異世界に召喚されたんですけど、スキルが「資源ごみ」だったので隠れて生きたいです

新田 安音(あらた あのん)

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第一部 綿毛のようにたどり着きました

ヴァル神官補

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想定外の事態が起きてハンナさんの独立宣言まで聞く羽目になったけれど、最終的に落とし所は決まった。

ハンナさんは、希望通り北の森ガラス工房に移動。これは職人ギルドが口添えをする。
なんと、親方はすでに職人を送ると返事を送ってしまったとかで、1週間後にはあちらに出立するのだそうだ。

「ロバートと顔を合わせたら気まずいだろうからと思って早くしたんだ。ハンナが行くってわかってたらもっと遅くしたのに……」
と肩を落とす親方さんは、やはり子煩悩な父親だった。悪気がなかったのは本当、わかる。
今後はハンナさんときちんと意思疎通を図ることをおすすめしたい。

ロバートさんは、今回のことで二年間はマスターピース提出資格を失う。たかだか二年間とはいえ、徒弟期間が長引くということでかなりの厳罰だ。周囲にしでかしたことが知られた上で、なおかつ同じ工房で働くことになるから肩身も狭いだろう。
本人の更生の過程は職人ギルドの神官補がモニターすることになっている。

神官様ってもとの世界のカウンセラーと公証人みたいな仕事も兼ねてるんだな……。結構大変な仕事だ。
考えてみれば役場っぽい役場、ないものね。ギルドは仕事関連のことしかやつてないし。
誕生や死亡の記録も含め神殿の役割は多岐にわたる。

神官補はあちら側の神官補を知っているようで「彼なら大丈夫かと」と、言ってくれた。
逆恨みをされても怖いのでそのあたりのアフターケアはよろしく頼みたい。

商人ギルドと夏雪草乙女会への賠償は職人ギルドの責任で行われる。
これには神前契約が交わされた。

スタンピードランチの冒険者たちは今日の午前中バグズブリッジをほとんど出立したので、今日の夜は夏雪草のみんなと打ち上げだ。
明日にはチャーリーに馬車に乗せてもらってみんなでヒルトップ村に帰る。

ただ、午前中はアナベルさんとギルド長と会うことになっている。

会合を終えてそんなことを考えていたら、神官補に手招きされた。

「マージョさん、このあと、予定は?」
このあとは市場へ様子を見に行って夕方は打上げだというと、神官補は頷き、
「それではついてきてください」
と、いった。

はい。「ついてきてください」なのね。「ついてきてくれますか?」みたいな質問じゃないのね……。


✵✵✵✵✵✵✵✵✵

「まず、神罰認定は通りました。ただ、準神罰認定です」
準神罰認定……?
「神罰である可能性が限りなく高いと本神殿が認めたということです」

はあ……。
何だかよくわからない。
いや、字面の意味は、わかるのよ。そうじゃなくて、もっと、なんて言うんだろ、政治的な意味がありそうだよね?
それは、つまり……?

「まず、ギルドがこの決定をもとに行動することが許可されます。また、夏雪草もそれなりに保護されることになるでしょう」

「でも?」
「は?」
「いや、その口調だと何かまずいこともあるかなと思ったんですが……」

そう言うと、神官補は、ちょっと困ったように口を開け、一度閉じた。

「いや、本神殿の思惑が読めないので……それが問題なのです」
神官補は苦虫を噛み潰したような顔で言った。

「本神殿はこの150年ほど奇跡や神罰、神託の認定に非常に消極的でした。何故今になって準とはいえ認定が降りたのか……明らかに神罰だったからとは言えるかもしれませんが、やはり気にかかります」
「なるほど……私の周囲に監視が置かれるかもしれないということですね?」
「可能性はゼロではありません」

くれぐれも、注意してください、と、神官補は言った。
「神域に関しても、あの後調べましたが……150年前神域を発生させた職人と聖人の名前は残っていません」
「え?」
「処刑されたようです」


ちょ! なにそれ怖い……。

「ということで、天幕の件は報告しません。誰かに聞かれても、勘違いだと、神域の成立条件の話はしたがそれ以上の話はしなかった、と、答えるように。天幕に神域が成立した可能性については無闇に口外しないように」


いや、偉そうに言ってるけど、それ、みんなの前で言っちゃったのは、あなたですからね?! むむむ~
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