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第2話 寄生虫VS寄生虫
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——10年前
鎧巣町を緑の炎が、ガイセクトが襲う。
その炎の中、害虫の中を僕は、僕達は走り、逃げ惑っていた。
「ねぇ奇龍! もう私っ……足が……!」
「弱音吐くなアホ! 止まったら絶対に死ぬ!」
立ち止まれば落ちてきた瓦礫に潰されるかもしれない、立ち止まれば害虫に襲われ、そして死んでしまうかもしれない。
だから走る、走らなくてはならない。
「何も考えず走れよ……!」
そう言いながらも分かっていた、走っても死ぬかもしれない、そんな事は分かっていた。
だけど走らないと助からない、だから走る。
そして音鈴がその事に気が付かない様に、そんな事を考える余裕を与えない様に手を引っ張る、無理矢理走らせる。
「あっ!」
「どうした!?」
音鈴が突然声を出し、僕の手を逆に引っ張り後方に向かい走り出した。
何故、一体何故音鈴が進行方向を変えたのか、その答えは一瞬で見つかった。
黄色い光、炎の中、地面に浮かぶ光、その光は、1つの小さな鈴だった。
「おいやめろ! あんな鈴っ……」
「あんなって何よ!」
「っ……」
僕の手を振りほどき、鈴に向かって駆け出す。
あの鈴は、あの光は、音鈴にとっての希望だ、決して捨てる事が出来ない物、だから命を掛けてでも取り戻さなければならない物だった。
「はぁ、仕方ないなぁ……!」
どうせ止めても拾おうとするだろうから、どうせ止めてももう遅いから。
だから、僕はせめてでもの事をする。
「ほら、貸してみろ」
しゃがみ、鈴を拾った音鈴の元へ駆け寄り、鈴を受け取り、そして紐を通し、ネックレスの様にして首にかける。
もう決して落とさないように、音鈴と鈴を繋ぎ止める。
「さっきはあんな鈴とか言って悪かったよ……ごめん……」
「……いいよ別に、命に比べたら軽い物なのは当然だし」
いつも通り、街が炎に包まれ、害虫に襲われようとも、結局はいつも通りの流れだった。
僕か音鈴、今回の場合は僕が失言をして、そして音鈴が怒って、僕が謝ってそれで終わり、そんな、そんないつも通りの流れだった、いつもの、日常の一コマだった。
「キルルル……」
「っ!?」
コオロギの鳴き声の様な音が聞こえ、慌てて瓦礫の下の隙間に潜り込む。
息を殺し、動きを止め、絶対に物音を立てないようにする。
物音を微かにでも立ててしまえば死ぬ、絶対に殺される、息を殺して、虫に殺される事を回避しなければならない。
息を殺せず虫に殺され、虫の息にされる、なんてしょうもない事を考えてしまった。
人間というのは本当に追い詰められた時は、逆に余裕になってしまうのかもしれない、心を壊さない為にそういう仕組みになっているのかもしれない。
「キルルゥ」
瓦礫の隙間から黒い足が、コオロギの足が見える。
ゆっくりと、人間を、殺害対象を探す様に歩を進める。
その時、コオロギが過ぎ去るのを待っていた時の事だった。
鈴が鳴った、コオロギの鳴き声の様な、そんな音が鳴ってしまった。
瓦礫の隙間から外へと、鈴の音は漏れ出してしまった。
死
そんな文字が頭に浮かぶ、抗いようのない死を覚悟してしまった。
音鈴を救わなければ、音鈴を、音鈴だけでも、たとえ僕が死んだとしても、僕が終わったとしても、音鈴は救わなければならない。
音鈴を救うにはどうすればいい、音鈴を守る為に僕は何が出来る。
僕に、僕に何が出来る?
