異世界に召喚されたんですけど、スキルが「資源ごみ」だったので隠れて生きたいです

新田 安音(あらた あのん)

文字の大きさ
上 下
115 / 172
第二部 根を張り始めた私

雪に閉ざされて

しおりを挟む
冬が厳しいということは聞いていた。なんせ、冬にこっちに来てたら死んでいたかもしれないと神々に心配されたくらいだもの。

エレンさんにもリジーさんにも、何度も「冬の間私たちと暮らす?」と聞かれたりなんかもしていた。
だから、わかっていた。

っていうか、わかったつもりになっていた。

で、今思うんだけど……死ぬわ!これ!
普通に死ねる。

最初は良かったのだ。
何もかも目新しかったし、色々準備もしたし、それなりに自信だってあった。
一人暮らしも長かったし、冬の間、のんびり色々するのもいいな、とか、思ってた。

思ってたんだけど!!!

間違ってました。

もう、本当。
冬を甘く見てました。

吹雪が下手したら数日続くし、ちょっと雪かきしないと閉じ込められそうな怖さがあるし、つららがめちゃくちゃ育ってるし、すごい……

前世は関東育ちだったから、そもそも私には雪国生活のノウハウがない。
マージョの「知識」を何度も確認しながら生活しているから、「何か見落としてるかも……」って、妙に心配したりもしてる。
気づかないうちに雪に潰されて家ごと崩壊して死ぬとかありそう……!

「そんなに心配しなくてもお前は簡単には死なぬぞ」
冬の始め、気をもんでいる私にアーロンは、そう言ってくれた。

そっか……。私、ちゃんとできてるのかな……。
毎日雪かきしてるしな……
なんて、ちょっと前向きになったら、アーロンに叩きのめされた。

「いや、そうではなく、この家が半聖域化してるからだな」

げふん。
私の頑張りは関係なかったよ!

「まあ、そうそう簡単に一酸化炭素中毒にはならないだろうな」

あー。そっか。



一酸化炭素中毒は確かに危ないだろうな。煙突もあるし、隙間風もあるけど、雪で全ての隙間が埋められたら、確実にありそうだ。



スタンピードランチの後は「お家が一番」なんて思ってたけど、家から出ることがあまりできないというのも辛い。
庭に出るのもなかなか大変なのだ。

ただでさえ狭い家なのに、窓からあまり明かりも入らずに暗いし、防寒頑張ったけどやっぱり寒いし、外の音も雪が吸ってしまって静かだし……。


寒くて暗くて食べ物も似たようなものが続く。


「飽きる……!」

お一人様が好きだなんて言っていた前世はネットもあればコンビニもあって、確かに生活は一人でも色々と「つながって」いたんだな……。


今!とりあえず!大声で!叫びたい!

生まれて初めて一人暮らしがさみしいと思ってます!!


読む本もなくて、手芸を見せる相手もアーロンだけで、私は完全に煮詰まっていた。

「アーロンがいて良かった……」
「……私はお前の話し相手ではないのだが……」
「ひどい……そんなこと、言わないで……」

すんすんと泣きながらスキルを発動させ、「ご自由にお取り下さい」と日本の道端に置かれている家庭菜園の収穫物を探す。
季節がズレているせいか、見つかるのは、ナス……そして、ゴーヤ、ゴーヤ、ゴーヤ……ごくまれにモロヘイヤ……。

緑の葉物野菜など望むべくもない真冬の北国で新鮮な野菜は嬉しいはずなのだけど、ゴーヤは私はとても苦手なのだ。
目先が変わるから食べることを考えるけど、普段だったら食べない。


「ううう……食べたくない……でもビタミンが……お肌も……お通じも……ザワークラウトにも飽きた……」

逡巡する私の顔がおかしかったらしい。アーロンが笑う気配がする。失礼な神だ。

でも、私は今、この世界に来て初めて切実に死の可能性を感じている。

家から一歩も出ることができないほどの吹雪は続いても4日程度。
庭から出るのが危険な程度の降ったりやんだりの積雪は続いても2週間。

……なんてマージョの「知識」は言っているけど、これ、確かに人が死ぬわ。
体調を崩しても気づいてもらえない可能性が高い。

ここにきて初めて収穫祭があれだけ大規模だった理由もわかった。
この冬の間に亡くなるお年寄りや小さい子供もいるに違いない。

春にまた会えるとは限らないから、近隣の街で徒弟をやっている人たちが帰って来てたんだ……。

雪室はできるだけ犠牲者を減らすための知恵なんだろうけど、準備なしで冬だったら雪室にたどり着けずに餓死する可能性がある。薪だって足りなくなったら途端に生命の危機だ。
    

雪かきがヘビーな日はめちゃくちゃ疲労困憊で、翌日の筋肉痛もすごいのに、外に出られない日はやたら運動不足で眠れない。生まれて初めて自発的に腹筋運動やスクワットを始めたよ!
日にちの感覚もどんどん薄れていくから、毎日記録をつけて、気分はロビンソン・クルーソーだ。

「う~~~飽きた~~!!」

久しぶりに朝から晴れたので、雪かきをしようと、着替えた日、本当に久しぶりに、ドアがノックされた。
しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

異世界でスローライフを満喫する為に

美鈴
ファンタジー
ホットランキング一位本当にありがとうございます! 【※毎日18時更新中】 タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です! ※カクヨム様にも投稿しております ※イラストはAIアートイラストを使用

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん

夏本ゆのす(香柚)
ファンタジー
高校生たちの異世界召喚にまきこまれましたが、関係ないので森に引きこもります。 のんびり余生をすごすつもりでしたが、何故か魔法が使えるようなので少しだけ頑張って生きてみようと思います。

処理中です...