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バグズブリッジ再び
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一週間後、私はずっしりと重い荷物を荷台に乗せて、リジーさんにバグズブリッジへ送ってもらっていた。
私だけだったらトーマスさんと二人で来ればよかったのだけれど、アリスちゃんがくることで、流石にパールには重量オーバーとなったのだった。それに、リジーさん宅から意外と大量の野菜やピクルスが届けられていて、それをギルドに持っていく必要もあった。
「人参は蒔いてから収穫まで3ヶ月ぐらいかかるからね。さっさと収穫して次のを蒔かないと冬に間に合わないでしょう」
収穫した人参はおがくずと一緒に木箱に詰めてある。でも今回はそれだけじゃなくて、もっと色々持ってきているのだ。布ものもたくさん。空のガラス瓶もたくさん。
というのも、アリスちゃんが一緒に来ることになると、二人部屋になる可能性があるなって思ったんだよね。だから、小麦粉や砂糖や塩、昆布茶など、使いそうなものはふらふらになりながら先週一週間出しに出しまくった。ついでに家の神棚にもたくさん供物をしてから家の鍵を閉めてきた。
バグズブリッジへの道のりではリジーさんとアリスちゃんとゆっくりと話をする機会が初めてあった。
今までもチャーリーとアリスちゃんとはよく話をしていたけれど、リジーさんと話す機会というのは意外となかったのだ。
羊の毛刈りの時も、作業が多くて話をするどころじゃなかったからね。
「それにしてもびっくりしたねえ、マージョ。市場にちょっと何か売りに行ったと思ったら結構な大ごとに巻き込まれて帰ってきたもんだね」
リジーさんは夏雪草乙女会に私が手助けを要請されたと思っている。
「いったいどういういきさつなのかチャーリーに聞いても全然要領を得なかったんだけど、なんか大変なことがあったんだって?」
「うーん。私は大変……ではなかったけど、ギルドは大変だったみたいです」
嘘はついてない嘘は。
大変だったのはハーマンさんと筆跡鑑定士さんと、それからギルドのお偉方だ。
「でも、女性の職人さんは一緒に話をしていたらとても楽しかったから……」
「ああ、同じくらいの年齢の友人がいるといいね。うちの村にはマージョと同じくらいの歳の女の子がいないからねえ」
リジーさんがいう通り、あまり同じくらいの年齢の村の女性はいない。歳が比較的近くてももう結婚して子供が生まれていたり。結婚年齢が低いからというのもあるんだろうけれど。
「私も結婚したのは18歳の時だったよね」
リジーさんは朗らかに言う。
「私はそれでよかったけど、今の若い子は何年かストウブリッジあたりでお勤めをしたいんだろうね」
「そうかもしれないですね」
「不作の時も安心だし……」
リジーさんとゲリーさんは才能もあって、少しずつ農地を広げてきた。小さな農家の中には不作の年に土地を売り払ってしまって家族全員を養えない家もあるのだ。そういう家の娘さんには、実は村にはあまり居場所がない。
今回リジーさんが少し強引にアリスちゃんを私に押し付けた背景にはそんな事情もあるのだ。
「まあ、子供には幸せになって欲しいからねえ」
本当に!
ギルドに着くと受付係のお兄さん(多分若手ホープ)がいた。
「マージョさん、こんにちは。こちらは?」
「村でお世話になっている農家のリジーさんと、リジーさんの娘さんのアリスちゃんです。アリスちゃんは、私の手伝いをしてくれるので一緒に滞在します」
「そうですか。初めまして、リジーさん、アリスちゃん。今回マージョさんのお手伝いをするベン・ホープスです。よろしくお願いします」
おお!受付さん名前あったんだ!
