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カウントダウン 10日前まで

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スタンピードランチまで、あと19日。

トーマスさんが、少しずつ契約を取ってきてくれている。やはり冬期の備蓄を考えて売り渋る農家も多い。
メンストンさんの家からはウサギの肉が下処理をした形で届く。
塩をして半乾きになった状態。干し肉にするにはもう少し時間をおかないと……
でも、大体目処はつきそう。



スタンピードランチまで、あと16日。

ハンナさんが、ガラスペンをギルドに初回納品する。
各部署に数本ずつ。今のところ反応は「何これ?」的な。
神官補にはとても感謝された。そっけない口調で「あれはとても良いものですね」と。

私はマルタさんからガラスペン携帯用の小さな軽い木箱をもらった。
夏雪草の焼印がしてあって、私の名前が彫り込んである。

「たぶん、こういうのの需要が伸びると思うのよね……」

うん。私も思う。



スタンピードランチまで、あと14日。

アナベルさんが靴を持ってきてくれた。
……履きやすい!
私の足にしっくり馴染む。
外側に小さな夏雪草の焼印が押してある。

「ブランド」って言葉、語源的には「焼印」って意味なんだよね。
こうやってブランドってできていくんだな……。

「マスターピースにするのは、次の靴にしようと思っているんです」

バグズブリッジ初の女性向け靴工房が将来的なビジョンなのだそうだ。



スタンピードランチまで、あと12日。

ベンさんと燃料の買付の相談をしようとギルド本館の建物に向かったら、出てきた経理課の若い人に声をかけられる。

「あ、あの夏雪草の方ですか?」
「あ、はい……?どうして?」
「あ、靴で……」

そうか!靴にロゴが付いてるもんね。

「ガラスペン、すごく良いです。すごいです。羽ペンを削る時間がなくなってとても助かってます。ガラスの職人さんにお伝え下さい」
「はい!とても喜ぶと思います。伝えておきます!」

すごい、嬉しいな。
個人名でなく会の名前で知られているのもありがたい。
ついでにマルタさん製の木製の筆箱も見せて自慢しておいた。



スタンピードランチまで、あと10日。

マーサさんの縫い物がかなり目処が立ってきた。それからマーサさんの妹さんの声がけで子供が十人くらい集まった。当日は食事と法被はっぴと引き換えに、会場整理をしてくれる。

「子供は成長が早くてすぐ服が小さくなりますし、冬を見越して服がもらえるなら喜んで来る子が多いと思います」

たかが法被なんだけどね。

「正直、放って置くとこの冬が越せるかわからなかったりしますから、一日二日でもお腹いっぱい食べられるのは良いことです」

普段は市場のあたりをウロウロしていて、ちょっとしたお使いをしては駄賃を稼いだりしているのだそうだ。


ということで、マーサさんの縫い物仕事はどんどん増える。青い毛糸を使ってアリスちゃんがタスキを編んでいる。それは、使い終わったらマフラーになる予定。
法被の色はバラバラだからね。タスキで見分ける予定だ。
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