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召喚と旅立ち
13.馬車の旅はいかが?
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「ここをこうやって――はい、完成! リンネ様、よく似合っていますよ! 」
ミルフェ王女に絶賛、髪を弄られ中なボク。これで何回目の髪型チェンジだろうか。髪を弄る、弄られるのって、何だかとっても新鮮な楽しさがある。ちなみに、今は安定のポニーテールで一段落だ。
突然だけど、女子の髪型について物申す!
走っているときにポンポン揺れる陸上部女子的なポニテが好き。頭を左右に振る度に優しく往復ビンタしてくれるツインテール女子が好き。他にも、王道的なサラサラストレートロングだって好きだし、可愛い顔を優しく包み込んでくれるショートボブだって良いと思う。要するに、可愛い子はどんな髪型でも可愛いんだ!!
「空気読めなくて申し訳ないんだが――この辺は森から魔物が出てくる危険地帯なんだよな。もう少し緊張感持ってくれたら助かる。別にまぁ、嫌いじゃないんだが」
最後、小声で「可愛い子たちは目の保養になるし」とか付け加えてるお兄さんが居ますよ。
馬車は2台。そこにボクたち生存者7名は、二手に別れて分乗している。
前を行く先頭車には護衛が3人、交代しながら馬車を繰る。王女と隊長とボクの3人は後続車の中。馭者は護衛のベテラン戦士に任せてある。
日はまだ依然として高く、時間にすると午後2時頃だと思う。
穏やかな天候のせいか、それとも窓から見える景色がずっと変わらない岩石砂漠のためか、和やかな馬車旅が続いていた。こういう場合の暇潰しと話題提供に最適なのが髪弄りだんだよね。
「フィーネの町でしたっけ? あと何時間くらいで着きそうですかぁ? 」
欠伸を押し殺しながら、目の前に座る金髪ツンツン頭に話し掛ける。
「そうさなぁ、あと2時間は掛からないんじゃないか? 必要ならトイレ休憩でも入れるぞ」
アクシデントはあったものの、到着予定時間は当初の想定通り。旅は順調。お腹は空腹のため不調だけどある意味快腸。
「トイレは大丈夫ですが、お腹が空きました。馬車の中で食事をするのはマナー違反だったりしますか? 」
銀髪を櫛で梳かしてくれているミルフェ王女に訊いてみる。
実は朝6時前から何も食べていないんだよね。12歳の身体だからかもしれないけど、空腹を我慢するのが凄く辛い。もしも、“飲食不要”ってスキルがあったら選んでいたかもしれない――。
「そんなことないわよ? 保存食で申し訳ないけど、食べておきましょうか。お口に合えば良いけど」
「ありがとうございます! この世界の食事って、まだあまり経験がないんですよ。芋とパンしか――あ、でも楽しみです! 」
アイテムボックスの中には、例のカチコチパンが入っているんだけど、折角だから頂くことにした。
保存食とは言え、乾燥肉や野菜を水で解していくと、徐々に立派なメニューに変わっていく。ちょっと塩っぽい感じはしたけど、日本では味わえない素朴な料理だった。
その後しばらくは食事の話題で盛り上がった。
さすがは王族! 庶民には手が出ないようなスイーツやステーキ、ハンバーグ――夢のようなメニューが出るわ出るわで、ボクと隊長さんは逆に空腹感が増した気がする。
「ところで、王都は遠いんですか? 」
さっきリザさんが『遠路はるばる』とか言っていたのを思い出し、訊いてみる。
「馬車で片道10日間くらいかなぁ。早馬なら4日で着くらしいけど、魔物がうようよいるから途中の夜営が大変よね」
どのくらいの距離なのか想像が付かない。
えっと――20kmを馬車2時間だとして、1日10時間なら100kmだね。10日ってことは1000kmか。まぁ、大陸の中央付近にある王都まで、約1000から1500kmってところかな?
確か、フリージア王国って大陸の東半分だったよね。そうすると――東西4000kmくらいだから、このロンダルシア大陸と言うのは、ちょうどオーストラリア大陸くらいなのか。何だかイメージが湧いてきた気がする。
「ボクの都合でフィーネまで行くのは、ご迷惑だったりしませんか? 」
正直、気になっていたことだ。
フィーネの町は王都への途中にある訳ではない。素人勇者とはいえ、王女様を振り回して良いはずがないよね。
「その点は逆にこっちも好都合だったりするんだよな」
隊長さん曰く、最寄りの町フィーネで冒険者の護衛を新たに依頼するのだそうだ。冒険者ギルドにはお互いに用事があるという訳か。
ボクで良ければ王都までお付き合いしますよ、とまさに言おうとしたところで、突然王女様から重大発表が!