っていうか、名前くらいあるだろうけど。
「とりあえず滞在していただけるギルドの宿舎に行きましょう。前回は一泊でしたから提携している宿屋にお泊りいただきましたが、長期滞在のための建物もあるのですよ。それから荷物は、どうしましょうか?」
そうなんだよねー。
自分が滞在するのに必要な荷物と、当日の食材とその他の荷物を全部いっぺんに持ってきちゃってるんだよね……。
宿舎はギルド本館から歩いて5分ほどの場所にある一軒家だった。通いの管理人さんがいるけれど、今は泊まっている人がいないから、好きなように使って良いと言われる。
小さな庭と結構大きめの台所。
ちょっとした作業なんかもできそうなコモンルームがあった。
5つある寝室は鍵がかかっている。すごいな。豪華仕様だ。
さすがの商人ギルドと言う感じだ。
「今の時期はまだ、部屋がかなりあいていますから、二部屋隣り合った部屋にしましょうか。それでアリスちゃんと一部屋ずつでもいいですし、一部屋を荷物置きにしてもいいですし……」
「あ、ありがとうございます。助かります。実はあとからトーマスさんが、もっと色々持ってくるはずなんです」
「……そうですか」
ベンさんの顔がほんの少し引きつった。
表情に「恋敵出現!」とあるよ。
アナベルさん、罪つくりだなー。
私だけだったらトーマスさんと二人で来ればよかったのだけれど、アリスちゃんがくることで、流石にパールには重量オーバーとなったのだった。それに、リジーさん宅から意外と大量の野菜やピクルスが届けられていて、それをギルドに持っていく必要もあった。
「人参は蒔いてから収穫まで3ヶ月ぐらいかかるからね。さっさと収穫して次のを蒔かないと冬に間に合わないでしょう」
収穫した人参はおがくずと一緒に木箱に詰めてある。でも今回はそれだけじゃなくて、もっと色々持ってきているのだ。布ものもたくさん。空のガラス瓶もたくさん。
というのも、アリスちゃんが一緒に来ることになると、二人部屋になる可能性があるなって思ったんだよね。だから、小麦粉や砂糖や塩、昆布茶など、使いそうなものはふらふらになりながら先週一週間出しに出しまくった。ついでに家の神棚にもたくさん供物をしてから家の鍵を閉めてきた。
バグズブリッジへの道のりではリジーさんとアリスちゃんとゆっくりと話をする機会が初めてあった。
今までもチャーリーとアリスちゃんとはよく話をしていたけれど、リジーさんと話す機会というのは意外となかったのだ。
羊の毛刈りの時も、作業が多くて話をするどころじゃなかったからね。
「それにしてもびっくりしたねえ、マージョ。市場にちょっと何か売りに行ったと思ったら結構な大ごとに巻き込まれて帰ってきたもんだね」
リジーさんは夏雪草乙女会に私が手助けを要請されたと思っている。
「いったいどういういきさつなのかチャーリーに聞いても全然要領を得なかったんだけど、なんか大変なことがあったんだって?」
「うーん。私は大変……ではなかったけど、ギルドは大変だったみたいです」
嘘はついてない嘘は。
大変だったのはハーマンさんと筆跡鑑定士さんと、それからギルドのお偉方だ。
「でも、女性の職人さんは一緒に話をしていたらとても楽しかったから……」
「ああ、同じくらいの年齢の友人がいるといいね。うちの村にはマージョと同じくらいの歳の女の子がいないからねえ」
リジーさんがいう通り、あまり同じくらいの年齢の村の女性はいない。歳が比較的近くてももう結婚して子供が生まれていたり。結婚年齢が低いからというのもあるんだろうけれど。
「私も結婚したのは18歳の時だったよね」
リジーさんは朗らかに言う。
「私はそれでよかったけど、今の若い子は何年かストウブリッジあたりでお勤めをしたいんだろうね」
「そうかもしれないですね」
「不作の時も安心だし……」
リジーさんとゲリーさんは才能もあって、少しずつ農地を広げてきた。小さな農家の中には不作の年に土地を売り払ってしまって家族全員を養えない家もあるのだ。そういう家の娘さんには、実は村にはあまり居場所がない。
今回リジーさんが少し強引にアリスちゃんを私に押し付けた背景にはそんな事情もあるのだ。
「まあ、子供には幸せになって欲しいからねえ」
本当に!
ギルドに着くと受付係のお兄さん(多分若手ホープ)がいた。
「マージョさん、こんにちは。こちらは?」
「村でお世話になっている農家のリジーさんと、リジーさんの娘さんのアリスちゃんです。アリスちゃんは、私の手伝いをしてくれるので一緒に滞在します」
「そうですか。初めまして、リジーさん、アリスちゃん。今回マージョさんのお手伝いをするベン・ホープスです。よろしくお願いします」
おお!受付さん名前あったんだ!
っていうか、名前くらいあるだろうけど。
「とりあえず滞在していただけるギルドの宿舎に行きましょう。前回は一泊でしたから提携している宿屋にお泊りいただきましたが、長期滞在のための建物もあるのですよ。それから荷物は、どうしましょうか?」
そうなんだよねー。
自分が滞在するのに必要な荷物と、当日の食材とその他の荷物を全部いっぺんに持ってきちゃってるんだよね……。
宿舎はギルド本館から歩いて5分ほどの場所にある一軒家だった。通いの管理人さんがいるけれど、今は泊まっている人がいないから、好きなように使って良いと言われる。
小さな庭と結構大きめの台所。
ちょっとした作業なんかもできそうなコモンルームがあった。
5つある寝室は鍵がかかっている。すごいな。豪華仕様だ。
さすがの商人ギルドと言う感じだ。
「今の時期はまだ、部屋がかなりあいていますから、二部屋隣り合った部屋にしましょうか。それでアリスちゃんと一部屋ずつでもいいですし、一部屋を荷物置きにしてもいいですし……」
「あ、ありがとうございます。助かります。実はあとからトーマスさんが、もっと色々持ってくるはずなんです」
「……そうですか」
ベンさんの顔がほんの少し引きつった。
表情に「恋敵出現!」とあるよ。
アナベルさん、罪つくりだなー。
応援ありがとうございます!
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