、神殿の言語である。
昔の地球だったらラテン語や、極東文化圏の漢籍なんかに似てる。
断じて平均的な知識ではないからマージョの「知識」には入っていない。
存在自体は知ってるけど……。
特に女性が身につけるものだとは思われていない。
でも、役に立つのだ、これが。
他国の人間でもエリート層であれば、話せる。読める。書ける。
女性でも、特に身分が高い……王族やそれに準じる立場の人はそれなりに手ほどきを受ける。
使えること自体が一つの身分証明みたいなものだ。
神官補の言った通り、国や本神殿と関わるような大口の契約は古典ヴァドス語で書かれる。読めなかったら書記官を立てるしかないし、雇った書記官を信頼するしかない。
ちょっと読めるだけでも詐欺の抑止力としては相当なものだ。
そして何よりも、読める書籍の数が段違いになる!
もちろん、出来る仕事も増える。
古典ヴァドス語は、普通だったら子供のうちに始めるもので、習得に時間もお金もかかる。とてもじゃないけど、先生も見つけられないし、謝礼も払えないと諦めていた言語だった。
まさかこんなところで学ぶチャンスが与えられるなんて!
「一月もご迷惑をおかけすることになります。でも、歩けなくても少しでもマージョさんに恩返しをしたいと思いまして……」
そうか……。神官ってこの世界でも有数の知識階級だよね。
「女性には興味のない言語かもしれませんが……」
いやいや、興味ありまくりですよ!
「あの……他に教えられることってありますか?」
「神学の基礎とか……」
うお~。それも面白そう!!
「でも一ヶ月程度で、ある程度足は回復しますよね」
「はい。それを考えると、古典ヴァドス語に絞った方が良いかもしれませんね。一月では、本当に基礎しか学べませんし……」
「とりあえず、今日から始めていただけますか? ぜひ!」
私の熱意に神官補は、やや引いていたけれど、いやいや、本当、これは嬉しい!
確実に食費も宿代も出るよ!おつりがでるくらい。
「それでは、何か書くもの……は……ありますか?」
突然口ごもる神官補。
紙は高級品だからね!
でも、ありますよ!我が家には!
石板も、紙も!ガラスペンもね。
朝食の準備の手を止めて、いそいそと持っていく。
「これ……本当に全部使っても良いんですか?」
もちろんです!
「それでは今日の午後から始めましょう」
翌朝、朝食の準備をしている私に神官補は切り出した。
一晩ぐっすり寝たせいか顔色が良い。
今日はパジャマ……というか寝巻きを作ってあげる予定。パジャマはまだズボンを履くのが難しいんじゃないかと思うのよ。
「マージョさん、古典ヴァドス語を勉強しませんか?」
は? 古典ヴァドス語……ですか?
「はい。古典ヴァドス語です。子供のうちに勉強しないと習得は難しいですが、ちょっと単語が分かるだけでもお役に立つかもしれません。大きい契約書は古典ヴァドス語で書かれることも多いですし……。もしも興味がお有りでしたら……」
「教えてもらえるんですか?! お願いしますっ!」
大きな声が出た。
古典ヴァドス語は、この世界のエリートの共通語であり、神殿の言語である。
昔の地球だったらラテン語や、極東文化圏の漢籍なんかに似てる。
断じて平均的な知識ではないからマージョの「知識」には入っていない。
存在自体は知ってるけど……。
特に女性が身につけるものだとは思われていない。
でも、役に立つのだ、これが。
他国の人間でもエリート層であれば、話せる。読める。書ける。
女性でも、特に身分が高い……王族やそれに準じる立場の人はそれなりに手ほどきを受ける。
使えること自体が一つの身分証明みたいなものだ。
神官補の言った通り、国や本神殿と関わるような大口の契約は古典ヴァドス語で書かれる。読めなかったら書記官を立てるしかないし、雇った書記官を信頼するしかない。
ちょっと読めるだけでも詐欺の抑止力としては相当なものだ。
そして何よりも、読める書籍の数が段違いになる!
もちろん、出来る仕事も増える。
古典ヴァドス語は、普通だったら子供のうちに始めるもので、習得に時間もお金もかかる。とてもじゃないけど、先生も見つけられないし、謝礼も払えないと諦めていた言語だった。
まさかこんなところで学ぶチャンスが与えられるなんて!
「一月もご迷惑をおかけすることになります。でも、歩けなくても少しでもマージョさんに恩返しをしたいと思いまして……」
そうか……。神官ってこの世界でも有数の知識階級だよね。
「女性には興味のない言語かもしれませんが……」
いやいや、興味ありまくりですよ!
「あの……他に教えられることってありますか?」
「神学の基礎とか……」
うお~。それも面白そう!!
「でも一ヶ月程度で、ある程度足は回復しますよね」
「はい。それを考えると、古典ヴァドス語に絞った方が良いかもしれませんね。一月では、本当に基礎しか学べませんし……」
「とりあえず、今日から始めていただけますか? ぜひ!」
私の熱意に神官補は、やや引いていたけれど、いやいや、本当、これは嬉しい!
確実に食費も宿代も出るよ!おつりがでるくらい。
「それでは、何か書くもの……は……ありますか?」
突然口ごもる神官補。
紙は高級品だからね!
でも、ありますよ!我が家には!
石板も、紙も!ガラスペンもね。
朝食の準備の手を止めて、いそいそと持っていく。
「これ……本当に全部使っても良いんですか?」
もちろんです!
「それでは今日の午後から始めましょう」
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