そう、自問し、答えを求めていた時だった。
「キル……」
コオロギのかかとがこちらを向き、離れていく。
それからどれだけ経ったのかは分からない、ガイセクトが姿を消した頃、僕達は保護されたのだった。
何故コオロギが立ち去ったのかは分からない、分からないがきっと鈴の、希望のおかげなんだろう。
だから僕達は助かった、そして助かり続ける、鈴がある限り。
そう、思い込んでいただけだった。
結局音鈴は死んだ、コオロギによって、そう、つまり、音鈴は10年越しに殺されたのだった。
——ターン店前
「アーマード……」
アーマードヘクス、それが俺とカブトムシ……ヘクスが一体化し、変貌、変態した鎧の名前。
ヘクスが人間に装甲する、だからアーマードヘクス。
「ガイセクトにもちゃんとしたネーミングを考えられるんだな」
『俺を一般ガイセクト共と同じにするな!』
一般ガイセクトと同じにするな、それはつまりヘクスもガイセクトではある、という事なんだろう。
人間と一体化出来るガイセクト。
通常型、寄生型、擬態型とはまた違う、特殊なガイセクト。
『俺は王! ガイセクトの王だ! 一般ガイセクトとは訳が違う!』
「王? ガイセクトの王って何だ?」
『あっ!』
こいつ……さては墓穴を掘ったな。
それも特に重要そうな情報を、勢いに任せ、口を滑らせ言ってしまったらしい。
『い、いや違う、違う! 王じゃなくてあの……』
「あんま喋んなまた墓穴掘るぞ、王の事は今は気にしないでやるから」
出来るだけヘクスとは良い関係を築きたいからな。
そして1つ分かった事がある、この1分にも満たない会話の中で、簡単に分かってしまった事がある。
ヘクスは馬鹿だ。
『俺は馬鹿じゃない! 何故なら誰よりも強いからな!』
その発言がもう馬鹿だ、馬鹿の発言だ。
『何が馬鹿の発言っ……』
「お前がどんな奴か何となく把握出来たしターンに戻るか」
騒ぎ、喚くヘクスの声をシャットアウトした、した時の事だった。
「なんだ!?」
カフェの上、ターン2階から何かが暴れ、物が壊されガラスが破壊される様な騒音が鳴り響いてきた。
——ターン2階
1つ、昨日からずっと、ずっと抱えている疑問があった。
寄龍は体内にムカデを入れられ、そして両腕が再生していた、普通の人間では決して再生しない様な怪我が再生していた。
つまり、奇龍は既に人間を超えている、人間ではない、俺と同じく……いや、俺と同じであってほしい。
もし俺と違う、人間を超えた存在となっていたのだとしたら……それは、それはつまり……
害虫
「大丈夫か!?」
「大丈夫ではない!」
「旺夜! 旺夜あぁぁああ!」
2階、そこには俺の名を叫び暴れ狂う生依とその暴走を必死に止めようとする大牙の姿があった。
ベッドは中央からへし折られ、タンスは倒れ、中のグラスは全て砕かれていた。
「っ……落ち着け生依! 俺だ、旺夜、兜輝 旺夜がここにいるぞ!」
自分にしか気を許していない猛獣を諭す様に、自分の存在をアピールする。
「うらぁぁああ……あ……旺夜……旺夜!」
「あぁそうだ旺っ……はごぁ!」
生依は大牙を吹き飛ばし、そして俺に抱きついた。
砕かれた肋骨の破片が肉に、肺に、心臓に突き刺さる。
『すぐに治るだろうから安心しろよ』
それはつまり、俺が人間のままだとしたらここで、生依に殺されていたという事なのだろう……それだけは嫌だな……
人間か、そうじゃないか……
「……」
やはり、奇龍についてもう少し考えなければならない、このまま生依も交えて……いや駄目だ、生依はガイセクトを見たら本能的に殺そうとする、もし奇龍がガイセクトとなった可能性がある、そう知ったら駆除しようとするだろう。
そして俺も大牙も、生依を止める事は出来ない……もっとも、アーマードヘクスとなれば別だろうけどな。
「なぁ、生依、俺と大牙で買い出しに行ってくるからさ、留守番頼めるか?」
「私も行く……!」
そう、生依は俺と同じ事しかしない、それ以外の事は決してしない。
何か良い言い訳は……駄目だ、何も思い付かない。
仕方ない、生依が納得してくれる事に賭けよう。
生依は人間だ、話せば、心から頼めばきっと分かってくれる。
「なんというか……そうだ、奇龍の事を誰かが見てないといけないからさ」
「大牙が見てればいいじゃん」
