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第一部 綿毛のようにたどり着きました
神力の器
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朝一番に、熱いお茶を飲んで、神棚に備え、スキルを使った。
窓辺のカーテンは夏用の薄い青いコットンのものだけれど、そろそろ分厚い生地のものが欲しい。
青いカーテンの上から二重カーテンとしてぶら下げて断熱を図りたい。
あとは、玄関ね。玄関にも実はカーテンをかけたいと思っている。
これも、できれば二重に。汚れても良い厚手生地を入ってすぐの所に。それから見た目のちょっと良いものを50センチくらい手前に。
隙間風を減らせばずいぶん暖かく過ごせるはず。
事業系資源ゴミスキルはレベルが上がって、現在インテリア系がかなり覗けるようになっている。
これが、とても助かる。
障子の紙の端切れだとか、丈夫でありがたいし、薄手の板や、ちょっとネジ曲がった釘なんかも手に入る。
そして、ソファやカーテンの端切れ。
かなりしっかりとした厚手の生地が入手できる。
ただ、依然神力が伸びている実感はない。だから何を選ぶのかは慎重にしないといけない。
小さなガラス瓶やタオルや古着は比較的神力を消費しないみたいなんだけど、珍しいものや、フィルタリングが複雑なものは一気に「もっていかれる」感覚がある。
最近、ようやく神力枯渇の兆しがわかるようになって来たのだ。そういう意味ではちょっとは成長してるみたいなんだけどな……。
「天然素材のカーペットの切れ端もあるが……」
いつの間にかアーロンが出てきて口を濁した。
……あれ?
「どうかしたか?」
……アーロン、なんか、今日美しい……。
「は?」
なんか、アーロンがキラキラしい。
すっと通った鼻筋、涼やかな目もと。
そして、間違いようのないオーラのようなもの。
怜悧な刃物のような空気が彼を包んでいる。ちょっと圧倒される。
「あ……そうか」
アーロンは静かに言うとちょっと首を動かした。
「あ……」
顔立ちはそのままなのに、先程までの圧倒的な美しさが消えていつものアーロンになる。
「な、何が起きたの……?」
「神力を調整したのだ」
神力の調整……。
「今までもしてたの?」
「いや、最近だな」
アーロンは事もなげにそう言うと、フィルタリングのレベルを一つ上げられるぞ、と教えてくれた。
「長い化繊の糸を外したりできるようになる?」
「それはまだ無理だ」
「そう……」
「もっとポイントを貯めて神力の器をふやすこともできるな」
「神力の器?」
「お前は神力を生み出す能力は非常に高いんだが、貯めておく器が小さいのだよ」
は?
なにそれ初めて聞いたのですが!
「それはそうだろう。私も初めて言ったからな」
……。
アーロンによると。
世界は神力に満ちているのだけれど、人間は基本的には神力を祈りの形でわずかに使うことができるだけなのだそうだ。
わずかに、というのは、量の問題ではなく、使い方の問題で、普通は人間は祈ることによって自分の中に神力を生み出し、世界の神力と混ぜ合わせ、神に捧げることができる。
人によってはずっと神について考えることで神力をその身に貯めることができる人もいる。
でも、神からの呼びかけを聞いたり、神に働きかけるのには「捧げる」レベルではなく大量に神力を発散する必要があるのだそうだ。そしてそれは「神力を貯める」のともまた違うスキルなのだそうだ。
「神力を常にやり取りする、というのは人間は普通はかなり訓練しないとできないものだ。お前は何故か最初から難しげもなくやっていたがな」
なんてこと!
衝撃の事実発覚……!
「気づいていなかったのか。あれほど私を呼び出しておいて」
それは、アーロンが親切で顔を見に来てくれているんだと思ってたよ……。
「まあ、気になったのは事実だが……」
アーロンは複雑な顔をした。
「それでも神力を生み出す力がないものの声はあんなふうには届かぬ」
……!そうだったの……!
「しかも、どんどん上手くなって行っているから、このあたりで神力を貯める能力を上げても良いだろう」
それが神力の器を大きくするということ……?
