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第二部 根を張り始めた私

雪室の中身

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雪かきをしながら、雪室までたどり着くと、もう村の人がずいぶん集まっていた。
「しかし、これはな……」
集まった村の人達の口調はちょっとだけ不満げだ。
「肉が足りなくなるかもしれないな……」
「まあ、肉がなくても豆でも食べていれば良いんだが」
「うちの村は色々間に合ったけど、困っている村もあるだろうよ……」


夏の終わり、まだ太りきっていない家畜を潰して売らなくてはならなかったツケで、今年の雪室の肉は例年より少ないのだという。
「まあ、冬至祭はいつも通りやろうよ」
チャーリーはぶっきらぼうに言う。
「せっかくのお祭りだし」
「まあ、確かに小ぶりにするんだったら新年の方だな」
周囲の人達は頷いている。

私にはよくわからないけれど、新年もお祝いするのね。

「そりゃそうだよ、祭りの一つもなくちゃ気が滅入るだろ?」

雪かきをしていた村の人が教えてくれる。
そうか!気が滅入ってたのは私だけじゃないのね。
考えてみると冬の間は数週間おきに何かの行事がある。
暮らしの知恵なんだろうな。


雪室の中を見回して、私は小さなお肉を少しだけもらって帰ることにした。
でもこれは冬至祭用ではなくてその後のためのもの。
冬至祭に配るものは、みんなの話を聞きながら決めたのだ!
ドーナツに!!


エレンさんの家もリジーさんの家にもオーブンがある。お肉のローストやパイを配ってくれるのはそのためだ。
他の家からはシチューや漬物が来そうな気がする。あとは甘みとして干した果物とかね。
でも私にはオーブンはない。肉もあまりない……となると、スキルを使って入手が比較的簡単な砂糖や油や小麦粉の出番だと思うのよ。

かりんとうもめちゃくちゃ評判良かったし、大変だけど、やってみましょう、揚げ物!

本当だったら日持ちするかりんとうの方がいいのかもしれないけれど、ドーナツにしたいのは、あれですね。
私が食べたいから!

昔ながらの、素朴な感じのものも良いし、冷めても美味しい。
ちょっとお祭り感もあるし、いいよね!良いよね、ドーナツ!!
油物は掃除が大変だけど、やる価値はある!気がする!!

本当は昔一度だけ作ったデンマークのクリスマスの揚げ菓子とか、作ってみたいんだけど、レシピがない。

わざわざ手書きで残したりしなかったからなあ。

クライナーっていう、かりんとうより少し柔らかくて、ドーナツほどふわふわじゃない可愛いお菓子だった。
中に入れる砂糖は控えめで、でも粉砂糖を振りかけるから口に入れた直後はシュワっと甘い。日持ちもちょっとするし……。

……うろ覚えだけど作ってみて、分量を記録しておこうかな。

クライナーとドーナツとか、どうだろう?

うん。いいかもしれない。やってみようかな……。

「マージョ、なんか悪い顔してるね」
アリスちゃんが私の顔を覗き込んだ。

「ふふふ。パイとローストが来るんだったら私はお菓子を作ろうかと思って!」
「お菓子?!」

アリスちゃんとマシュー君の目がパッと見開いた。子供は嬉しいよね、お菓子!

「かりんとう?!」

えっ! かりんとうをご所望ですか?

「うん!かりんとう、すごくおいしい……夢の食べ物みたい……」

むむむむむ。結局一番強いのは何度も作ってレシピが頭に入ってるお菓子か……!
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