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村の神殿

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「ですから、申し訳ありませんが、よろしくお願いします!」

翌日。

私は途方にくれていた。
というのも目前でチャーリーが神官様に頭を下げているからだ。

「マージョはバグズブリッジに行かなきゃいけないんです。で、おれじゃあまだまだ頼りないかもしれませんけど、代わりに神官様のお手伝いをさせてください。マージョみたいに間違えずに書類仕事ができるわけじゃないから報酬はいりません」

「報酬はいらないというのは本当ですか?」

神官様は柔らかく尋ねる。

「本当は、何か頼みたいことがあるんじゃありませんか」

柔らかく聞かれて、チャーリーはちょっと息を呑む。

「……あの、勉強でわからないことがあった時、質問してもいいですか?」


あー。そういうことか。
三週間、私がいない間、どうやって勉強を滞らせないか、考えていたんだね。そして週に一回、わからないことを神官様に聞きに来ようと思ったんだ。

「それはできないんですよ」

神官様はゆっくりと言う。

「あなたは、神官補佐の試験を受けますよね。その時に私が勉強を教えていたとなったら何を言われるかわからないでしょう」

「……そう……ですか」

チャーリーはうなだれる。

「ただ」

神官様はいたずらっぽい光を目に宿して言った。

「私は今、ちょっと困ったことになっていましてね。頼りにしていた村の補佐がしばらく仕事が出来ないらしいんです。もしも新しい補佐が失敗をしたら、それは指摘しなくてはなりませんね」

「!」

「それに、新しい補佐が特に信仰深い子どもで、たくさん神様について質問をしたら、ついつい話しすぎてしまうようなこともあるかもしれません」


あー。チャーリー、宗教知識と歴史の課目が弱いんだよ。

「あ、はい」

「年寄りですから昔話も好きでねえ……つきあってくれますか」

「ありがとうございます……!」

チャーリーは深々と頭を下げた。
ブラウン神官はニッコリと優しい笑顔を私に向ける。

「マージョさん、ヴァルをお願いしますね。真面目で融通が効かないところはありますが、あれで優しい子なんですよ」

神官補も、ブラウン神官にかかると「優しい子」扱いなんだな。

「ありがとうございます。チャーリーは、真面目に勉強して、計算も文章もずいぶん上手になってきていると思います」

嘘はついてない。
でも一緒に勉強したのはそう長いことではない。すぐに戦力になる強さではないのだ。
それがわかっているので、私は申し訳なくてちょっと声を揺らしてしまう。


「そうですね。マージョさんは、安心して行ってらっしゃい。年寄りには年寄りのできることがありますから」

神官様は落ち着いた声で私の背中を押してくれた。


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