「実は、フィーネにはもう1つ用事があるの。最近、フィーネの近くに迷宮が生まれたそうで、その情報収集も行うつもりよ! 」
「迷宮、ですか!? 」
迷宮と言えばダンジョン、ダンジョンと言えばお宝だ。確か、宝箱の中には魔法書が入ってたりするんだよね!
「あぁ~、確かギルドからそんな情報出てたわな。なにせ、迷宮誕生は50年振りだって言うしよ、冒険者魂が踊るってもんよ」
「そう、50年振り。このタイミングでね! 怪しいと思わない? 私の勘だと、あるわよ、絶対に!! 」
「ある? 何が? 」
頭の中がバラ色になってしまい、王女に対して敬語を使うのを忘れてしまった――。
「なるほど、そういうことか! 勇者を待っていたってことだな! 」
何だかボクだけ理解が追い付かない。
迷宮が勇者を待つ? いったい、何があるの?
「ねぇ、リンネ様。一緒に迷宮に潜らない? 」
はぁ!?
一国の王女が冒険者みたいに迷宮へ?
「王女さんが行くなら俺も行くぜ? 一応、護衛隊長だからな! 」
金髪ツンツン頭が太い腕を見せてくる。
でも、別にそういうのは期待してない。
「迷宮は確かに楽しそうですが、今はそれどころじゃ無いのでは? 今は一刻も早く――って、あっ!! もしかして召喚石があるかもしれないってこと!? 」
「「そう! 」」
「私から説明するね。あ、あと、私のことはミルフェと呼んでほしいな。私、13歳よ。リンネちゃんより1つ歳上だけど、パーティメンバーになるんだから敬語はやめてね」
「分かった、ミルフェ。よろしくな! 」
「いやぁっ!! あんたに言ってない!! 」
なにこの隊長、ノリノリじゃないですか。よし、隊長と同じように渋い感じで言ってみるか。だって、恥ずかしいんだもん。
「うん、分かった。ミルフェよろしく! 」
「ひゃぁん! リンネちゃん、かわゆい!! 」
「あぁ、それなら俺からも一言先に言わせてくれ。ミルフェちゃん、リンネちゃん」
「「ちゃん付けやめて!! 」」
「分かったよ、つれねぇなぁ。ミルフェさん、リンネさんで良いか? 俺はランゲイル、25歳独身だ! 宜しく頼むぜ!! 」
そう言えば隊長のステータスは観てなかった!
こっそり確認しておこう。
[鑑定眼!]
名前:ランゲイル
レベル:25
職業:戦士
ステータス
攻撃:3.30(+4.80)
魔力:0.45
体力:2.85
防御:2.20(+4.20)
敏捷:2.10
器用:1.95
才能:0.95
この人、強い!
顔も悪くないし、モテそうだ。ただ、年齢はサバ読んでそうだね、普通に30代に見える。
「俺が言いたいのは、あれだ。リンネさん、メイン武器は棒かい? 」
隊長は、ボクが武士みたいに提げている鉄棒を見て険しい表情だ。
今は、腰に付けられたポシェット型のアイテムボックスの、そのベルトに吊るしてあるんだけど――アイテムボックスは他人から見えないらしいので、鉄棒が腰に磁石で貼り付いているように見えるかもしれない?
「あ、これはエリザベートさんからいただいた、いわゆる初期装備です、本当は魔法職志望なんですけどね。魔法が使えない魔法使いリンネをよろしく! 」
「「……」」
あざとい笑顔で滑った、致命傷だ。
完全にキャラ設定喪失気味――。
「リンネさんは棒が好きか? さっきの死体から回収した棍棒があるけど、使うかい? 」
「どんなのですか?」
「今のより、もっと黒くて、長くて、太いぜ? 」
あっ、セクハラ発言きました!
お巡りさーん、こっちです!
