21 / 113
市場に行きますよ
しおりを挟む
「ストウブリッジの市場に行きたくない?」
と、エレンさんが聞いてくれたので、こくこく!と頷いた。
最初は色々渡して売って来てもらっていて、それで十分だと思ってたんだけど、気が変わった!
私はもうちょっとこの世界の事を知らないとダメだよ。
「知識」に頼るんじゃなくて、実際にあちらこちらに行って吸収する必要があるよ。
売り物の相談をしに行って「母が残した古いガラスの製品を売りたい」と言ったら「それじゃあ市場に行きましょう。うちの店の端っこに並べたらいいわよ」ということになったのだ。
市場は小さめの町のストウブリッジと、ここからはちょっと遠いバグズブリッジで隔週ごとに開かれる。
全く逆方向だけれど、ホワイトさんたちはどちらも定期的に行っているみたい。
バグズブリッジには船着き場もあって遠くからも色々届くから大きな町なのはバグズブリッジの方。でも、物もお高め。買うのも売るのも。
ガラス瓶だったら競合が少ないからストウブリッジの方がいいんじゃないかしらね、というエレンさんの説明にしたがって今回はストウブリッジに行くよ。
前日のエレンさんは村の農家の人たちが持ってきたバターとかカゴとか、細々したものをまとめて記録するのと、注文を聞いてまとめるので大変そうだったので、私は家に帰って屋根裏部屋に籠もって鍵をかけた。
チャーリーは入ってこないだろうけど、アリスちゃんはチョロチョロ入って来そうだし。
本日の目的はガラス。それも、スイーツの入っているようなもの。あるでしょ、おしゃれプリンとかガラスの器に入って売っていることが。あの手の器を狙っているのですよ。
でも、今日はびっくりすることになった。
屋根裏部屋に入ってスクリーンを出したら、スクリーンから人が出てきたのだ。
びっくりした。
超有名な某ホラーみたいだった。相当古いけど。
出てきたのはなんかめちゃくちゃ無愛想な若い男性でアーロンと名乗った。
神の一人なのだという。ただ、薄い。なんか、こうインクの切れかけたプリンターで印刷したみたいな感じで、うまくいえないけど「印象が霞んでる」。
「アナスタシア様に命じられたから来た」
をを……アナスタシア、本当に主神だったのね。
「失礼な小娘だな」
睨まれた。
「アナスタシア様もどうしてこのような者に目をおかけになるのか……」
いや、あなたも十分失礼だと思うよ!
……と思ったけど、私はそれ以上は言わなかった。
「ふむ。まあ、よい」
アーロンには私の考えていることはかなりわかるらしく、フン、と鼻を鳴らした。
「お前が文句を言ったから時々アドバイスをしに来ることになった。それからおまえはそろそろレベルアップが近い」
えっ、このスキルにレベルアップとかあるの?!
「まあ、順当に行けばフィルタリングか事業資源ごみだな」
フィルタリング?
「レベル1だと簡単な異物をハネることができる」
説明を受けたけどよくわからない。困惑していると、大げさなため息をついて教えてくれた。
たとえば、シャツ。
全てコットンなのにボタンだけプラスチックの場合、フィルタリングがないと、そもそもスクリーンに出てこないけれど、フィルタリングがあると、そのスキルを使って獲得するというオプションが出てくるというのだ。
レベルが低いと「プラスチックの包装を剥ぐ」くらいしかできないみたいだけれど。レベルがあがると服からジッパーを外して入手したりできるみたい。
「スクリーンに出てくるものが増えるぞ。……まあ、使えば使うほど神力も使うから、手に入れられるかは別だ」
とにかく選ぶ母体が増えるのはいいことだよ。
事業系資源ごみは、一般家庭ではなく、事業者の資源ごみをあさる能力。例えば洋裁工房の資源ごみなら、布物がかなり見込める。
どちらもものすごく便利そうだ。口は悪いけどわざわざ説明をするためにアーロンを派遣してくれたところもアナスタシア、すばらしいよね!
