嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第5幕:分水嶺の奏鳴曲(ソナタ)

第5-5節:一人ひとりの力を合わせて

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 一方、このタイミングでナイルさんとリーザさんはそれぞれ探索魔法サーチの詠唱を開始し、魔方陣の位置を探し始める。程なくその効果は発揮され、術者には対象物の位置が手に取るように分かるようになるだろう。

 その瞬間に備え、ゼファルさんはリーザさんのかたわらに立って、いつでも出撃が可能なように準備運動をしている。

 そしてリカルドはこの束の間の待機時間に、沈痛な面持ちで私に頭を下げてくる。

「妻であるキミの守りに、夫である僕が専念できずに申し訳ない……」

「……なーに言ってるの! 苦しい時はお互いに助け合わなきゃ! 私は常にそう思ってるし、リカルドもフィルザードの人たちもそうやって生きてきたでしょ? なにより私たちの夢だって助け合って実現しようとしてるんじゃないの?」

 私はフィルザードの空のような、一点の曇りもない晴れやかな気持ちで思いっきりリカルドの背中を叩いた。

 彼がみんなのために何か行動しようとしているなら、心置きなくやってほしいから。私は守られるだけじゃなく、時には彼の力にもなりたいから。私に対する後ろめたさなんか感じないでほしい。

 そんな私の意思が通じたのか、彼の瞳に力強い光が戻って大きくうなずく。

「……うん、そうだったな!」

「そもそもリカルドは私に『ひとりで抱え込まずに周りを頼れ、その代わり僕たちが苦しい時はキミが僕たちを助けてくれ』みたいなことを言ってたのを忘れたの? リカルドこそ自分の妻をもっと頼りなさいっ!」

「ふふっ、これは一本取られたな……。分かった! キミは状況を俯瞰ふかんして、キミ自身が動いたり兵士たちに指示を出したりしてくれ。判断は任せる。ただし、キミたちは兵士たちに守られたままでいることが基本方針だ。決して無理はしないでくれ」

「うんっ! リカルドも気を付けてねっ!」

 私たちはお互い笑顔で見つめ合い、軽く拳を付き合わせた。

 そしてリカルドは真顔に戻ると、周囲を見回しつつ兵士さんたちに向かって声を張り上げる。

「現時点より僕がこの場に戻るまで、兵士たちはシャロンの指示に従え!」

 その指示を受け、即座に兵士さんたちは同意する旨の返事をした。

 権限を一時的に委譲された私としても身の引き締まる想いがする。自分を含め、みんなの運命を握ることになったのだから。判断を間違えば全滅だってあり得るわけで、プレッシャーを感じないはずがない。

 そんな中、探索魔法サーチの発動を試みていたナイルさんがリカルドに向かって話しかける。

「リカルド様、魔方陣の位置が特定できました。やはり道の前方側と後方側に数か所ずつあるようです」

「よしっ! 行こう、ナイル!」

「承知です!」

「ゼファルとリーザは後方側の分を頼んだぞ!」

 リカルドはそう言い放つと、ナイルさんとともに陣を出て前方側へ駆け出した。

 その遠ざかっていく背中に向けて、ゼファルさんはロングソードを天高く掲げながら力強く返事をする。

「おうよっ、リカルド様! こっちは俺たちが引き受けたーっ!」

「――お待たせ、ゼファル。私たちも行きましょう」

 直後、リーザさんも探索魔法サーチにより魔方陣の位置を把握したようで、振り向いたゼファルさんに対して目顔で合図を送る。

 すると彼は大きくうなずいてから私に視線を送り、声をかけてくる。

「シャロン様、あんたを守る任務を引き受けた側が言うのは変な話かもしれませんが、俺たちが戻るまでソフィアのことを頼みます」

「困った時はお互い様です。ゼファルさんたちも充分に気を付けて魔方陣の対処をお願いします。何かあったらソフィアちゃんが悲しみますから」

「へへっ、それじゃお互いに武運を!」

 ゼファルさんはリーザさんとともにこちらへ向かって会釈えしゃくをすると、揃って道の後方側へ走っていった。

 こうして私たちはそれぞれ与えられた役割と配置で、再びアンデッドとの戦いを開始する。すでにリカルドたちやゼファルさんたちはそれぞれ敵勢の最前線と激突し、立ちはだかる影をぎ払いながら魔方陣が設置されている場所へ突き進む。

 また、その動きが敵の注意を引きつけることにもなり、私たちのいる場所へ侵攻してくる数が少なくなるという状況にも繋がっている。おかげで兵士さんたちは比較的余裕を持って、襲ってくる敵に対処できている。


 ――うん、今のところ自陣が崩されそうな心配はない。

 この状態を維持できれば、リカルドたちが全ての魔方陣を消すまで耐え抜ける。もちろん、だからといって油断をせず、確実に戦況を見極めていこう。

「シャロン様っ! あっちを見てくださいなのですっ! 大変なのですっ!」

「えっ?」

 不意に上がったポプラの驚きに満ちたような叫びを聞き、即座に私は彼女の指差す先へ視線を向けた。


(つづく……)
 
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