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神力枯渇
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その晩は調子に乗ってアーロンが止めるのも聞かずにどんどん色々なものを漁っていたら、急に意識が遠くなった。
をい……!
と、やたら焦ったアーロンの声がしたような気がしたが、まずい、と思った時点で手近にあったバスタオルの束をつかんだ私は偉かった!
えっへん!
おかげで特に大きな怪我をすることもなく、気を失っただけで済んだ。
だけって言うのも変だけれど。
でもちょっと左肩を打った。本当に気をつけなくちゃいけない。
気がついたのは、どれくらいたってからだろう。5分くらいだったのかもしれないし、数時間たっていたのかもしれない。
自分の身体と周囲を確認する。身体が冷え切っている。
夏だとはいえ夜は寒いんだよ、この地域。
アーロンはいなかったけれど、なんとなくどこかで見ているような気がした。
そんな気配があっただけで、気のせいなのかもしれないけれどね。
立ち上がっても足がふらつく様子はない。
良かった、と胸をなでおろして階段を降りてベッドに入った。
生命に関わることもある……ってアーロンが言ってたな、と思い出したのは翌日の朝。
神力の使い過ぎの後遺症は二日酔いに似ていた。
ムカムカするし、頭も痛い。
朝になっても喉がヒリヒリする。
起きなくちゃいけないんだけど……
と、ベッドの中で丸まっていたらドンドンとドアを叩く音がした。
「マージョ、大丈夫?」
朝なのに窓の木戸が閉まったままだったからチャーリーとアリスちゃんが心配してくれたのだ。
「マージョ、顔色が悪いよ」
うん。多分そうだろうね。自覚はある。
「ちょっと調子が悪くて……」
でも、すぐに元気になるから心配しなくていいんだよ、と笑って見せたけど、二人は納得しなかった。
「アリス、着替えるのを手伝ってやれ。おれは火を熾す」
チャーリーが、テキパキと指示を出した。
「豚の面倒は見たから心配するな。タマゴがあったから取ってきた。何か食べるといい。食べたいものはあるか?」
ああ。子供に心配させちゃっている……。大人失格だ。
でも、食べたいものはある。気づいたら少しお腹が空いていた。
「木苺が庭の隅になってると思うの」
「わかった。取ってくる。朝しぼった牛乳を持ってきたから、沸かして飲むといい」
「アリスがやってあげる!」
アリスちゃんが、立候補してくれた。嬉しい。
本当に二人の優しさが胸に染みて涙が出そうだ。
体調が悪い時は気持ちも弱る。
でもアリスちゃんが色々おしゃべりをしながら私の周囲を歩きまわってくれたおかげで、弱まっていた私の心はどんどん回復していく。
「面白い服だねえ」
アリスちゃんは私のパジャマが気になるらしい。
「あったかいよ。アリスちゃんも欲しい?」
「自分で作ってみたいけど……」
布がもらえるか気になるんだね。
「後で縫い物を手伝ってくれたらお礼にあげるよ」
そう言うと、アリスちゃんの目が輝いた。
物々交換は村の生活の基本だ。私としては燈芯草よりも、縫い物の手伝いの方が嬉しい。
獣脂は臭いから多分あまり使わないと思う、というか、使わなくて済むようせっせとスキルを使用するつもりだ
それに作りたいものはまだ山ほどあるからね。材料の獲得は大切。
着替えて、温かいミルクをたっぷり入れたお茶を飲んだら、ずいぶん気分が上向いた。
チャーリーが火を熾してくれたおかげで朝から熱々の目玉焼きトーストを食べたよ。
二人は朝ごはんを食べてきた、と言ったけれど、トーストとジャムをテーブルに並べたら目が泳いでいたからそっと提供した。
今朝はお世話になったからお礼だよ。
「毛刈りで疲れが出たのかな」
アリスちゃんはまだ気をもんでくれている。
うーん、違うんだけどね。でも頷いておく。
「毛束持ってきたぞ」
チャーリーはちょっと誇らしげだ。
「おれが刈ったやつだ」
おお! 記念すべき! チャーリーの初毛刈り!
今日は羊毛を少し処理しますよ。
昨日、「資源ごみ」の定義を広げたこともあって、大きめの鍋をいくつか見つけたのだ。底が焦げてるっぽくて見た目は汚いけど、羊毛の処理には大丈夫でしょう。
「天気もいいしね」
「風も家の戸口向きじゃないしな」
チャーリーとアリスちゃんはふむふむ、と頷いている。
あれ? 私と気にしているところが違う?
