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家の外はこんな感じでした

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家の中を見て、やらなくてはならないことを洗い出したので、今度は庭に出る。

おおお! 庭が大きい!っていうか、これは庭というよりも農作業場兼菜園みたいな感じ。
こちらは夏だ。
日本は11月の半ばだったから急に変わった季節にちょっと戸惑う。

トイレは家の外だ。というか、家の裏側に納屋のような物置のような屋根と、とても大雑把な壁がある箇所があってそこに小さなトイレがある。えーと、うまく説明できないんだけど、屋根と壁のある車庫あるじゃない? そんな感じの場所が裏側にあるのね。そしてそこの端の方にトイレがある。
匂いだとか衛生面だとか、きっとそういうことだよね。これはわからないでもないけれど、夜は怖いな。
一応屋根があるから雨が降っても濡れずにトイレに行けるのはいい。
もしかしたらこの地方、雪が降るのかも、とちょっと思った。
雪で閉じ込められてトイレにいけないとか、そういうことにならないように、一応屋根と壁があるんだろうな。
物干し竿みたいなものもその箇所にあった。
部屋干しみたいなものができるのかもしれない。ちなみに庭にも物干し竿があったからなんか、ものすごく色々なものを干すことが想定されているんだと思う。

井戸はトイレの反対側。

少し距離をとってあるんだね。正解だよ。
飲み水なんだろうけれど、水質だなんだをチェックすることができないことを考えるとちょっと不安がないでもない。
しばらくは飲み水は生活魔法で賄ってこちらは洗濯やお風呂用だな。

トイレの裏側には小さな囲いがあって豚が二頭いた。


あー。

アナスタシアが「インストール」してくれた知識が頭の中でチカチカと光る。
知らないと周囲の人に怪しまれそうな知識を色々とインストールしてくれたのだ。
不思議な感じだ。
確かに自分の「知識」なんだけれど、なんか実感が伴わなくて、ちょっとテレビを見ているような感じ。


この豚は、残飯やなんかを処理してくれる豚で、糞を堆肥にするんだって。冬が来る前に農家のメンストンさんに頼んで潰してもらうこと。解体もしてくれるけど、その時には内蔵と足を一本あげることになっている。
これが高いのか安いのかよくわからないけれど、設定ではそうすることになっているんだね。

2年くらい飼うと成獣で、これはオスメスのつがいだから、年に二回子豚を産むはず。子豚もメンストンさんの家に持って行って市場で売ってもらう。

ここまで頭の中の知識を辿っていて、気づく。
そっか。
メンストンさんがなんか、ちょっと保険やさんみたいな役割をしているわけだ。たとえば、うちの豚を潰して肉にした時に、次の子豚がいるとは限らない。

ていうかそもそも、一人暮らしのこの家で豚を何頭も世話しきれないから子豚は生まれても手元で育てられるわけでもない。だから、メンストンさんに二頭あげておくと、潰したタイミングで若い豚を二頭もらえるというわけだ。

子豚バンクだね!


と、まあ、仕組みはわかるんだけれど、庭にいる二頭を見てちょっと困ってしまう。
世話をしきれる感じがない。
でも、肉は好きだ。こうやって普通に豚が家にいるってことは、肉屋なんて簡単に周囲にないってことだよね。
悩ましい!

ひょっとして……と思って豚小屋の裏を見たら、鶏もいましたよ。3羽。1羽はトサカがあるからオスだね。
ということはいつかひよこも生まれるだろう。
卵や鶏肉も自分で調達しなさいってことだね。

鶏ぐらいだったらなんとかなりそうだけれど、豚はどうしよう……。猫や犬でさえ飼ったことがないのに、一気に豚や鶏を飼うことになるとは思いませんでしたよ。恐ろしいな、異世界。




そして、庭!

まず目につくのは果樹。これ、たぶん果物がなるんじゃないかな、って感じの木が二本。あと柿の木っぽいのがあるんだけど、柿じゃないよね。
日本だって北海道とか北の方ではあまりよく育たない木だし……。
庭の隅にはトゲトゲの低木。これ、多分なにかベリー系なんじゃないかって気がする!
そんなことを考えていたら、頭の中に知識が浮かんでくる。うんうん。プラムの木とりんごの木だね。それからびっくりしたけど柿の木だった。ただし、実をつけたことはなし。
それから、ブラックベリーの茂み。


そしてハーブガーデン。パセリ。セージ。ローズマリーとタイム。
歌が歌えそうだよ。

ニンニクもあった。それから豆類が何種類も。


庭の裏手は雑木林で──多分、森、というほどの深さではないと思う。「入会地」と私の知識が教えてくれている。村の人たちが勝手に入って行って色々なものを取っても怒られない地域だね。
秋にはそこに豚を放してどんぐりを食べさせると美味しくなると私の知識は教えてくれるんだけれど……いや、あれ、あの……放牧した豚をどうやって捕まえればいいのか想像もつかないよ……。

美味しそうだけれどね。どんぐりをいっぱい食べた豚……。

私がいるのは村だということはわかる。小さな雑貨屋が一軒。店主はホワイトさんとその奥さんのエレンさん。子供が5人いたけれど、うち3人はもうもっと大きい街に徒弟にでている。で、代わりに他の村から徒弟が一人きている。ここは夜にいきなり酒を売ってくれて突発的にパブみたいなことになったりもする。部屋が余っていて、宿屋っぽいこともしたりする──らしい。
農家のメンストンさん。子供は8人。一番上の18歳から一番下の6歳まで。
農家はもう何軒かあるけれど、うちから一番近いのはメンストンさんの家で、関係は悪くないみたい。
教会、というか神殿があるけれど、神官は常駐していなくて、冬以外の時期は一週間に一回ぐらいの感じで巡回してくる。もう少し大きい村の方に住んでいるんだね。
他にも何家族かいるんだけれど、とりあえず私と関係が深いのはホワイトさんとメンストンさんだ。

そして、私は「うーむ」とため息をついてしまった。








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