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スタンピードランチの後

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夕方、神殿の4の鐘がなる頃、スタンピードランチはようやく終わった。


みんなで片付けをし、ベンさんが出してくれた馬車の荷台に乗ってギルドの宿舎まで一緒に帰る。
歩ける距離なのだけれど、さすがに朝も早かったし、身体が限界に近い。

「つっかれた~」

自然と声が出る。

「やりきりましたね……!」
「うん、やりきったね!」

少し早めに現地解散したけど、おこちゃま勢もとても頑張った。
大きな怪我や、やけどもなかった。
竈は壊されたし、薪も濡らされて大変だったけれど、今日請け負った分はやったよ……。やったよ、ママン……!

「あの鍋帽子と鍋、セットで12個も売れましたよ」

トーマスさんが報告してくれる。
一つのパーティに一つと考えて、大体昨日来たパーティの四分の一位がその場で購入を即決したと言うことだ。

「思ったより売れましたね。初日から」
マルタさんが驚いたように言う。

「実際に使っているのを目の前で見れたのが良かったのかもしれないですね」
「まあ、勝負は明日の市場ですけどね」

トーマスさんは真剣な表情を崩さない。そうそう。まだ30セット近く残っているのだから浮かれているわけにはいかない。

「やはり馬移動のパーティが興味を示していました」

あ、そうなんですね。
やっぱり、重さとか、荷物の量が問題だということだよなあ……。

疲れたのかアリスちゃんは荷台の上でこっくりこっくり船をこいでる。
この小さい体で本当に頑張った。

宿舎につくとギルド長のフェリックスさんが待っていた。
「大成功だったみたいだね」
「みんなが頑張ってくれました」
「余計なお世話かと思ったけど、夕食をうちの屋敷のものに作らせてね。持ってきてある。今日は街は多分外食どころじゃないからね」

スタンピードランチのあと、屋台の食べ物はものすごい勢いで売り切れたのだという。領主一行の食事と冒険者たちの食事でどこの酒場も食堂もいっぱいだろうとも。


「冷えても良さそうな物を見繕わせたからみんなで食べると良い……ただ、夏雪草のお嬢さんたちは暗くならないうちに家に帰ったほうが良いかもしれないな。良ければ送りの人を出すよ?」

「そうした方が良いと思うぜ。飯が食えなくてイライラしている野郎どもがたくさんいる通りを歩くのはオススメしない」

オーウェンさんが、横から口を挟む。
「空きっ腹に酒を流し込んだバカと付き合いたくはないだろう?」

うむ。それは嫌だね。

「わかりました。今日は送っていただきましょう?」

アナベルさんがみんなの顔を見る。みんな真剣な顔をして、頷く。

打ち上げは明日だね。

「あ、それから、あしたは朝九の鐘までにギルドに来てね」

え……?

「やだなあ、結ぶんでしょう。専属契約を」

フェリックスさんは、いかにも優男! といった感じで髪をかきあげた。

そうだ! 忘れかけてた!

「それから他にもいくつかやらなくてはならないことがあるから……職人ギルドと、ハンナガラス工房の親方さんにもご足労願うことになってる」

う……。気が重くなりそうだよ。


夕食は、生ハムと果物。ワインとカリカリに焼いたパンにチーズやパテだった。
何気にレベルが高い。
疲れすぎていて、お腹が空いているのかもわからないような状態だったけど、少しずつつまんでいるうちに、おなかが空いていることに気づく。

チャーリー、トーマスさんに、今日だけこちらに泊まることになった護衛のオーウェンさんたちと今日の反省会をしながら食事をつまむ。

オーウェンさんいわく、この手の護衛で宿が提供されて食事までというのは「大盤振る舞い」なのだそうだ。

「ま、これはあれだな、お嬢さんたちの名誉のためだな」

え……?

「いやあ、仕事関係だと言っても男と若い娘だけで宿舎にいるってなるとあれだから俺等を入れたんだと思うよ」

ああ、トーマスさんやチャーリーが……ってことか。

「最初に依頼を受けた時は、若い娘に無理を言ってると思ったけど……お嬢さん、ギルドに大事にされてんな」
「そうですね」

うん。それはそう思うよ。
それからみんなでまったりと話をした。

オーウェンさんはバグズブリッジに腰を落ち着けることになったと言ってた。
「腰を落ち着けることにした」じゃなくて「腰を落ち着けることになった」なんだね。
何があったかは聞かないよ。

でも当座はマーサさんの「仮縫いしない繕い物屋」の店番をするのだという。

やはりお針子ということで無体を働く人がそれなりにいるらしいから、オーウェンさんが店番になるといいだろう。マーサさん、信頼してたもんね。


それにしても。

ギルド長、お屋敷にコックさん雇ってるんだね。美味しすぎて、ちょっと涙が出た。
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