確かに、全くの正論である。
どうしたものか、他に、他に何か……
あ、そうだ、1つだけあるじゃないか、俺がやるかどうかは関係なく、必ずする事があるじゃないか。
「実は今奇龍はセンチピードガイセクトに狙われていてな、だから買い出しの間にもし、ガイセクトが現れたら撃退してほしいんだよ!」
「分かった!」
生依は害虫駆除、それだけは絶対にする、決して止まらない。
「ちゃんと殺すから安心して買い出し行ってきてね!」
そう、元気良く言い、おもちゃ箱を漁る子供の様に武器入れを漁り出した。
「あぁ頑張れよ! ……行くぞ大牙」
「……あぁ」
大牙も本当に買い出しに行く訳では無いと、気が付いている様だった。
奇龍について、本当に本部に連絡をしなくていいのか、本当にこのまま放置でいいのか……もし、もし害虫に変貌、変態したらどうするのか、決めなければならない。
——海浜付近
俺と大牙は柵に体重をかけ、奇龍への対応について会話していた。
「奇龍の命をどうするか、なんて……俺達に決めていい事でも無いよな、普通なら……」
「普通ならな……」
今、奇龍は普通ではない、肉体は確実に、そして精神も普通ではなくなっているかもしれない。
だから俺達が決めなくてはならない。
奇龍の命を諦めるのかどうかを。
「自分が人間ではなくなる、ってどういう気持ち何だろうな」
「人間では……なくなる……」
揺れる波に反射した自分は、人間の、兜輝 旺夜の姿をしていた。
「……分からない」
自分でも分からない、余り人間でなくなったという実感が無いから。
ただそこまで嫌な気はしない、理性を保ったまま力を行使する事が出来るから。
「けど……」
でも、もし理性が消え、得た力を本能のままに放つ事になったとしたら……
「怖いだろうな」
「……そうだな」
奇龍は音鈴を失った、そんな彼が自分自身すら失ったとしたら……一体何が残るのだろうか。
俺、大牙、生依では音鈴の代わりになんてなれない、あの2人はどちらかが欠ければ再生不可になる、そんな危うい、共生をしていたんだ。
いや共生とは違うかもしれない、言い方は悪いが……あの関係性はそう、互いに依存し合っていた、互いが互いに寄生していた。
「なぁ旺夜、これは奇龍の件とは関係ないんだが……」
大牙はそう、疑問を共有しようと口を開く。
奇龍とは関係ない、そして奇龍の事と並ぶ様な事、というと1つしかない。
「カブトガイセクトの事か?」
カブトガイセクト、つまりアーマードヘクスの事だ。
「あぁそうだ……あのガイセクト、ガイセクトを駆除するガイセクト……」
「まぁ普通のガイセクトではないよな」
普通のガイセクトではない、王、ガイセクトの王……でも待てよ、王ならどうしてガイセクトと戦おうとするんだ?
どうして、何故俺に力を与えたんだ……?
一体何の為に、どんな目的があって……
「おい旺夜……!?」
「っ……悪い」
どうやら大牙の声も聞こえない程思考に陥っていたらしい。
「まぁ、害虫じゃなく益虫だったらいいな……」
「なっ……」
どうする、大牙にだけは俺がカブトガイセクト……アーマードヘクスであると伝えるか?
大牙の言った言葉の意味はつまり、アーマードヘクスが人類の味方をするというのであれば受け入れる、そういう事だ。
それなら、それだったら伝えてしまった方が……
『やめておけ、どうせバラされて終わる』
大牙の発言からしてバラさないはずだ、それに、それに大牙は仲間を売る様な事は……
『でも今、百脚 奇龍について報告するかで迷っているじゃないか』
「あ……」
『お前は本当に大牙がバラさないと、そしてもし大牙がアーマードだったとしてそれをバラさないと言えるのか?』
無理だ、確証なんてある訳がない。
「旺夜……?」
「……人類の味方だといいな、カブトガイセクト」
そう、誤魔化す様に、この話に無理矢理オチを付ける様に言った。
着信
「生依か……っどうかしたか?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「っ!?」
生依からの着信に応答した瞬間、スマホから泣き叫び、必死に謝る生依の声が響く。
その叫び声はまるで必死に、捨てられまいと喚き、騒ぐ子犬の様だった。
「ごめんなさいごめんなさ……」
