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デザートはフルーツ
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ハンナさんは私のガラスペンを握りしめたまま動かなくなってしまった。
ものすごく真剣な目で、見つめている。
「きれい……」
でしょでしょう。
友達がくれた時青の柄に一目惚れしたのですよ。
家にあるもう一本は黒と金箔。これはその後自分で買ったもの。
「こんなきれいな色のガラスをつくる材料はないけど……」
親方や兄弟子は色々な色彩を使うこともあるけれど、それは珍しくてハンナさんのところには余り物しか来ないのだとか。
「茶色とか……」
うん。茶色は私も多分提供できる。ビール瓶の色だね。あと、緑もある。
「……この線もきれい……」
ハンナさんは私の言葉は聞いていないみたいで、じっとガラスペンを見ている。
「この子、こうなっちゃったら動かないから、気にしなくていいよ、マージョさん」
ジョーさんが苦笑してお酒を私のコップに注いでくれた。
素焼きの陶器だ。
ガラスはまだまだ高級品なんだね。
「ちょっと字を書いてみましょうか」
「!いいんですか?!」
すごく食い気味に答えるハンナさん。
もちろん!
カバンの中には手製のメモ帳がある。それから、インクの小瓶。それにもハンナさんは興味津々だった。
ガラスものは何でも気になるんだね。
木製のテーブルの表面はガタガタしているけれど、ペン先をインクに浸してメモ帳にそっと線を引く。
「均等にきれいな線が引けてる……」
「そのメモ帳も素敵ですね」
これはマルタさんとアナベルさん。厚紙を布で包んで表紙にしてあるのだ。
「見た目はキレイだけど本当は革とか軽い木の板だとかで表紙を作ったほうが良かったと思って……」
「……どうしてですか? こんなに可愛いのに……」
うん。可愛いんだけど汚れやすいし、このテーブルみたいに、下がガタガタしてるともろに響いて書きにくくなるしね。
「なるほど……!」
アナベルさんとマルタさんの声がハモった。
「こんなにたくさん線を引いても色がかすまない……。かなりの量のインクを吸い上げているってことですね」
ハンナさんは親指の爪を噛みながらブツブツ言っている。
「うん。この量はうちが作ってる金属のペン先より優れてるかも……」
ジョーさんも興味深げに眺めている。
「これに近い形のペン先を金属で作ることもできる……」
「それだったら軽くするためにペン軸は木製がいいですね」
あまり考えずに言うと、マルタさんとジョーさんの目がバチッと火花を散らした。
「あの、マージョさん、ガラスがあるって言ってましたよね。試作品を作って見たいんですけど」
ハンナさんが上目遣いで私を見る。
「あ、えっと、明日の朝宿に来ていただければ、売れ残りの瓶がいくつかあるので……」
「ぜひ!」
「金属製ペン先も作りたいな……作ってもいいですか?」
アイデアはマージョさんのものだから、と、ジョーさんは律儀に聞いてくれた。
うんうん。こういうの、いいな。
「作るのは良いんだけど、私が関わったものを売るのはもしかしたらちょっと待ったほうがいいかも……」
「それは?」
「専属契約の話が出ていて……」
「また?」
女子の反応はみんな悪い。
だよね~。ハーマンさんの件があったし。
でもフェリックスさんは信頼できそうな気がするんだよ。
そう言うとどよめきが走った。
「えっ、ウォーフ商会との専属契約?!」
「それってすごいことですよ?!」
「おお?」
あ、あれ? そうなの?
でも、私は誓いがあるから、簡単に専属契約は結べないんだよね。
どうせだったらみんな一緒で職人女子会契約とかにしてもいいかなって思ったんだけど……。そうしたら、専属契約をしてるのは会で、私は所属してるだけってことになるから、神託云々考えなくても良さそうだし……。
「えっ」
「えっ」
「ええっ……!」
驚きの声が上がったあと、「マージョさん!」
「ついていきますっ!」
……あれ?
