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第2幕:心を繋ぐ清流の協奏曲(コンチェルト)
第4-2節:似た者同士
しおりを挟むその後、私はリカルド様を部屋に招き入れると隣り合わせで椅子に座って、視察で気が付いたことを打ち明けた。特にフィルザードの地下に豊富な水が存在するであろうということや、水路についてのことを中心に――。
そして彼は私の話を聞き終えると、腕組みをしながら低く唸る。
「なるほど、シャロンはフィルザードに水路を引こうと考えているわけか。難しいような気はするがな。フィルザード家の過去の当主がその事業に手を付けていないわけだからな。今まで誰も考えつかなかったとも思えんし」
「だからこそ、実現可能性を探るためにも地形をしっかり確認したいのです。地図を拝見することをお許しいただけませんか?」
「…………。……それはダメだ。ジョセフにまた叱られたいのか?」
「う……」
瞬時に私の頭の中にジョセフさんの激怒する顔が浮かんだ。
あの時の反応を思い返してみる限り、当面は彼の前で地図の話題を口にしない方がいいのは事実。一方、リカルド様にも私に地図を見せようとしてくれる気配はない。
ジョセフさんにあれだけ強く止められたわけだから、その反応も無理はないか……。
落胆して私が沈黙したまま俯いていると、リカルド様は涼しい顔をして立ち上がる。そして静かに私を見下ろしてくる。
「話はそれだけのようだな。では、今度は僕の用事に付き合ってもらおうか。シャロン、一緒に来てくれ」
「えっ? あ……はい……」
それは全く想定していなかったことだけど、相談を受けてもらったという恩義もあって、私はリカルド様の申し出に素直に従うことにした。当然、どこへ行こうとしているのかも、どういう意図があるのかも分からない。
こうして当惑しつつも私はリカルド様に手を引かれ、彼の持つランプの淡い灯りを頼りに暗い廊下を進んでいく。
響き渡る小さな足音と埃臭さが漂うひんやりとした空気。少し不気味な雰囲気があって、ゴーストでも出そうな感じがする。でもだからこそふたりだけで冒険でもしているような気がして、気分が少しだけ高揚する。
冒険……か……。
もし私たちが違う世界に生まれたとして、例えば勇者と姫として出会ったら、こんな感じでお城の中を探索するのかな? それはそれでちょっと素敵かも……。
そんなことを思いつつ歩き続け、私たちが最終的に辿り着いたのは執務室。彼はそのドアの前で立ち止まり、ポケットから銀色に輝く金属製のカギを取り出して施錠を解く。
「実は昼間、僕の机に忘れ物をしてしまってな。取りに来たのだ」
「ふふっ、もしかして夜にひとりでここへ来るのが怖かったのですか?」
「あははっ、そうかもな。僕は色々な意味で臆病者だからな。――でもキミと一緒だと全然怖くない」
「っ!? も、もうっ、リカルド様ったら!」
またしても冗談めいたことを言うリカルド様に、私は照れつつも頬を膨らませる。
でもそれに対して彼はさっきと違っていつになく真剣な表情になり、私を真っ直ぐ見つめる。月明かりに照らされて輝くその瞳には神秘的な美しさが漂っていて、私は思わずドキッとする。
「これは僕の本当の想いだ。キミと一緒にいると心が落ち着いて、どんな困難も打ち破れそうな勇気が湧いてくる。出会って間もないというのに、不思議なものだな」
「リカルド様……。はい、私も同じ気持ちです。実は先ほどあなたが私の部屋にいらっしゃってお顔を拝見した瞬間、すごく心が安らぎました。似た者同士ですね、私たち」
「似た者同士、か……。そうかもな、僕たちは似ているのかもしれない。それにそう言ってもらえると、なんだか嬉しい。ありがとう、シャロン」
その時に見せたリカルド様の笑顔は幼い少年のように屈託がなくて、実に印象的だった。
そして彼にはまだまだ私の知らない魅力があるのだとあらためて気付かされ、もっともっと知りたいと強く思うのだった。
(つづく……)
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