「落ち着け! とりあえず1回落ち着いてくれ」
「っ……うん……」
生依の息を吸い、吐く音がスマホ越しに聞こえる。
「大丈夫か……?」
「もう落ち着いたから大丈夫……」
「とりあえず、何があったのか教えてくれ」
奇龍についての最悪の出来事が起こってしまったとして、生依が俺に謝る事にはならないはずだ。
「えっと……まだ昨日の疲れ抜けてなくて、それで寝たのね? それで、なんか、うるさくて起きたらさ……」
なんとなく、この情報だけで何が起こったのか理解した、最悪の出来事が起こったのだと理解してしまった。
「奇龍が居なくなってて、それで、それで……」
聞きたくない、聞かなければならないが聞きたくない、もう何を言うのか分かっているが聞きたくない、このままスマホを海に投げ捨ててしまいたい。
「ムカデが居た」
奇龍が居た、という意味にもなる。
その意味しか存在しない、他の意味の存在を願ってもそんな物は無い、無いから存在しないのだ。
「……そうか」
「私っ……私、旺夜に奇龍を狙うガイセクトを殺すって約束したのに! なのに奇龍が居なくなって……多分殺されて……それだけじゃなくて、それだけじゃなくて……ガイセクトを殺せなかった……負けた、負けて、負けちゃったぁぁ……! 旺夜と約束したのに旺夜が望んでたのに!」
生依は再び混乱し、錯乱した様に叫び出す。
「ぁぁぃぁぁあ! 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だよ! 私捨てられっ……!」
「っ大丈夫! 大丈夫だ、俺は生依を捨てたりしない! 悪かった、こんな事頼むべきじゃなかった、俺が、俺が悪い、だから生依は悪くない……!」
何としてでも落ち着かせなければ、そうしなければ今の生依は何をしでかすか分からない。
ブレーキの壊れた力、それ程恐ろしい物は他に存在しない。
「でも……」
「大丈夫、大丈夫だから今は寝てろ、まだ疲れが残ってるんだろ?」
「……うん」
「じゃあ切るからな、俺が帰ってくるまでじっとしてろよ……」
終話
「……大牙、今の会話聞いてたよな?」
「あぁ聞いてた、今すぐ奇龍を……」
大牙は言葉を詰まらせ、迷った様に視線を揺らし……そして覚悟を決めた様に俺の両目を見つめ、口を再び動かした。
「センチピードガイセクトを見つけ出すぞ」
「あぁ……見つけ出して……そして……」
殲滅する
——山奥、崩落寸前の洞穴
「はぁぁっ……ぁぐぁ……!」
僕、百脚 奇龍は自分の中から溢れ、暴れ出そうとする何かを抑えようと、必死にもがいていた。
一体何故こんな事になってしまったのだろうか。
一昨日までは皆でガイセクトを倒して、皆でご飯を食べて、皆で話して笑ったりして……音鈴と……音鈴と喧嘩して、仲直りして……そんな毎日だった。
「やっぱ日常ってのはぁ……崩れる時は一瞬なんだなぁ……!」
10年前もそうだった、長く続いた日常は一瞬にして崩れ落ち、二度と再生する事は無かった。
「10年前の……あの日より前の……日常……」
—回想—大樹公園
「だーかーら!」
「だからさぁ……」
その日もそう、音鈴と喧嘩していた。
公園の中央に設置された噴水、その音を掻き消す程の声量で音鈴は叫んでいた。
「私が隠れるってんじゃん!」
「お前変なとこ隠れるから危ないんだよ!」
そんなくだらない、どうでもよい事で喧嘩していた。
いや、音鈴は何の迷いも無しに他人の庭など誰かの敷地内、または公衆トイレの屋根の上などの高所に隠れるのでくだらない口論ではない、ないのだが傍から見ればただの子供の喧嘩、という事になるだろう。
「はぁ、仕方ないなぁ……」
音鈴が珍しく自分から折れ……
「決める前に隠れるしかないねこれは!」
……てなどいなかった。
「おい阿呆待て!」
「隠れる範囲は鎧巣町全体だよ!」
追いかけなければ、一昨日の様に音鈴が工場に隠れて僕まで叱りを受ける、なんと事になる前に捕まえなければならない。
「あっと……やべ……」
走り出そうとした時、うっかりポケットから小さな鈴を落としてしまう。
危うく踏み潰してしまうところだった。
「ん? 何それ何それ!」
「いや鈴だけど……見てわかるでしょ」
音鈴は駆け寄り、手のひらの上で太陽に照らされ輝く鈴を興奮した様に見つめる。