をい……!
と、やたら焦ったアーロンの声がしたような気がしたが、まずい、と思った時点で手近にあったバスタオルの束をつかんだ私は偉かった!
えっへん!
おかげで特に大きな怪我をすることもなく、気を失っただけで済んだ。
だけって言うのも変だけれど。
でもちょっと左肩を打った。本当に気をつけなくちゃいけない。
気がついたのは、どれくらいたってからだろう。5分くらいだったのかもしれないし、数時間たっていたのかもしれない。
自分の身体と周囲を確認する。身体が冷え切っている。
夏だとはいえ夜は寒いんだよ、この地域。
アーロンはいなかったけれど、なんとなくどこかで見ているような気がした。
そんな気配があっただけで、気のせいなのかもしれないけれどね。
立ち上がっても足がふらつく様子はない。
良かった、と胸をなでおろして階段を降りてベッドに入った。
生命に関わることもある……ってアーロンが言ってたな、と思い出したのは翌日の朝。
神力の使い過ぎの後遺症は二日酔いに似ていた。
ムカムカするし、頭も痛い。
朝になっても喉がヒリヒリする。
起きなくちゃいけないんだけど……
と、ベッドの中で丸まっていたらドンドンとドアを叩く音がした。
「マージョ、大丈夫?」
朝なのに窓の木戸が閉まったままだったからチャーリーとアリスちゃんが心配してくれたのだ。
「マージョ、顔色が悪いよ」
うん。多分そうだろうね。自覚はある。
「ちょっと調子が悪くて……」
でも、すぐに元気になるから心配しなくていいんだよ、と笑って見せたけど、二人は納得しなかった。
「アリス、着替えるのを手伝ってやれ。おれは火を熾す」
チャーリーが、テキパキと指示を出した。
「豚の面倒は見たから心配するな。タマゴがあったから取ってきた。何か食べるといい。食べたいものはあるか?」
ああ。子供に心配させちゃっている……。大人失格だ。
でも、食べたいものはある。気づいたら少しお腹が空いていた。
「木苺が庭の隅になってると思うの」
「わかった。取ってくる。朝しぼった牛乳を持ってきたから、沸かして飲むといい」
「アリスがやってあげる!」
アリスちゃんが、立候補してくれた。嬉しい。
本当に二人の優しさが胸に染みて涙が出そうだ。
体調が悪い時は気持ちも弱る。
でもアリスちゃんが色々おしゃべりをしながら私の周囲を歩きまわってくれたおかげで、弱まっていた私の心はどんどん回復していく。
「面白い服だねえ」
アリスちゃんは私のパジャマが気になるらしい。
「あったかいよ。アリスちゃんも欲しい?」
「自分で作ってみたいけど……」
布がもらえるか気になるんだね。
「後で縫い物を手伝ってくれたらお礼にあげるよ」
そう言うと、アリスちゃんの目が輝いた。
物々交換は村の生活の基本だ。私としては燈芯草よりも、縫い物の手伝いの方が嬉しい。
獣脂は臭いから多分あまり使わないと思う、というか、使わなくて済むようせっせとスキルを使用するつもりだ
それに作りたいものはまだ山ほどあるからね。材料の獲得は大切。
着替えて、温かいミルクをたっぷり入れたお茶を飲んだら、ずいぶん気分が上向いた。
チャーリーが火を熾してくれたおかげで朝から熱々の目玉焼きトーストを食べたよ。
二人は朝ごはんを食べてきた、と言ったけれど、トーストとジャムをテーブルに並べたら目が泳いでいたからそっと提供した。
今朝はお世話になったからお礼だよ。
「毛刈りで疲れが出たのかな」
アリスちゃんはまだ気をもんでくれている。
うーん、違うんだけどね。でも頷いておく。
「毛束持ってきたぞ」
チャーリーはちょっと誇らしげだ。
「おれが刈ったやつだ」
おお! 記念すべき! チャーリーの初毛刈り!
今日は羊毛を少し処理しますよ。
昨日、「資源ごみ」の定義を広げたこともあって、大きめの鍋をいくつか見つけたのだ。底が焦げてるっぽくて見た目は汚いけど、羊毛の処理には大丈夫でしょう。
「天気もいいしね」
「風も家の戸口向きじゃないしな」
チャーリーとアリスちゃんはふむふむ、と頷いている。
あれ? 私と気にしているところが違う?
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