「そうだ。ただし、ポイントはかなり使うことになる」
うーむ。
しばらく入手できるもののレベルは上がらないということだね。
「そういうことになるな」
でも冬支度は何とかなりそうだし、それだったら器を大きくするために色々ためておいたほうがいいかもね。
今のままでは、やはり入手できる量に制限がありすぎるし……。
無理すると、すぐに意識が飛びそうになるし……。
「まあ、そうだな……」
私とて、お前が倒れるのをまた見たくはないからな、と、アーロンは言った。
「てへへ。ご心配をおかけします」
「もう少し真面目になれ」
……真顔で怒られた。
窓辺のカーテンは夏用の薄い青いコットンのものだけれど、そろそろ分厚い生地のものが欲しい。
青いカーテンの上から二重カーテンとしてぶら下げて断熱を図りたい。
あとは、玄関ね。玄関にも実はカーテンをかけたいと思っている。
これも、できれば二重に。汚れても良い厚手生地を入ってすぐの所に。それから見た目のちょっと良いものを50センチくらい手前に。
隙間風を減らせばずいぶん暖かく過ごせるはず。
事業系資源ゴミスキルはレベルが上がって、現在インテリア系がかなり覗けるようになっている。
これが、とても助かる。
障子の紙の端切れだとか、丈夫でありがたいし、薄手の板や、ちょっとネジ曲がった釘なんかも手に入る。
そして、ソファやカーテンの端切れ。
かなりしっかりとした厚手の生地が入手できる。
ただ、依然神力が伸びている実感はない。だから何を選ぶのかは慎重にしないといけない。
小さなガラス瓶やタオルや古着は比較的神力を消費しないみたいなんだけど、珍しいものや、フィルタリングが複雑なものは一気に「もっていかれる」感覚がある。
最近、ようやく神力枯渇の兆しがわかるようになって来たのだ。そういう意味ではちょっとは成長してるみたいなんだけどな……。
「天然素材のカーペットの切れ端もあるが……」
いつの間にかアーロンが出てきて口を濁した。
……あれ?
「どうかしたか?」
……アーロン、なんか、今日美しい……。
「は?」
なんか、アーロンがキラキラしい。
すっと通った鼻筋、涼やかな目もと。
そして、間違いようのないオーラのようなもの。
怜悧な刃物のような空気が彼を包んでいる。ちょっと圧倒される。
「あ……そうか」
アーロンは静かに言うとちょっと首を動かした。
「あ……」
顔立ちはそのままなのに、先程までの圧倒的な美しさが消えていつものアーロンになる。
「な、何が起きたの……?」
「神力を調整したのだ」
神力の調整……。
「今までもしてたの?」
「いや、最近だな」
アーロンは事もなげにそう言うと、フィルタリングのレベルを一つ上げられるぞ、と教えてくれた。
「長い化繊の糸を外したりできるようになる?」
「それはまだ無理だ」
「そう……」
「もっとポイントを貯めて神力の器をふやすこともできるな」
「神力の器?」
「お前は神力を生み出す能力は非常に高いんだが、貯めておく器が小さいのだよ」
は?
なにそれ初めて聞いたのですが!
「それはそうだろう。私も初めて言ったからな」
……。
アーロンによると。
世界は神力に満ちているのだけれど、人間は基本的には神力を祈りの形でわずかに使うことができるだけなのだそうだ。
わずかに、というのは、量の問題ではなく、使い方の問題で、普通は人間は祈ることによって自分の中に神力を生み出し、世界の神力と混ぜ合わせ、神に捧げることができる。
人によってはずっと神について考えることで神力をその身に貯めることができる人もいる。
でも、神からの呼びかけを聞いたり、神に働きかけるのには「捧げる」レベルではなく大量に神力を発散する必要があるのだそうだ。そしてそれは「神力を貯める」のともまた違うスキルなのだそうだ。
「神力を常にやり取りする、というのは人間は普通はかなり訓練しないとできないものだ。お前は何故か最初から難しげもなくやっていたがな」
なんてこと!
衝撃の事実発覚……!
「気づいていなかったのか。あれほど私を呼び出しておいて」
それは、アーロンが親切で顔を見に来てくれているんだと思ってたよ……。
「まあ、気になったのは事実だが……」
アーロンは複雑な顔をした。
「それでも神力を生み出す力がないものの声はあんなふうには届かぬ」
……!そうだったの……!
「しかも、どんどん上手くなって行っているから、このあたりで神力を貯める能力を上げても良いだろう」
それが神力の器を大きくするということ……?
「そうだ。ただし、ポイントはかなり使うことになる」
うーむ。
しばらく入手できるもののレベルは上がらないということだね。
「そういうことになるな」
でも冬支度は何とかなりそうだし、それだったら器を大きくするために色々ためておいたほうがいいかもね。
今のままでは、やはり入手できる量に制限がありすぎるし……。
無理すると、すぐに意識が飛びそうになるし……。
「まあ、そうだな……」
私とて、お前が倒れるのをまた見たくはないからな、と、アーロンは言った。
「てへへ。ご心配をおかけします」
「もう少し真面目になれ」
……真顔で怒られた。
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