「綺麗……」
「……」
音鈴にも綺麗だと思った物に見惚れる様な、そんな……そんな女の子らしい1面があるのだと、初めて知った。
「……あげるよ」
「え!?」
「別に宝物って訳じゃないし」
「ホント!? 本当にくれるの!?」
そう、目を輝かせ、興奮して頬を赤らめる。
こう見ると……可愛いのかもしれない、顔見れば音鈴は美少女なのかもしれない。
「これやるから、だからさ、僕が隠れてもいい……?」
「いや私が隠れるよ」
当然だろ、と言う様な顔で平然と鈴を奪い取り走り去っていく。
「っ……この馬鹿野郎が!」
結局、音鈴は人混みに飛び込み、捕まえる事は不可能となってしまった。
「そして……」
そして、音鈴を発見する事が出来ないまま2日が経った。
音鈴の両親、先生、同級生、近所の方々、そして僕、全員が必死に、血眼になって捜したが見つけ出す事は出来なかった。
音鈴の家、学校、公園の敷地内、工場、山、鎧巣町の全てを捜索したが音鈴の姿はどこにも無かった。
遭難、誘拐……死亡。
「あっ……」
あそこかもしれない、音鈴が1番選びそうな場所と言ったらあそこだ……もう既に捜索されているかもしれない、だか、だか賭けるしかない、最後の希望に……
「あの洞穴に……!」
——山奥、回想の洞穴
「音鈴! っ音鈴!?」
小学生が数人入る程度の洞穴、僕は彼女の名を叫ぶ
「……」
声は虚しく響くだけ、返事は無かった。
「っ……ぁぁあ……!」
分からない、もう分からない。
ここに居ないならもう音鈴がどこに消えたのかは分からない。
音鈴が……生きてるかどうかも分から……
「っ!?!」
その時、音鈴の命さえも諦めようとした時の事だった。
音がしたんだ、音、鈴の音……コオロギの鳴き声にも聞こえる鈴の音が、洞穴の中に、微かに響き渡った。
「音鈴……音っ……」
分かった、ようやく分かった、音鈴がどこに隠れ、どこに閉じ込められたのか、理解した。
「今退かすからな!」
机として利用していた、倒れた岩を退かし、その下の割れた岩の破片を力任せに持ち上げ、投げ捨てる。
「き……りゅ……?」
「音鈴……!」
破片を退かし切るとそこには、全身に打撲傷を浮かべ、服に血を滲ませた音鈴の姿があった。
後から聞いた話、洞穴に隠れるだけでは見つかってしまう、そお考えた音鈴は地面の1部を砕き、その中に隠れ、破片で姿を隠そうとしたらしい。
だが偶然机代わりの岩が倒れ、中に閉じ込められ、口を破片に塞がれてしまい声も出せなくなっていた様だ。
だから、鈴が無ければ音鈴は誰にも見つけてもらえないまま死んでいたかもしれない。
だから、鈴は、音鈴にとっての……希望となった。
——山奥、現在の洞穴
「そういえばさぁ……音鈴……なぁ……ここの山さぁ……昔はもっと、もっと……自然豊かな、って言葉が似合う様な山、だったよなぁ……」
僕はそう、洞穴の入口から視界に映る、焼け切り緑の消えた山肌を長め、呟いた。
音鈴に、もう居ない誰かに語りかける様に呟いた。
——山、焼かれ、二度と再生しなくなった山
「特に相談無しにここまで来たが……旺夜、お前もここに寄龍がいると確信してるんだよな?」
「あぁ……奇龍と音鈴が1度話してくれたあの場所に、洞穴にいるはずだ……」
奇龍が音鈴を見つけ出した、洞穴にあいつはきっと居る。
たとえ人間でなくなったとしても……害虫に成り果ててしまったとしても……居るはずなんだ。
「……もう1ついいか」
大牙はそう、自分自身にも言う様に問いかける。
「奇龍を、いや……ガイセクトを殺せるよな……駆除、出来るよな……?」
「……出来なきゃ、俺は……俺自身を否定する事に……殺す事になるからな……」
これまでガイセクトを憎み、その存在全てを駆除しようとしてきた自分自身を……10年前のあの日から……10年前の……
「あ……カブトムシ」
「は?」
「っ……いや……なんでもない、行くぞ」
「……あぁ」
カブトムシ、アーマードヘクス……俺は10年前に出会っている……そして救われていた。
それじゃあつまり……俺の他にもヘクスと一体化した人間がいた、という事なのだろか……
いや、今はそんな事を考えている場合じゃない、今は……今やるべき事はただ1つ……
「ガイセクトを駆除する、それだけだ……」
