アーマードナイト

ハヤシカレー

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第四界—3 『執事ノ鎧』

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「いや戦い方から性格なんて分からないだろ」

 戦闘についてを避けようとするのは戦う事の意味がないからだけではない……ワールデスとの戦いは自身の命をこの世に存在させる為に仕方なくやっているもので、正直な所争いは、他の命に拳を放つ事は好きでは無いのだ。

「真っ先に顔面を狙えば外道で、腹を狙えば外道で、足を狙って行動に制限を付けさせようとしたならこれもまた外道、というか女の子を殴った時点で即外道……って感じだよ」
「戦ったら確定で外道じゃねぇか」
「怪物相手とは言え人間同等、又はそれ以上の知能を持つ生命体を殺した時点で外道、罪人だよ、私も君もね……だから気にする事は無いよ」
「……」

 黒姫は軽々しく、どこか諦め、開き直った様に俺と彼女の業についてを語る。
 その表情には、声色には一切のブレ、歪みが無く、それはつまり彼女が罪を覚えず罪を語っているという事を、彼女の精神が死を身近に感じているという事を示していた。

「だからと言って……もう既に善人にはなれないからと言って君との戦闘に意味があるとは思えない……もし怪我でもして、その怪我が治る前にワールデスが出現したらどうする」

 これまで現れた3体の……いや、スノーワールデスはそうでもなかったがカタナワールデスとフラワーワールデス……あの2体との戦闘している間は全ての時が、毎秒毎秒が死と隣り合わせで、勝てるのは偶然作り上げられていた状況と奇跡的に発想する事が出来た閃きによって勝利を掴み取っていた……それはつまり、かすり傷程度の些細な怪我、小さな不調があるだけで敗北、命を断絶させられるだろう。
 だから怪我をしない為、死なない為に俺は黄金 黒姫との戦いを拒絶しなければならない。

「ワールデスの戦いはまぁ……2人かがりなら大丈夫じゃない?」
「2人かがり……黒姫さん……というよりアーマードバトラーのスペックが分からないから何とも言えないな……」

 もしアーマードナイトと同等、又はそれ以上の力を持っていたのなら多少の不調はカバー出来るだろう……だが俺はまだ1度もアーマードバトラーの戦いを、戦いどころかその姿さえも見た事が無い、だからその強さを、存在をどこか不安に感じてしまう。

「それは私も同じだよ、私もアーマードナイトがどれだけの力を持っているのか知らない……だから貴方と戦ってその力を、身をもって知りたいんだよ」
「それは……まぁ確かに」

 黒姫の言う通り、これから先、共にワールデスと対決する上で互いの力を理解しておくのは重要で、そしてその為に1度戦っておくのは最適な方法と言えるだろう。

「お、賛同したね、同意したね、賛意を示したね?」

  『賛同
  同意』

「お……おぉ……そうだな」

 突然立ち上がり、机に両手を付け、詰め寄りまくし立てる様に言う黒姫の姿に思わず困惑し、首を縦に振ってしまう。

「それじゃあ私と君で戦うって事で良いんだよね?」
「……あぁ、俺と君で、アーマードナイトとアーマードバトラーで戦おう……勿論負傷はしない程度でな」

 黒姫と同じ様に立ち上がり、決意でも固めた様に答えた。
 彼女との戦闘に同意したのはその戦いに意味があると理解出来たから……というのもあるが、それ以上に俺自身が彼女と、アーマードバトラーと、命を懸けたりなどはしない、そんな試合的な戦いをしたくなったからである。

「よし、じゃあ戦場は高校の校庭にしようか」
「校庭……? 別に場所指定しなくても街全体使っていいんじゃ……」

 ほとんどの建物が崩壊により使い物にならなくなっている訳で、それなら戦闘によって破壊してまっても別に構わないはず……

「……単純に私が行きたいんだ、学校……1回も行った事無かったからさ」
「1回も……?」

 所謂箱入り娘と言うやつだろうか。
 よく創作物の中で見かける事はあったが、現実で実物を、現物を見たのは初めてだ。

「そう1回も、だから行ってみたいんだけど駄目かな?」
「まぁいいけど……行きたいんなら戦闘とは関係なく生身で、人間として行った方がいいんじゃないか?」
「それはそうかもしれないけど……何でもいいじゃん、別に校庭で戦うデメリットも無いしさ」

 校庭で戦うデメリットは黒姫の言う通り特に無い……が、街そのものを使った方が本番に近い環境で戦えるからその方がメリットが……いや、冷静に考えてみるとワールデスが世界を開けば街の環境は全く別の物になる訳で、別に校庭に限定しようと街全体を使おうと変わり無いな……

「……分かった、高校の校庭で戦おうか」
「じゃ、早速移動しようか」
「りょーかい……あれ」

 返事をし、黒姫に背を向け、煌びやかな金色の装飾を施された扉の方に歩き出そうとした時、俺はある違和感に気が付く、俺の脳はある違和感を認識する。

「なぁ……今更だけどなんでちゃんと色があって、カーペットとかも石みたいになっていないんだここ?」
「知らない、理由は分からないけどおかげで前と変わらず快適に暮らせてるから特に気にしてないね」
「そういうもんか」
「そういうものだよ」

 疑問には思うがそれによって害が生じている訳ではないから気にはしない、そのくらいが生きていく上では丁度良いのだろう……特に今の、この崩壊した世界では。

「そんな事はどうでもいいからさ、ほら早く! 出発するよ!」

 黒姫は声を張り、元気よく走り出して破壊しかねない様な勢いで扉を開き、その先に続く廊下を進む。

「……」

 最初黒姫の事を見た時はS系の、強気な高圧的なお嬢様を期待していたのだが実際には少しだけ、間違えて中傷を口にしてしまうだけの、元気で世間知らずな……つまり一般的なお嬢様キャラで、強いて言うなら新しい1番大切な物、という発言だけから普通とは違う何かを感じられた。

「まぁいいか可愛いし」

 俺の理想なんてどうだっていい、あんな可愛い子と同じ家に暮らせるんだ……それだけで十分……どころの話じゃない。

「ってか追いかけないと迷子になりかねないぞこの家!」

 慌てた様に言い、段々と小さくなる黒姫の背中を追いかけ、駆け出した。
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