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第二部 根を張り始めた私
雪に閉ざされて
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冬が厳しいということは聞いていた。なんせ、冬にこっちに来てたら死んでいたかもしれないと神々に心配されたくらいだもの。
エレンさんにもリジーさんにも、何度も「冬の間私たちと暮らす?」と聞かれたりなんかもしていた。
だから、わかっていた。
っていうか、わかったつもりになっていた。
で、今思うんだけど……死ぬわ!これ!
普通に死ねる。
最初は良かったのだ。
何もかも目新しかったし、色々準備もしたし、それなりに自信だってあった。
一人暮らしも長かったし、冬の間、のんびり色々するのもいいな、とか、思ってた。
思ってたんだけど!!!
間違ってました。
もう、本当。
冬を甘く見てました。
吹雪が下手したら数日続くし、ちょっと雪かきしないと閉じ込められそうな怖さがあるし、つららがめちゃくちゃ育ってるし、すごい……
前世は関東育ちだったから、そもそも私には雪国生活のノウハウがない。
マージョの「知識」を何度も確認しながら生活しているから、「何か見落としてるかも……」って、妙に心配したりもしてる。
気づかないうちに雪に潰されて家ごと崩壊して死ぬとかありそう……!
「そんなに心配しなくてもお前は簡単には死なぬぞ」
冬の始め、気をもんでいる私にアーロンは、そう言ってくれた。
そっか……。私、ちゃんとできてるのかな……。
毎日雪かきしてるしな……
なんて、ちょっと前向きになったら、アーロンに叩きのめされた。
「いや、そうではなく、この家が半聖域化してるからだな」
げふん。
私の頑張りは関係なかったよ!
「まあ、そうそう簡単に一酸化炭素中毒にはならないだろうな」
あー。そっか。
一酸化炭素中毒は確かに危ないだろうな。煙突もあるし、隙間風もあるけど、雪で全ての隙間が埋められたら、確実にありそうだ。
スタンピードランチの後は「お家が一番」なんて思ってたけど、家から出ることがあまりできないというのも辛い。
庭に出るのもなかなか大変なのだ。
ただでさえ狭い家なのに、窓からあまり明かりも入らずに暗いし、防寒頑張ったけどやっぱり寒いし、外の音も雪が吸ってしまって静かだし……。
寒くて暗くて食べ物も似たようなものが続く。
「飽きる……!」
お一人様が好きだなんて言っていた前世はネットもあればコンビニもあって、確かに生活は一人でも色々と「つながって」いたんだな……。
今!とりあえず!大声で!叫びたい!
生まれて初めて一人暮らしがさみしいと思ってます!!
読む本もなくて、手芸を見せる相手もアーロンだけで、私は完全に煮詰まっていた。
「アーロンがいて良かった……」
「……私はお前の話し相手ではないのだが……」
「ひどい……そんなこと、言わないで……」
すんすんと泣きながらスキルを発動させ、「ご自由にお取り下さい」と日本の道端に置かれている家庭菜園の収穫物を探す。
季節がズレているせいか、見つかるのは、ナス……そして、ゴーヤ、ゴーヤ、ゴーヤ……ごくまれにモロヘイヤ……。
緑の葉物野菜など望むべくもない真冬の北国で新鮮な野菜は嬉しいはずなのだけど、ゴーヤは私はとても苦手なのだ。
目先が変わるから食べることを考えるけど、普段だったら食べない。
「ううう……食べたくない……でもビタミンが……お肌も……お通じも……ザワークラウトにも飽きた……」
逡巡する私の顔がおかしかったらしい。アーロンが笑う気配がする。失礼な神だ。
でも、私は今、この世界に来て初めて切実に死の可能性を感じている。
家から一歩も出ることができないほどの吹雪は続いても4日程度。
庭から出るのが危険な程度の降ったりやんだりの積雪は続いても2週間。
……なんてマージョの「知識」は言っているけど、これ、確かに人が死ぬわ。
体調を崩しても気づいてもらえない可能性が高い。
ここにきて初めて収穫祭があれだけ大規模だった理由もわかった。
この冬の間に亡くなるお年寄りや小さい子供もいるに違いない。
春にまた会えるとは限らないから、近隣の街で徒弟をやっている人たちが帰って来てたんだ……。
雪室はできるだけ犠牲者を減らすための知恵なんだろうけど、準備なしで冬だったら雪室にたどり着けずに餓死する可能性がある。薪だって足りなくなったら途端に生命の危機だ。
雪かきがヘビーな日はめちゃくちゃ疲労困憊で、翌日の筋肉痛もすごいのに、外に出られない日はやたら運動不足で眠れない。生まれて初めて自発的に腹筋運動やスクワットを始めたよ!
