異世界に召喚されたんですけど、スキルが「資源ごみ」だったので隠れて生きたいです

新田 安音(あらた あのん)

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第一部 綿毛のようにたどり着きました

日常再び

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「やっぱりお家が一番!」

 帰ってきてまず言ったのはそれで、ヒルトップ村の小さな家は――小屋に毛が生えたようなものだけど――やっぱり私の家だった。何だか懐かしくて涙が出そう。
こんな気分になるとは思わなかったな……。
ひとりで、時々好きな友達とあったりしてのんびり過ごしたいって、この世界に転生してから私の希望はあまり変わっていない。
山吹亭は美味しかったし、バグズブリッジには面白いものがたくさんあったけれどね。
でも、やっぱりお家が一番!

「マージョ、ありがとう」
リジーさんが迎えに来た時、アリスちゃんはぎゅっと私に抱きついて恥ずかしげに囁いた。
「大変だったけど、楽しかった」

そう……!楽しかったなら良かった!
明日は休んで、明後日からまた勉強を始めようね。

エレンさんとリジーさんにもお土産を持って帰ってきた。
トーマスさんやチャーリーにもものすごくお世話になったからね。
村では見ないような日持ちする食材を中心に、冬、家の中で話の種になりそうなものを。リジーさんの家には本も買った。高かったけれど、冬の間、チャーリーとアリスちゃんが読むだろう。いい暇つぶしになると思う。


まだ秋の始まりだったけど、村はすでに全力で冬支度だった。

村の時間はゆっくりで、何も起きてないように見えたけど、私がいない3週間の間も、もちろん村では村の生活が営まれていたわけで、帰ってきたらささやかな違いがあった。ヒヨコの数が増えていたり、豚が子豚を産んでいたり。(しかも六匹も!)

神棚に捧げられている花が新しかったり。(チャーリーが、バグズブリッジに来る前に花を捧げてくれたみたい)

庭の農作物には実っているものも多かったし、いつの間にか収穫されてしまっているものもあった。
子豚も基本的には母親豚から乳離れしたらメンストン農場へ行くことになる。

多少は管理料だと思うから、基本的にはそこはおおらかに流している。

柿の木っぽいなと思っていた木はやはり柿の木で実がなり始めてた色がほんのり変わり始めてきた柿を見てニマニマしてしまう。

唯一残念なのは!
柿渋作りのタイミングを!
のがしてしまったことですよ!!
でも、柿酢は、絶対に作るつもり。

柿渋は青柿を発酵させて作る。防水効果のある、とても便利な素材だ。和紙に塗って和傘を作るのに使われたりしていたんだよね。
と言うわけで柿渋作りは失敗しても良いからやってみたいと思っていたのだ。スタンピードランチのことや色々あって、この木が柿だと確定できたのが遅くなってしまってとても悔しい。

それからもう一つ残念なこと。干し柿はできそうにないんだよな……
帰ってきて初めて気づいたんだけれど、空気にどことなく寒さが漂い始めているし、日も驚くほど短くなって来ている。
夏の間はとても日が長かったけれど、逆に冬の日はとても短いのだろうな。
これでは外で日に当てても簡単には乾かないだろう。
このあたりの地域はかなり北だから、ここの柿は絶対に渋柿だと思う。つまり、干さないと甘くない。
暖炉の前に吊るしておいたら違うかな……

冬が来る前に布ものも充実させたい。
ずいぶん充実したので、少しゆったりとした気持ちで取りかかれそうなのが嬉しい。

服はパジャマも含め自作したものが少しあるし、布団類も、掛布団カバーに適当なタオルを突っ込んでいた時期と違って、きちんとしたパッチワークキルトに変わってる。
タオル生地を裏面に、表面は色々な布のパッチワーク。いかにもカントリー調になっておかしくないと思うんだけど、実際は割とモダンで私好みのデザインだ。
実はこれはバグズブリッジで、仮縫いしない繕い屋さんの女の子たちに作ってもらったのだ。
悪いかな……と思いつつ、布との物々交換を申し出たんだけど、快く受け入れてもらえた。
布の貴重な世界だから小さな布をつなぎ合わせて大きな布を作ること自体は割とあるのだけれど、惜しげなく布を切ってサイズや形を揃えて良いというのはちょっと目新しいらしく、そこはびっくりされた。

……なるほど、パッチワークエプロンが高く売れたわけだね。こういうふうにデザイン性をもたせるのは目新しかったんだ。

とにかく、これで寝返りを打つたびタオルが片面によるようなことがなくなってずっと快適になった。
ただ、冬場、もっと寒くなるのは目に見えているから、布ものは増やしたい。入口の玄関のところにも、できれば厚手のカーテンを吊るしたいのだよね。冷たい空気が直接家に入って来ないように。
食料保存庫ラーダーには、ジャムやピクルスが入っているけれど、まだ三分の一ほど。やることはたくさんあるのだ!




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