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昆布茶

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取ってきたラズベリーを神棚に供える。
それからお茶を入れて、牛乳と蜂蜜を加える。一口飲んだら緊張が緩んで、じわり、と涙が出てきた。
この2日間は怒涛だったし、このあとも大変なことになりそうだ。

ふと思い立って、スキルを使用し、お茶をもう1杯入れる。
「アーロン、お茶が入ったよ~」

そっと囁くと「おまえは……」とため息をつきながらアーロンが現れた。

あきれられている。
あきれられてるのはわかるけど、私はアーロンが好きだし、一緒にお茶を飲みたい相手なんてアーロンくらいしかいない。
アナスタシアはそうそう簡単に出てこられないみたいだし。


そんなことを考えながら無言でお茶をのむと、アーロンも無言でお茶をすすった。


「なんだ……その……」
「ありがと、アーロン」

アーロンがいなかったら私は多分今からこんなに落ち着いていなかった。

「お前のアイデアは悪くない」

ムスッと言われて、アーロンには私が何をしようとしているのかわかっていることに気づく。

神さまなんだな~。

「なんだ、それは」

神性を疑っているわけではなく、なんというか、ありがたいというか……。

「……昆布茶を狙うと良いだろう」

しみじみしていると、ぼそっとアーロンが言う。

……!そうか、昆布茶!
コンソメキューブが何度やっても出てこず、かと言って昆布やしいたけを使ったら目立つなと思っていたのだ。
とにかく旨味のもとみたいなものがあるとスープ類の満足度は全然違うからね。

今考えているのは豆類がたっぷり入った、ポトフみたいな味のスープ。
豆類だったら乾燥したものが比較的安く手に入るし、腹持ちも良い。チリコンカンみたいにちょっとパンチをきかせてもいいけど、沢山の人に振る舞うことを考えると誰にも受け入れられる素直な味が良いと思う。

肉をたっぷり入れられれば、コンソメキューブなんかなくてもしっかり味が出るけど予算的にどの程度肉が買えるか心もとないしな……。
味の土台をどうするか悩んでいたのだ。昆布茶を塩代わりにいれるというのはいい考えだ。味に深みが出そうだし。


「賞味期限は一般に消費期限の八掛けだ。……日本では、ということだが」

ということは、賞味期限が一年の場合、期限が切れてからも2ヶ月以上安全に食べられるということね。
ちなみに昆布茶の賞味期限は……?

「大体5年くらいだな」

5年……! 余裕で使える!

スキルスクリーンをちゃちゃっと探したらあった。賞味期限が切れたばかりの天然素材昆布茶。
それから小麦粉。
布ものも少し。そしてとにかく大きめのガラス瓶。

神力の枯渇に気をつけて良いところで止める。

「あまり欲張るとロバ一頭では運びきれんぞ」

……あ! そうだった!
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