日にちの感覚もどんどん薄れていくから、毎日記録をつけて、気分はロビンソン・クルーソーだ。
「う~~~飽きた~~!!」
久しぶりに朝から晴れたので、雪かきをしようと、着替えた日、本当に久しぶりに、ドアがノックされた。
エレンさんにもリジーさんにも、何度も「冬の間私たちと暮らす?」と聞かれたりなんかもしていた。
だから、わかっていた。
っていうか、わかったつもりになっていた。
で、今思うんだけど……死ぬわ!これ!
普通に死ねる。
最初は良かったのだ。
何もかも目新しかったし、色々準備もしたし、それなりに自信だってあった。
一人暮らしも長かったし、冬の間、のんびり色々するのもいいな、とか、思ってた。
思ってたんだけど!!!
間違ってました。
もう、本当。
冬を甘く見てました。
吹雪が下手したら数日続くし、ちょっと雪かきしないと閉じ込められそうな怖さがあるし、つららがめちゃくちゃ育ってるし、すごい……
前世は関東育ちだったから、そもそも私には雪国生活のノウハウがない。
マージョの「知識」を何度も確認しながら生活しているから、「何か見落としてるかも……」って、妙に心配したりもしてる。
気づかないうちに雪に潰されて家ごと崩壊して死ぬとかありそう……!
「そんなに心配しなくてもお前は簡単には死なぬぞ」
冬の始め、気をもんでいる私にアーロンは、そう言ってくれた。
そっか……。私、ちゃんとできてるのかな……。
毎日雪かきしてるしな……
なんて、ちょっと前向きになったら、アーロンに叩きのめされた。
「いや、そうではなく、この家が半聖域化してるからだな」
げふん。
私の頑張りは関係なかったよ!
「まあ、そうそう簡単に一酸化炭素中毒にはならないだろうな」
あー。そっか。
一酸化炭素中毒は確かに危ないだろうな。煙突もあるし、隙間風もあるけど、雪で全ての隙間が埋められたら、確実にありそうだ。
スタンピードランチの後は「お家が一番」なんて思ってたけど、家から出ることがあまりできないというのも辛い。
庭に出るのもなかなか大変なのだ。
ただでさえ狭い家なのに、窓からあまり明かりも入らずに暗いし、防寒頑張ったけどやっぱり寒いし、外の音も雪が吸ってしまって静かだし……。
寒くて暗くて食べ物も似たようなものが続く。
「飽きる……!」
お一人様が好きだなんて言っていた前世はネットもあればコンビニもあって、確かに生活は一人でも色々と「つながって」いたんだな……。
今!とりあえず!大声で!叫びたい!
生まれて初めて一人暮らしがさみしいと思ってます!!
読む本もなくて、手芸を見せる相手もアーロンだけで、私は完全に煮詰まっていた。
「アーロンがいて良かった……」
「……私はお前の話し相手ではないのだが……」
「ひどい……そんなこと、言わないで……」
すんすんと泣きながらスキルを発動させ、「ご自由にお取り下さい」と日本の道端に置かれている家庭菜園の収穫物を探す。
季節がズレているせいか、見つかるのは、ナス……そして、ゴーヤ、ゴーヤ、ゴーヤ……ごくまれにモロヘイヤ……。
緑の葉物野菜など望むべくもない真冬の北国で新鮮な野菜は嬉しいはずなのだけど、ゴーヤは私はとても苦手なのだ。
目先が変わるから食べることを考えるけど、普段だったら食べない。
「ううう……食べたくない……でもビタミンが……お肌も……お通じも……ザワークラウトにも飽きた……」
逡巡する私の顔がおかしかったらしい。アーロンが笑う気配がする。失礼な神だ。
でも、私は今、この世界に来て初めて切実に死の可能性を感じている。
家から一歩も出ることができないほどの吹雪は続いても4日程度。
庭から出るのが危険な程度の降ったりやんだりの積雪は続いても2週間。
……なんてマージョの「知識」は言っているけど、これ、確かに人が死ぬわ。
体調を崩しても気づいてもらえない可能性が高い。
ここにきて初めて収穫祭があれだけ大規模だった理由もわかった。
この冬の間に亡くなるお年寄りや小さい子供もいるに違いない。
春にまた会えるとは限らないから、近隣の街で徒弟をやっている人たちが帰って来てたんだ……。
雪室はできるだけ犠牲者を減らすための知恵なんだろうけど、準備なしで冬だったら雪室にたどり着けずに餓死する可能性がある。薪だって足りなくなったら途端に生命の危機だ。
雪かきがヘビーな日はめちゃくちゃ疲労困憊で、翌日の筋肉痛もすごいのに、外に出られない日はやたら運動不足で眠れない。生まれて初めて自発的に腹筋運動やスクワットを始めたよ!
日にちの感覚もどんどん薄れていくから、毎日記録をつけて、気分はロビンソン・クルーソーだ。
「う~~~飽きた~~!!」
久しぶりに朝から晴れたので、雪かきをしようと、着替えた日、本当に久しぶりに、ドアがノックされた。
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