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第一部 綿毛のようにたどり着きました

宿と女子会

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神官補に散々念を押されたのは今のところは「異端尋問にかけなくても済む言い訳ができた」だけであって、私が目立ってしまったことは事実だと言うことだった。神官補としては報告書を上げざるを得ないし、となると本神殿側が調べに来ることは避けられないだろう……だって。

ちょっと困る。

つまり、急遽この世界の神学的なものを頭に入れないとまずいんじゃないかということだ。

「まあ、後ろ盾があったほうがいいとは思います」

後ろ盾、アナスタシアなんだけどな……

「神罰が下ったのなんてほんとにずっと前のことですし、神託に至っては偽神託で処刑が出た以外はここ百年出てません」


偽神託! 処刑!

あー。それも疑われたのか。

「そうですね、軽々しく神託が聞けるなんて言われたらどうしようと思いました」


……。

…………。

聞けるんだけどな。

つまり、アーロンとしょっちゅう話してるなんてことは隠し通さないと危ないということだよね。

これは本気でフェリックスさんに保護してもらって、情報も色々隠してもらうのが吉なのかも。後でアーロンに相談しよう。


神官補室を出るとギルドの受付のお兄さんが待っていた。

「マージョさん、お客様がいます」

え? だれ?
「先程市場に一緒にいらした女性の方ですね」

あー。アナベルさん!

「マージョさん! 大丈夫でしたか?!」
アナベルさんは心配半分、興味が半分の模様。

「あ、大丈夫~」

ん。ハーマンさんを追い返したら市場で今度は私が絡まれてたから心配してくれたんだね。ありがとう。

今日出会ったばかりなのに、なんか、もう随分前から知ってるような気がするよ!

これもハーマンさんのおかげ? ……と言っていいのか、微妙だなぁ。

「はい。あと、今晩はこちらに泊まられると伺ったので……よろしかったら、女子会に来ませんか?」

をを?!

女子会?!

なんてキラキラしい名前でしょう。
前世でだってそんなに行ったことない!

うわぁ!

「職人女子達が集まるんです。マージョさんも来てくれたら楽しいかなってみんな……」


仕事が速いよ!

アナベルさん、大人しそうに見えるのにね。行動力あるよね。

「マージョさんは、これから宿にお送りする予定なんですが……」

ギルドの人がちょっと不安げに言う。

「それでは神殿の鐘が7つを鳴らしたら宿まで迎えに行きます。どの宿ですか?」

アナベルさんは勝手知ったる様子でギルドの人と話をつけている。
ギルドの人は話をしながら私のところに小さなバスケットを持ってきた。これ、私がランチを入れていたバスケットだね?

開けると中には、ペンやノート、コーディアルの瓶など。
私が持ってきたもので売り物でないものが入っていた。

売り物は全部売れたのかな。
良かった。

私は店番どころじゃなかったから、エレンさんにおんぶにだっこだったな……。

こういうあたりの面倒見がすごくいい人だから、お金絡みはちょっとややこしい。

ランチのお弁当は消えていた。
みんなで食べてくれたのかな。無駄になると悲しいからチャーリー達が食べてくれたなら万々歳だ。
そんなことを考えていたら、底の方にチャーリーからの手紙が入ってた。

「マージョを置いてくのは心配だけど、エレンさんと、トーマスさんと先に帰る。3日経ってもヒルトップに帰って来なかったらまた迎えに行くよ。ペンや色々持って帰るか考えたけど入れておいたよ。ランチありがとう。とても美味しかった。 追伸。エレンさんが後でお金をたくさん払うって言ってたからお楽しみに」


お楽しみに……。

うーむ。色々と邪推できるな。
わはは。

「女子会はどのレストランで?」
「山吹亭を考えていて……」
「あー。あそこは値段の割にいいですよね」

考え込む私を尻目に受付さんとアナベルさんはなんか盛り上がってる。というか、彼の方がアナベルさんに興味がある……っていうか思いっきりアピールしているみたいだけど……アナベルさんわかっていて、サラッとあしらってますね。

思わず生暖かい目になってしまうよ! 私は大人だからね!


ニヨニヨ見ていたら気づかれたらしい。
ちょっと気まずそうな顔をしたギルドのお兄さんに連れられて宿に行くことになった。

割ときれいな部屋だった。
お風呂もあったよ!
ちょっと大きめのタライだけどね!でも、全身入る。さっそくお湯を入れてもらったよ! わーい!!

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