なんか懐かれてる?
ものすごく真剣な目で、見つめている。
「きれい……」
でしょでしょう。
友達がくれた時青の柄に一目惚れしたのですよ。
家にあるもう一本は黒と金箔。これはその後自分で買ったもの。
「こんなきれいな色のガラスをつくる材料はないけど……」
親方や兄弟子は色々な色彩を使うこともあるけれど、それは珍しくてハンナさんのところには余り物しか来ないのだとか。
「茶色とか……」
うん。茶色は私も多分提供できる。ビール瓶の色だね。あと、緑もある。
「……この線もきれい……」
ハンナさんは私の言葉は聞いていないみたいで、じっとガラスペンを見ている。
「この子、こうなっちゃったら動かないから、気にしなくていいよ、マージョさん」
ジョーさんが苦笑してお酒を私のコップに注いでくれた。
素焼きの陶器だ。
ガラスはまだまだ高級品なんだね。
「ちょっと字を書いてみましょうか」
「!いいんですか?!」
すごく食い気味に答えるハンナさん。
もちろん!
カバンの中には手製のメモ帳がある。それから、インクの小瓶。それにもハンナさんは興味津々だった。
ガラスものは何でも気になるんだね。
木製のテーブルの表面はガタガタしているけれど、ペン先をインクに浸してメモ帳にそっと線を引く。
「均等にきれいな線が引けてる……」
「そのメモ帳も素敵ですね」
これはマルタさんとアナベルさん。厚紙を布で包んで表紙にしてあるのだ。
「見た目はキレイだけど本当は革とか軽い木の板だとかで表紙を作ったほうが良かったと思って……」
「……どうしてですか? こんなに可愛いのに……」
うん。可愛いんだけど汚れやすいし、このテーブルみたいに、下がガタガタしてるともろに響いて書きにくくなるしね。
「なるほど……!」
アナベルさんとマルタさんの声がハモった。
「こんなにたくさん線を引いても色がかすまない……。かなりの量のインクを吸い上げているってことですね」
ハンナさんは親指の爪を噛みながらブツブツ言っている。
「うん。この量はうちが作ってる金属のペン先より優れてるかも……」
ジョーさんも興味深げに眺めている。
「これに近い形のペン先を金属で作ることもできる……」
「それだったら軽くするためにペン軸は木製がいいですね」
あまり考えずに言うと、マルタさんとジョーさんの目がバチッと火花を散らした。
「あの、マージョさん、ガラスがあるって言ってましたよね。試作品を作って見たいんですけど」
ハンナさんが上目遣いで私を見る。
「あ、えっと、明日の朝宿に来ていただければ、売れ残りの瓶がいくつかあるので……」
「ぜひ!」
「金属製ペン先も作りたいな……作ってもいいですか?」
アイデアはマージョさんのものだから、と、ジョーさんは律儀に聞いてくれた。
うんうん。こういうの、いいな。
「作るのは良いんだけど、私が関わったものを売るのはもしかしたらちょっと待ったほうがいいかも……」
「それは?」
「専属契約の話が出ていて……」
「また?」
女子の反応はみんな悪い。
だよね~。ハーマンさんの件があったし。
でもフェリックスさんは信頼できそうな気がするんだよ。
そう言うとどよめきが走った。
「えっ、ウォーフ商会との専属契約?!」
「それってすごいことですよ?!」
「おお?」
あ、あれ? そうなの?
でも、私は誓いがあるから、簡単に専属契約は結べないんだよね。
どうせだったらみんな一緒で職人女子会契約とかにしてもいいかなって思ったんだけど……。そうしたら、専属契約をしてるのは会で、私は所属してるだけってことになるから、神託云々考えなくても良さそうだし……。
「えっ」
「えっ」
「ええっ……!」
驚きの声が上がったあと、「マージョさん!」
「ついていきますっ!」
……あれ?
なんか懐かれてる?
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