「死体から回収とか――精神的に無理です! 呪いが掛かったりしませんか? 」
セクハラにはスルーが推奨です。ツッコんだら負けなんです。ミルフェちゃんはスルーと言うより、何も気付いていない様子――いや、12、13歳なら気付いちゃダメでしょ。
「そっか、なら俺の予備の剣でも使うか? その棒切れよりは役に立つだろ」
詰まらなそうに話題を変えるランゲイルさん。でも、剣はちょっとね。
「ボク、棒術スキルがあるんですよ、初級ですけどね。あと、剣や槍や斧は――腕や首がスプリッタして血が出てるのを見ると気絶してしまいそうで」
「はっはっは! 違いねぇ! 子どもが血塗れに慣れちゃダメだな! 」
「まぁ、武器はフィーネで探そう? で、そろそろ説明したいんだけど!! 」
その後、小1時間ほど説明が続いた――。
ミルフェちゃんによると、王国では残り7つの召喚石の在処を探しているとのこと。今さらなんだけど、元々1000年も昔の伝承ということで、召喚石についてはただの宝石だと思われていたみたい。確かに野球の硬式球くらいのサイズなので、立派な宝石にしか見えない。王国中で行った調査の結果、得られたのは確定情報1つだけ。他の6つは行方不明だそうだ。
現時点で分かっている1つとは、大陸北部にある迷宮だ。その奥には人が進入できない結界があって、その地の伝承と合わせて考えると、召喚石がある可能性が高いという。
未確定情報としては、残り6つのうちの4つが西の王国領内にあるのではないかということ。他、大陸北部の離島にも怪しいと思われる神殿があり、現在調査団を派遣する準備段階だとのこと。
整理しよう。
1.所有中(銀)
2.フィーネ迷宮に?
3.王国北部の迷宮に?
4.王国北部の離島に?
5.たぶん西の国
6.たぶん西の国
7.たぶん西の国
8.たぶん西の国
もうこれ、ドラ〇ンレーダー的な物を先に探した方が早い気がする。普通に考えて、無理でしょ。7つの野球ボール石をオーストラリア大陸の中から探し出すとか――。
「フィーネの後は、北に向かうべきですか? 」
「そうね、ただ、北の大迷宮は難易度が高いらしいわよ。最奥の結界まで辿り着けた人はごく少数しか居ないらしいわ。あと、私がお手伝いできるのもフィーネだけになりそう――西の王国へ交渉と調査に向かう予定なの」
「あれ? 東西の王国は仲が悪いと聞いていたけど、大丈夫!? 」
「昔はね。今はそれどころじゃないでしょ。西にも勇者が召喚されたとは聞いていないけど、この件については少なくとも協力的よ」
なかなか大変な旅になりそうだけど、東西の王国が全面的に協力してくれるのは助かる!
その時、先頭車の馭者役から悲鳴が上がった!
「前方に魔物が多数! 恐らくゴブリン、数は――300以上確実!! 」
ミルフェ王女に絶賛、髪を弄られ中なボク。これで何回目の髪型チェンジだろうか。髪を弄る、弄られるのって、何だかとっても新鮮な楽しさがある。ちなみに、今は安定のポニーテールで一段落だ。
突然だけど、女子の髪型について物申す!
走っているときにポンポン揺れる陸上部女子的なポニテが好き。頭を左右に振る度に優しく往復ビンタしてくれるツインテール女子が好き。他にも、王道的なサラサラストレートロングだって好きだし、可愛い顔を優しく包み込んでくれるショートボブだって良いと思う。要するに、可愛い子はどんな髪型でも可愛いんだ!!
「空気読めなくて申し訳ないんだが――この辺は森から魔物が出てくる危険地帯なんだよな。もう少し緊張感持ってくれたら助かる。別にまぁ、嫌いじゃないんだが」
最後、小声で「可愛い子たちは目の保養になるし」とか付け加えてるお兄さんが居ますよ。
馬車は2台。そこにボクたち生存者7名は、二手に別れて分乗している。
前を行く先頭車には護衛が3人、交代しながら馬車を繰る。王女と隊長とボクの3人は後続車の中。馭者は護衛のベテラン戦士に任せてある。
日はまだ依然として高く、時間にすると午後2時頃だと思う。
穏やかな天候のせいか、それとも窓から見える景色がずっと変わらない岩石砂漠のためか、和やかな馬車旅が続いていた。こういう場合の暇潰しと話題提供に最適なのが髪弄りだんだよね。
「フィーネの町でしたっけ? あと何時間くらいで着きそうですかぁ? 」
欠伸を押し殺しながら、目の前に座る金髪ツンツン頭に話し掛ける。
「そうさなぁ、あと2時間は掛からないんじゃないか? 必要ならトイレ休憩でも入れるぞ」
アクシデントはあったものの、到着予定時間は当初の想定通り。旅は順調。お腹は空腹のため不調だけどある意味快腸。
「トイレは大丈夫ですが、お腹が空きました。馬車の中で食事をするのはマナー違反だったりしますか? 」
