異世界に召喚されたんですけど、スキルが「資源ごみ」だったので隠れて生きたいです

新田 安音(あらた あのん)

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第一部 綿毛のようにたどり着きました

薬草収穫

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次の日やってきたチャーリーとアリスちゃんはキレイに瓶詰めにされたジャムに大喜びした。

メンストンさんの家で焼いたパンを持ってきてくれたので、トーストにしてジャムを載せてあげる。
「美味しい!」
うん、本当だね。
私も美味しいと思う!


宿題もよくできていた。二人とも頭が良いよね。
メンストンさんの家の人たちは、ポンカンの種にも興味津々だったし好奇心が強いよね。ちゃっかりしてるけど。

しかしですよ!
今日はチャーリーに聞きたいことがあったのよ。

「ねえ、羊の毛刈りって、もうすぐ?」
「来週からだよ」

おお!
これですよ!これを待っていたの。

「確か、羊毛を分けてもらってたよね」
「おう」
「それからラノリンも」


羊毛をきれいにしているときに、油が出てくる。
ラノリンだ。
そのままだと羊臭いけれど、革靴の手入れからありとあらゆるものに重宝される。
きちんと精製すれば殺菌効果もあって軟膏やハンドクリームの良いベースになる。

マージョのお母さんはこれで匂いの比較的薄いハンドクリームや軟膏をたくさん作って村の人にありがたがられていた。


そう。これをガラス瓶に入れたら良い売り物になるんじゃないかと思っているのですよ!

私が知っている精製法はオリーブオイルを使うものだから、そんなに大量には作れない。でも、多分、マージョの母親がやっていたよりも匂いを取り除けるはずだ。
手間と材料がかかるけど。
まあ、でも自分用にも保湿剤はほしいし、売れるものを考えるのは重大かつ緊急度の高い課題ですよ。

やりませう!
ラノリン原料のクリーム開発!

「えーっと、来週、手伝いに行ってもいいかな?」

去年まで、マージョの家は手伝いに行ってはいなかった。まあ、実際問題手伝えることはそう多くはないんだ。

「ごはんの炊き出しとかそんなことしか手伝えないけど……」

羊の毛刈りは村中の男性が総出で行う。
行った先の女衆が、昼食とかおやつとか、振る舞うしきたりだ。
相当忙しいだろうし、スープを鍋いっぱい持っていったら助かるだろう。おやつも何か持って行ってもいいよね。それなら、邪魔にならずに役に立つかな。

「それでもよかったら、ってお母さんに聞いてくれる?」

頼むと二人は「わかった」と頷いてくれた。

勉強の後、少しだけ畑仕事。今、私はミントやカモマイルを収穫しては干すことに精を出している。

両方とも精油も作ろうと頑張っているところ。
ちょうどカモマイルは旬で、摘んでも摘んでも花が咲いてくる。ハーブの生命力ってすごい。

摘みたてのミントやカモマイルでハーブティーを入れたら、ものすごく爽やかな味で、嬉しくなってアナスタシアにお供えしてしまった。カップは、おなじみのワンカップ大関だよ!
ついでだからアーロンの分も入れておいた。寂しい夜に話し相手になってくれたしね。

私は人の恩を忘れない女なのだ。……人じゃないけど、アーロン。神だけど。


「何してるの?」

興味深そうにアリスちゃんが聞く。

「んー。神様にお供え~」
「え~」

あれ。メンストンさんの家はやらないのかな。

「神様は金持ちしか守らないって父さんが言ってた」

あー。この村、神殿も小さいし、神官様も巡回してくるだけだしね。そんなに悪い人だとは思わなかったけど……。



「なに、その神棚に物をやると、なんかいいことあるのか?」

チャーリーが尋ねる。

答えに困る。私は実際アナスタシアともアーロンとも会ってるから、いいこと、っていうか、家族みたいな感じなんだけど……。これは特殊事情だ。

「うーん、嬉しいことがあった時にアナスタシア様にお話して分けるともっと嬉しいことがおきるんだよね……」

「死んだひいばあちゃんは、お供えしていたって言ってたな、そういえば」

そうか。
この村の神殿との関係って昔からこうじゃなかったんだ。アナスタシアが幼女だったのと関係があるのかな。

ざくっと「知識」を探ったけれど、説明はなかった。うーむ。

「マージョがやるんだったらアリスもやりたい!」

アリスちゃんはきれいなものをお供えするという考えが気に入ったみたい。カモミールの花を供えていた。

「うちにも神棚はあるだろう。うちの神棚に供えろよ……」

チャーリーがぼそっと言った。
あ、神棚、あるんだね!
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