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スタンピードランチまであと3週間
しおりを挟むギルドに帰ってベンさんに「教えてくれればよかったのに~!!」と文句を言ったら「いや、でも、まさか知らないとは思わないじゃないですか?!」と強く言い返された。
「僕だって女性とそんな話、したくないですよ!!」
逆ギレ?!
マーサさんは、かなりビクビクしていたけれど、説明を聞いたら目が輝き始めた。
かさばる布を持って歩くよりもこちらに来て縫ったほうが良いだろうという話になり、これから毎日ギルドの宿舎に通うことになった。
マダムは鷹揚に「良いわよーぅ」と答えた。
「布ものは好きなんです」
「あ、アリスも好きだよ!」
二人はどうやら気が合うようで、マーサさんの隣でアリスちゃんも縫い物を始める。
うんうん。
仲が良い女の子はイイね!
二人がギルドで縫い物に励んでいる間に、私とベンさんは副ギルド長と一緒に町外れの広場へ出かける。
市場からは歩いて三十分くらい。街中へも歩いていける距離だ。
うまく誘導すれば食事が終わった人たちはまた街へ飲みに繰り出すだろう。
広場の横には川が流れている。街からは川下になるから、きれいな水か、といえば私の感覚ではちょっと違う。
洗濯や洗い物には大丈夫だろうけど、飲料水として使うのは嫌だ、という感じ。
この世界の人はあまり気にせず使っているようなんだけれど、私はちょっとダメなんだな。
ただ、水が近くにあるのは、火を使うときには心強い。火傷や火事、もしもの時に水がたっぷりあるってことだものね。
今日は竃の位置と、トイレの位置を決めるために来たのだ。
「トイレの位置はどちらかといえば川下側が良いです。水脈に影響があっても嫌ですし……」
「となると、このあたりが良いですかね」
副ギルド長と一緒に来た男性たちが広場の端の木にロープを巻きつける。これが目印になるのかな。
「あと、あの辺りにテントを張る人たちがいそうなのであの近辺にも……」
というよりも、トイレを作るとさほど遠くないところにテントを張りそうな気がする。近すぎても匂いが嫌だけどね。
「竃はこのあたりに……3箇所作っていただけるんでしたよね」
「そのくらいなら予算内でなんとか」
竈やトイレの予算は広場の整備費ということで私達の予算とは別口だ。ありがたい。
食料や準備の品を置いておく天幕を張る場所を決め、食事を提供する場所を決める。
「列を作ってもらって一方通行で提供しようと思います」
「なるほど……」
「そしてあちらに少し座りやすいエリアや、テントを張りやすいエリアを作ったら、自然と人はあちらに流れると思います」
「誘導する人員が必要ですね」
「はい。」
「その手配は?」
暗に「ギルドではやりませんよ」と言われている。
「アイデアはあるので数日中に目処をつけたいと思います」
「なるほど……期待していますよ」
副ギルド長の口調はそっけないけれど、考えなくてはならない場所を的確についてくるのでありがたい。
「それでは、そんな形でお願いします」
工事の人たちに頭を下げる。
「水ですが、共同井戸が町中よりも近くにありますから、これから通りの人に挨拶をしてきましょう」
「あるんですか!」
「例年はエールを振る舞うので使うことはありませんが、今年は必要ですよね?」
副ギルド長……。本当に良く気づく。
土地勘もあるし、ありがたいとしか言いようがない。
とりあえず、私は副ギルド長について行き、頭を下げたのだった。
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