銀髪を櫛で梳かしてくれているミルフェ王女に訊いてみる。
実は朝6時前から何も食べていないんだよね。12歳の身体だからかもしれないけど、空腹を我慢するのが凄く辛い。もしも、“飲食不要”ってスキルがあったら選んでいたかもしれない――。
「そんなことないわよ? 保存食で申し訳ないけど、食べておきましょうか。お口に合えば良いけど」
「ありがとうございます! この世界の食事って、まだあまり経験がないんですよ。芋とパンしか――あ、でも楽しみです! 」
アイテムボックスの中には、例のカチコチパンが入っているんだけど、折角だから頂くことにした。
保存食とは言え、乾燥肉や野菜を水で解していくと、徐々に立派なメニューに変わっていく。ちょっと塩っぽい感じはしたけど、日本では味わえない素朴な料理だった。
その後しばらくは食事の話題で盛り上がった。
さすがは王族! 庶民には手が出ないようなスイーツやステーキ、ハンバーグ――夢のようなメニューが出るわ出るわで、ボクと隊長さんは逆に空腹感が増した気がする。
「ところで、王都は遠いんですか? 」
さっきリザさんが『遠路はるばる』とか言っていたのを思い出し、訊いてみる。
「馬車で片道10日間くらいかなぁ。早馬なら4日で着くらしいけど、魔物がうようよいるから途中の夜営が大変よね」
どのくらいの距離なのか想像が付かない。
えっと――20kmを馬車2時間だとして、1日10時間なら100kmだね。10日ってことは1000kmか。まぁ、大陸の中央付近にある王都まで、約1000から1500kmってところかな?
確か、フリージア王国って大陸の東半分だったよね。そうすると――東西4000kmくらいだから、このロンダルシア大陸と言うのは、ちょうどオーストラリア大陸くらいなのか。何だかイメージが湧いてきた気がする。
「ボクの都合でフィーネまで行くのは、ご迷惑だったりしませんか? 」
正直、気になっていたことだ。
フィーネの町は王都への途中にある訳ではない。素人勇者とはいえ、王女様を振り回して良いはずがないよね。
「その点は逆にこっちも好都合だったりするんだよな」
隊長さん曰く、最寄りの町フィーネで冒険者の護衛を新たに依頼するのだそうだ。冒険者ギルドにはお互いに用事があるという訳か。
ボクで良ければ王都までお付き合いしますよ、とまさに言おうとしたところで、突然王女様から重大発表が!
「実は、フィーネにはもう1つ用事があるの。最近、フィーネの近くに迷宮が生まれたそうで、その情報収集も行うつもりよ! 」
「迷宮、ですか!? 」
迷宮と言えばダンジョン、ダンジョンと言えばお宝だ。確か、宝箱の中には魔法書が入ってたりするんだよね!
「あぁ~、確かギルドからそんな情報出てたわな。なにせ、迷宮誕生は50年振りだって言うしよ、冒険者魂が踊るってもんよ」
「そう、50年振り。このタイミングでね! 怪しいと思わない? 私の勘だと、あるわよ、絶対に!! 」
「ある? 何が? 」
頭の中がバラ色になってしまい、王女に対して敬語を使うのを忘れてしまった――。
「なるほど、そういうことか! 勇者を待っていたってことだな! 」
何だかボクだけ理解が追い付かない。
迷宮が勇者を待つ? いったい、何があるの?
「ねぇ、リンネ様。一緒に迷宮に潜らない? 」
はぁ!?
一国の王女が冒険者みたいに迷宮へ?
「王女さんが行くなら俺も行くぜ? 一応、護衛隊長だからな! 」
金髪ツンツン頭が太い腕を見せてくる。
でも、別にそういうのは期待してない。
「迷宮は確かに楽しそうですが、今はそれどころじゃ無いのでは? 今は一刻も早く――って、あっ!! もしかして召喚石があるかもしれないってこと!? 」
「「そう! 」」
「私から説明するね。あ、あと、私のことはミルフェと呼んでほしいな。私、13歳よ。リンネちゃんより1つ歳上だけど、パーティメンバーになるんだから敬語はやめてね」
「分かった、ミルフェ。よろしくな! 」
「いやぁっ!! あんたに言ってない!! 」
なにこの隊長、ノリノリじゃないですか。よし、隊長と同じように渋い感じで言ってみるか。だって、恥ずかしいんだもん。
「うん、分かった。ミルフェよろしく! 」
「ひゃぁん! リンネちゃん、かわゆい!! 」
「あぁ、それなら俺からも一言先に言わせてくれ。ミルフェちゃん、リンネちゃん」
「「ちゃん付けやめて!! 」」
「分かったよ、つれねぇなぁ。ミルフェさん、リンネさんで良いか? 俺はランゲイル、25歳独身だ! 宜しく頼むぜ!! 」
そう言えば隊長のステータスは観てなかった!