心の中でアナスタシアを褒め称えていたら、アーロンがぎょっとしたような顔で私を見た。
「そなた……なるほど……」
え、なになに? めちゃくちゃ気になるんですけど……。
「こちらの話だ」
聞いてみたけど、アーロンはそれから教えてくれなかった。
でも、アーロンがついてくれているとスキルの使用は楽しかった。
「あー、これはまだ技術がないんだけど、アルゴリズムがバレないだろうと判断したんだな」だとか、「これはキリングホールのあたりの職人集団が最近作り出したものに似てるからセーフ」だとか教えてくれる。
とりあえず、スキルのアルゴリズムは「この世界にあるか」を基準にしていて「マージョのいる田舎町で入手は可能か」はあんまりファクターに入ってないことがわかった。
アーロンも素晴らしい。さすがアナスタシアの人選だ!
「ま、まあ、また暇があったら来てやる……」
霞んでるから表情はよくわからないけれど、なんか照れた感じでそう言ってくれた。
あと、もう一つありがたかったのは「この地域にはこういうゴミがある」という情報。
資源ごみの区分って自治体によって違うんだよね。
私が便利に使っている布ゴミも回収していない地域もあるし。
どこの市町村が、ということを知っているのではなく、ゴミ類の内容でわかるみたいで、「なんか布がある」「面白い金属があの辺りにある」ということがわかるみたい。
そこで!
ホーローのキャンプ用食器セットと鍋をゲットした!
特にホーローのコップが嬉しい。これ、中に炭火を入れたら多分アイロン代わりに使えるよね。
市場に持っていくものを探していたのになんだか自宅用のものばかり見つかっちゃったけど、ちょっと嬉しい。
アーロンにお礼を言ったら、ものすごく疲れていることに気づいて、やはり昼寝をしてしまった。
まあ、スキルは使えば使うほどレベルがあがると言ってたからな……!
と、エレンさんが聞いてくれたので、こくこく!と頷いた。
最初は色々渡して売って来てもらっていて、それで十分だと思ってたんだけど、気が変わった!
私はもうちょっとこの世界の事を知らないとダメだよ。
「知識」に頼るんじゃなくて、実際にあちらこちらに行って吸収する必要があるよ。
売り物の相談をしに行って「母が残した古いガラスの製品を売りたい」と言ったら「それじゃあ市場に行きましょう。うちの店の端っこに並べたらいいわよ」ということになったのだ。
市場は小さめの町のストウブリッジと、ここからはちょっと遠いバグズブリッジで隔週ごとに開かれる。
全く逆方向だけれど、ホワイトさんたちはどちらも定期的に行っているみたい。
バグズブリッジには船着き場もあって遠くからも色々届くから大きな町なのはバグズブリッジの方。でも、物もお高め。買うのも売るのも。
ガラス瓶だったら競合が少ないからストウブリッジの方がいいんじゃないかしらね、というエレンさんの説明にしたがって今回はストウブリッジに行くよ。
前日のエレンさんは村の農家の人たちが持ってきたバターとかカゴとか、細々したものをまとめて記録するのと、注文を聞いてまとめるので大変そうだったので、私は家に帰って屋根裏部屋に籠もって鍵をかけた。
チャーリーは入ってこないだろうけど、アリスちゃんはチョロチョロ入って来そうだし。
本日の目的はガラス。それも、スイーツの入っているようなもの。あるでしょ、おしゃれプリンとかガラスの器に入って売っていることが。あの手の器を狙っているのですよ。
でも、今日はびっくりすることになった。
屋根裏部屋に入ってスクリーンを出したら、スクリーンから人が出てきたのだ。
びっくりした。
超有名な某ホラーみたいだった。相当古いけど。
出てきたのはなんかめちゃくちゃ無愛想な若い男性でアーロンと名乗った。
神の一人なのだという。ただ、薄い。なんか、こうインクの切れかけたプリンターで印刷したみたいな感じで、うまくいえないけど「印象が霞んでる」。
「アナスタシア様に命じられたから来た」
をを……アナスタシア、本当に主神だったのね。
「失礼な小娘だな」
睨まれた。
「アナスタシア様もどうしてこのような者に目をおかけになるのか……」
いや、あなたも十分失礼だと思うよ!
