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第一部 綿毛のようにたどり着きました
大きな鍋がほしいんです
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「羊毛の下処理用の鍋? それなりのお値段がしちゃうわよ」
エレンさんは言った。
「そこそこ大きくなくちゃいけないし……」
……ですよね~。
かと言ってこれはあまり簡単にスキルで見つけられそうな気もしないんだよな……。一般家庭が使う鍋ってそんなに大きくないし。
業務用資源ごみスキルを獲得すればレストランとかから入手できるかな。
「母の関係に聞いてみます」
と、ぼかすと、それがいいわよー、と頷かれた。
ストウブリッジの川下の方に、羊毛やラノリンの処理をしている一画があって、自分の家で使うもの以外はそこに売ることが多いのだそうだ。
皮なめしなんかもそうだけれど、動物の皮や脂は匂いがきついから町の川下の方にまとまるのだとか。
だから、家でそんなに大きな量いっぺんに羊毛の処理をすることはあまりないのだという。
「頼んじゃうのも手よ? マージョのお母さんは自分でやってたけど……」
量はそんなに多くなかったんだろうな、というのが、なんとなくわかる言葉の選び方だね。
「それより、はい」
手渡されたお金を見てびっくりする。それなりの額だ。
「エプロンが売れたのよ」
あー。せっせと縫ったパッチワークエプロン!
とても評判が良かったし、少し値段を上げてもいいんじゃないか、とエレンさんは言う。
このあたり、難しいよね。
今回はメンストンさんの家で買えるくらいの値段を想定したのだ。
農家だったら基本的にはあまりお金はないし、布は自分で作るから、エプロンを買うという感覚はあまりない。でも、とても可愛らしかったら、特別にお金を出すこともないかな……と。
逆に金持ちになるとエプロンなんか身につけることも少ないだろうし。
「それはそうだけど、バグズブリッジにはそれなりに茶屋やパブがあるでしょ。買って行ったのはそういうところで働いている人が多かったわね」
あ!そうか。
村は物々交換ベースだからすっかり忘れていたけれど町の人は金銭ベースだものね。
一度行ってみないといけないな。
「靴も買わなくちゃいけないんじゃないの。次のバグズブリッジの市には行く?」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
ということで、家に帰ってすぐにアーロンを呼び出す。
「だから、そう気軽に呼び出すなと……!」
文句を言っているものの、アーロン、今はしっかり存在感がある。
初めてあったときとは大違いだ。
「まあ、あの百姓の子らがせっせと拝んでいるからな」
チャーリーとアリスちゃんが、神棚に何だか供えているらしい。
こんなに早く存在感に影響が出るんだ……。すごいな、アリスちゃん効果。
「そんなことはないぞ。まあ、この村限定みたいなものだ」
アーロンが小さく乾いた笑い声を立てた。
そっか。
神様にも色々あるんだね。
でも、アナスタシアも、アーロンも、私にとっては確かに存在する相手だし、日本のことを知っている唯一の相手だから、大事なんだ。
彼らが元気になるのは嬉しい。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、アーロンはふん、と鼻を鳴らした。
「事業系資源ごみをアンロックするには少しポイントが足りないな」
うーむ。
「まあ、一週間ほど連日スキルを使えばすぐに貯まるだろうが」
体力が保たないだろう、と言おうとしてたみたいだけど、いや! やりますよ!
「ほ、本気か……?!」
え、だって事業系資源ごみってことは同じ物が大量に手に入る可能性が高いってことですよね?
家庭の資源ごみで同じ瓶が何個もっていうのは珍しいけど、例えばレストランだったら同じメーカーの同じ瓶が大量にゴミとして出る可能性が高い。
規格化されてるってすごくありがたいよね。
「まあ、それはそうだが……」
それから。
私、もう一つ気にかかっていたことがあるのだ。
「なんだ?」
それは「資源ごみ」の定義でしてよ、おにいさま。
エレンさんは言った。
「そこそこ大きくなくちゃいけないし……」
……ですよね~。
かと言ってこれはあまり簡単にスキルで見つけられそうな気もしないんだよな……。一般家庭が使う鍋ってそんなに大きくないし。
業務用資源ごみスキルを獲得すればレストランとかから入手できるかな。
「母の関係に聞いてみます」
と、ぼかすと、それがいいわよー、と頷かれた。
ストウブリッジの川下の方に、羊毛やラノリンの処理をしている一画があって、自分の家で使うもの以外はそこに売ることが多いのだそうだ。
皮なめしなんかもそうだけれど、動物の皮や脂は匂いがきついから町の川下の方にまとまるのだとか。
だから、家でそんなに大きな量いっぺんに羊毛の処理をすることはあまりないのだという。
「頼んじゃうのも手よ? マージョのお母さんは自分でやってたけど……」
量はそんなに多くなかったんだろうな、というのが、なんとなくわかる言葉の選び方だね。
「それより、はい」
手渡されたお金を見てびっくりする。それなりの額だ。
「エプロンが売れたのよ」
あー。せっせと縫ったパッチワークエプロン!
とても評判が良かったし、少し値段を上げてもいいんじゃないか、とエレンさんは言う。
このあたり、難しいよね。
今回はメンストンさんの家で買えるくらいの値段を想定したのだ。
農家だったら基本的にはあまりお金はないし、布は自分で作るから、エプロンを買うという感覚はあまりない。でも、とても可愛らしかったら、特別にお金を出すこともないかな……と。
逆に金持ちになるとエプロンなんか身につけることも少ないだろうし。
「それはそうだけど、バグズブリッジにはそれなりに茶屋やパブがあるでしょ。買って行ったのはそういうところで働いている人が多かったわね」
あ!そうか。
村は物々交換ベースだからすっかり忘れていたけれど町の人は金銭ベースだものね。
一度行ってみないといけないな。
「靴も買わなくちゃいけないんじゃないの。次のバグズブリッジの市には行く?」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
ということで、家に帰ってすぐにアーロンを呼び出す。
「だから、そう気軽に呼び出すなと……!」
文句を言っているものの、アーロン、今はしっかり存在感がある。
初めてあったときとは大違いだ。
「まあ、あの百姓の子らがせっせと拝んでいるからな」
チャーリーとアリスちゃんが、神棚に何だか供えているらしい。
こんなに早く存在感に影響が出るんだ……。すごいな、アリスちゃん効果。
「そんなことはないぞ。まあ、この村限定みたいなものだ」
アーロンが小さく乾いた笑い声を立てた。
そっか。
神様にも色々あるんだね。
でも、アナスタシアも、アーロンも、私にとっては確かに存在する相手だし、日本のことを知っている唯一の相手だから、大事なんだ。
彼らが元気になるのは嬉しい。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、アーロンはふん、と鼻を鳴らした。
「事業系資源ごみをアンロックするには少しポイントが足りないな」
うーむ。
「まあ、一週間ほど連日スキルを使えばすぐに貯まるだろうが」
体力が保たないだろう、と言おうとしてたみたいだけど、いや! やりますよ!
「ほ、本気か……?!」
え、だって事業系資源ごみってことは同じ物が大量に手に入る可能性が高いってことですよね?
家庭の資源ごみで同じ瓶が何個もっていうのは珍しいけど、例えばレストランだったら同じメーカーの同じ瓶が大量にゴミとして出る可能性が高い。
規格化されてるってすごくありがたいよね。
「まあ、それはそうだが……」
それから。
私、もう一つ気にかかっていたことがあるのだ。
「なんだ?」
それは「資源ごみ」の定義でしてよ、おにいさま。
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