こっそり確認しておこう。
[鑑定眼!]
名前:ランゲイル
レベル:25
職業:戦士
ステータス
攻撃:3.30(+4.80)
魔力:0.45
体力:2.85
防御:2.20(+4.20)
敏捷:2.10
器用:1.95
才能:0.95
この人、強い!
顔も悪くないし、モテそうだ。ただ、年齢はサバ読んでそうだね、普通に30代に見える。
「俺が言いたいのは、あれだ。リンネさん、メイン武器は棒かい? 」
隊長は、ボクが武士みたいに提げている鉄棒を見て険しい表情だ。
今は、腰に付けられたポシェット型のアイテムボックスの、そのベルトに吊るしてあるんだけど――アイテムボックスは他人から見えないらしいので、鉄棒が腰に磁石で貼り付いているように見えるかもしれない?
「あ、これはエリザベートさんからいただいた、いわゆる初期装備です、本当は魔法職志望なんですけどね。魔法が使えない魔法使いリンネをよろしく! 」
「「……」」
あざとい笑顔で滑った、致命傷だ。
完全にキャラ設定喪失気味――。
「リンネさんは棒が好きか? さっきの死体から回収した棍棒があるけど、使うかい? 」
「どんなのですか?」
「今のより、もっと黒くて、長くて、太いぜ? 」
あっ、セクハラ発言きました!
お巡りさーん、こっちです!
「死体から回収とか――精神的に無理です! 呪いが掛かったりしませんか? 」
セクハラにはスルーが推奨です。ツッコんだら負けなんです。ミルフェちゃんはスルーと言うより、何も気付いていない様子――いや、12、13歳なら気付いちゃダメでしょ。
「そっか、なら俺の予備の剣でも使うか? その棒切れよりは役に立つだろ」
詰まらなそうに話題を変えるランゲイルさん。でも、剣はちょっとね。
「ボク、棒術スキルがあるんですよ、初級ですけどね。あと、剣や槍や斧は――腕や首がスプリッタして血が出てるのを見ると気絶してしまいそうで」
「はっはっは! 違いねぇ! 子どもが血塗れに慣れちゃダメだな! 」
「まぁ、武器はフィーネで探そう? で、そろそろ説明したいんだけど!! 」
その後、小1時間ほど説明が続いた――。
ミルフェちゃんによると、王国では残り7つの召喚石の在処を探しているとのこと。今さらなんだけど、元々1000年も昔の伝承ということで、召喚石についてはただの宝石だと思われていたみたい。確かに野球の硬式球くらいのサイズなので、立派な宝石にしか見えない。王国中で行った調査の結果、得られたのは確定情報1つだけ。他の6つは行方不明だそうだ。
現時点で分かっている1つとは、大陸北部にある迷宮だ。その奥には人が進入できない結界があって、その地の伝承と合わせて考えると、召喚石がある可能性が高いという。
未確定情報としては、残り6つのうちの4つが西の王国領内にあるのではないかということ。他、大陸北部の離島にも怪しいと思われる神殿があり、現在調査団を派遣する準備段階だとのこと。
整理しよう。
1.所有中(銀)
2.フィーネ迷宮に?
3.王国北部の迷宮に?
4.王国北部の離島に?
5.たぶん西の国
6.たぶん西の国
7.たぶん西の国
8.たぶん西の国
もうこれ、ドラ〇ンレーダー的な物を先に探した方が早い気がする。普通に考えて、無理でしょ。7つの野球ボール石をオーストラリア大陸の中から探し出すとか――。
「フィーネの後は、北に向かうべきですか? 」
「そうね、ただ、北の大迷宮は難易度が高いらしいわよ。最奥の結界まで辿り着けた人はごく少数しか居ないらしいわ。あと、私がお手伝いできるのもフィーネだけになりそう――西の王国へ交渉と調査に向かう予定なの」
「あれ? 東西の王国は仲が悪いと聞いていたけど、大丈夫!? 」
「昔はね。今はそれどころじゃないでしょ。西にも勇者が召喚されたとは聞いていないけど、この件については少なくとも協力的よ」
なかなか大変な旅になりそうだけど、東西の王国が全面的に協力してくれるのは助かる!
その時、先頭車の馭者役から悲鳴が上がった!
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