……と思ったけど、私はそれ以上は言わなかった。
「ふむ。まあ、よい」
アーロンには私の考えていることはかなりわかるらしく、フン、と鼻を鳴らした。
「お前が文句を言ったから時々アドバイスをしに来ることになった。それからおまえはそろそろレベルアップが近い」
えっ、このスキルにレベルアップとかあるの?!
「まあ、順当に行けばフィルタリングか事業資源ごみだな」
フィルタリング?
「レベル1だと簡単な異物をハネることができる」
説明を受けたけどよくわからない。困惑していると、大げさなため息をついて教えてくれた。
たとえば、シャツ。
全てコットンなのにボタンだけプラスチックの場合、フィルタリングがないと、そもそもスクリーンに出てこないけれど、フィルタリングがあると、そのスキルを使って獲得するというオプションが出てくるというのだ。
レベルが低いと「プラスチックの包装を剥ぐ」くらいしかできないみたいだけれど。レベルがあがると服からジッパーを外して入手したりできるみたい。
「スクリーンに出てくるものが増えるぞ。……まあ、使えば使うほど神力も使うから、手に入れられるかは別だ」
とにかく選ぶ母体が増えるのはいいことだよ。
事業系資源ごみは、一般家庭ではなく、事業者の資源ごみをあさる能力。例えば洋裁工房の資源ごみなら、布物がかなり見込める。
どちらもものすごく便利そうだ。口は悪いけどわざわざ説明をするためにアーロンを派遣してくれたところもアナスタシア、すばらしいよね!
心の中でアナスタシアを褒め称えていたら、アーロンがぎょっとしたような顔で私を見た。
「そなた……なるほど……」
え、なになに? めちゃくちゃ気になるんですけど……。
「こちらの話だ」
聞いてみたけど、アーロンはそれから教えてくれなかった。
でも、アーロンがついてくれているとスキルの使用は楽しかった。
「あー、これはまだ技術がないんだけど、アルゴリズムがバレないだろうと判断したんだな」だとか、「これはキリングホールのあたりの職人集団が最近作り出したものに似てるからセーフ」だとか教えてくれる。
とりあえず、スキルのアルゴリズムは「この世界にあるか」を基準にしていて「マージョのいる田舎町で入手は可能か」はあんまりファクターに入ってないことがわかった。
アーロンも素晴らしい。さすがアナスタシアの人選だ!
「ま、まあ、また暇があったら来てやる……」
霞んでるから表情はよくわからないけれど、なんか照れた感じでそう言ってくれた。
あと、もう一つありがたかったのは「この地域にはこういうゴミがある」という情報。
資源ごみの区分って自治体によって違うんだよね。
私が便利に使っている布ゴミも回収していない地域もあるし。
どこの市町村が、ということを知っているのではなく、ゴミ類の内容でわかるみたいで、「なんか布がある」「面白い金属があの辺りにある」ということがわかるみたい。
そこで!
ホーローのキャンプ用食器セットと鍋をゲットした!
特にホーローのコップが嬉しい。これ、中に炭火を入れたら多分アイロン代わりに使えるよね。
市場に持っていくものを探していたのになんだか自宅用のものばかり見つかっちゃったけど、ちょっと嬉しい。
アーロンにお礼を言ったら、ものすごく疲れていることに気づいて、やはり昼寝をしてしまった。
まあ、スキルは使えば使うほどレベルがあがると言ってたからな……!
応援ありがとうございます!
13
お気に入りに追加
40
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる