異世界に召喚されたんですけど、スキルが「資源ごみ」だったので隠れて生きたいです

新田 安音(あらた あのん)

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第一部 綿毛のようにたどり着きました

夏雪の乙女たち

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「おー名前! 名前ね!」
意外なことにジョーさんが、盛り上がった。

「オーロラの乙女たち、とか!」

「……乙女たちって柄かなぁ、あたしたち……」

マルタさんが口を挟む。うん、その気持ちはわかるよ!

「アナスタシア様も無視できないわ!」

アナベルさんが言う。

「アーロンが拗ねそうな……」

私が思わずそう言うと、
「呼び捨て?!」
と、ツッコミがみんなから入った。
あー。
そうだね、神様だった!
そういえば。

「エイヴリー様も無視できないよ」

三大神の最後の一柱、エイヴリーは秘められたものの神だ。男神でも女神でもなく、美しいものをこよなく愛し、滅多に人と関わることはない。私もあまりどんな神なのか掴めていない。

「……神様関係からはちょっと離れたいかな……」

神罰関係で本神殿とのあれこれがありそうな私としてはあまり宗教団体っぽい名前は避けたい。

「うーん。そしたら姉妹の会とか……」
「ジョー、あまりセンス無いよね。それじゃあ女子会とあんまり変わんない」

大人しそうに見えるのにハンナさんはジョーさん相手には厳しい。

「うっ……」

気が強そうなのに、ジョーさんはハンナさんには弱いんだよね。

「花の名前とかどうかなあ」

ここでソツなく話題を転換するアナベルさん。


「ブルーベルとか……あ、でもそれじゃあ、アナベルの工房と紛らわしいか……」

マルタさんが、このあたりの森に5月に咲き誇る花を挙げてすぐに撤回する。

「薔薇でしょ、薔薇!」

ジョーさんは、一輪で存在感がある花が好きなんだね。なんか、わかる。
牡丹とか芍薬も好きそう。

「木でも良いよね。樫の木とか……」

マルタさんは、やっぱり木が好きなのだ。木工職人だからね。


樫の木、なかなかいいんじゃない? 

「んー、わたし、案があるの」

ハンナさんが手を上げた。

「夏雪草とか、どうかなって……」

おー。

夏雪草!

メドウスイートとも呼ばれる野の花だ。夏に小さな白い花をつける。とても甘い匂いがするから、ストローハーブとして使われる。
ストローハーブっていうのは埃が立たないように土間の床に撒かれる野の花のことね。
ラベンダーなんかもそうだけど、土間に撒くと部屋中が甘いいい匂いになるんだよ。
虫よけにもなるの。


「あ、いいね」
「小さな花が集まって存在感のある大きな花になるのも女子会っぽいね」

夏の野を清楚に彩る白い花。
うん、良いかもね。

「夏雪会? 夏雪草?」
「夏雪草乙女会?」

アナベルさんは、どうしても「乙女」を職人女子会の名前に入れたいみたい。

「夏雪草乙女会、いいんじゃないでしょうか」

マルタさんも頷く。

大きな花を推していたジョーさんも頷いている。
「あれは、いいね。どこにでもある道端の花だけどキレイで香りも良くて私達みたいだ」
「小さい花でもあつまればっていうのが私達みたいでいいですよね」
「本当に私達みたい……土間に播かれて踏みにじられるし……ふふ……ふふふ……」

~!

ハンナさん!

自分で言って泣き出さないで~!




会の名前は夏雪草乙女会に決定!
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