——本部、司令室
「順調順調、兜輝 旺夜がアーマードヘクスになって、そして……そうだな」
無数のパソコンにより照らされた室内、黒い白衣で身を包んだ男……自称脚本家はアーマードヘクスの模型と、旺夜の顔写真を並べる。
「カブトムシと来たら、クワガタだよなぁ……」
そう言い、青と銀の腕輪を二双 大牙の顔写真に重ねた。
——山奥、崩落した洞穴
「完全に崩れてるな……」
「自然に崩壊したのか、それとも……」
ガイセクトが破壊した、思い出を、自分自身で崩した……再生不可能な程に壊した。
「行くぞ旺夜……ガイセクトをぶっ殺すぞ!」
「あぁ! 容赦なんてしない!」
危機出現
ムカデガイセクトが現れた、どこから現れたのかは分からない、視認する事が出来なかった。
そして……ムカデが現れた時、その直後……
「がっ……」
「カカカカカカァアァァ……!」
俺の胸には、大きな風穴が開き……肋骨も、肺も、心臓も消し飛んでいた。
「旺夜!?」
「あるらららぁぁぁあぁあ!?」
攻撃された……そう理解した直後、胸に痛みが走り、俺の身体は吹き飛ばされ山を転がり落ちていく。
「っ……このクソムシがぁぁぁあ!」
大牙は激昂し、ガイセクトを完全に敵であると認識し、そしてナイフの刃をムカデの胸に放った……が、当然の様に刃はムカデに傷1つ付けずに砕け散った。
「っぁぁ……! おらぁああぁあ!」
「ひ ンじゃ くナゴ みィィ……」
「ちくしょうめ……!」
ムカデはヤケクソになって放たれた右拳をものともせず、嘲笑う様に……ぎこちなく発音した。
「いつ もぅドーりにニ……」
ムカデは中指から右手を開き、その中からムカデを模したムチの様な物を出す。
そのムチは奇龍と音鈴がお揃いで使っていたムチと全く同じ形状をしていた。
「は……はは……」
思わず笑い声が出てしまった、兜輝 旺夜が死に、そしてこれからかつての仲間に殺される。
あまりの絶望、そして恐怖に心を押し潰され笑ってしまう。
壊れかけの心が、己を守ろうと笑い声を漏らさせている。
「くっクくじぃよ!」
ムチが振り下ろされる、これまで幾多の害虫を駆除してきたムチが……人間を駆除する……その直前。
「さっきの仕返しだぁぁあぁああ!」
「びぁるぁああぁ!」
「っ!?」
背後から現れ、跳び上がったアーマードヘクスの右足がムカデを蹴り飛ばした。
ムカデは転がり落ちてしまう前に左腕を地面に突き刺し、勢いを殺す。
「っ……と」
『躊躇するなよ、あれはもう百脚 奇龍ではない、ただのガイセクトだ』
「分かってる……」
そんな事は分かっている、そしてその上であれは奇龍の身体、かつて奇龍だった物だと考えてしまう。
だから、だから……
「理性を飛ばしてハイになる……!」
何も考えず、ただ目の前の敵を……!
「ぶっ殺す為になぁぁぁぁあぁぁあ!」
「びがぁぁっ……!」
咆哮と共に跳び、体勢を整えたムカデの頭を蹴り落とす。
「まだまだ行くぜぇえ!」
「びごっ……がぃああ!?」
着地した瞬間に回し蹴りを放ち、回転させられるムカデの胴体を殴り飛ばす。
「カブトムシの寄生虫対ムカデの寄生虫って感じだなぁぁあ!」
これでいい、これでいいんだ。
何も考えず……衝動的になれ……!
心をめちゃくちゃに……!
『考えないようにして、結果考えてるぞ』
「っ……うるせぇ!」
脳内に響く声と思考回路振り払う様にして叫び、右拳を握り締めて立ち上がったムカデに向かい駆け出す。
「行くぞヘクス! 必殺技だ!」
『いいだろう……!』
アーマードヘクスの全身から赤く、燃える様に輝く粒子を放ち……右拳の一点に集中させる。
「びがぁぁああ!?」
『ヘクスターミネート!』
「死にやがれぇええぇぇえ!」
ムカデの目の前に立ち、そして右拳をムカデの頭部に向かい放つ。
かつての仲間を殺す為に、自分自身の心を壊す為に、鮮血色に輝く右拳を放った……
「っ……」
結局、殺す事も壊す事も出来なかった。
アーマードヘクスの……俺の右拳はムカデに届かず、目の前で止まった……俺が止めてしまった。
「無理だ……」
「っ……びるがぁぁぁあ!」
「ぐがっ!」
助かった、そう理解したムカデは右腕を振り上げ俺の身体を吹き飛ばし、そして逃亡する。
『躊躇するな、そう言ったはずだ……』
「黙れ……黙れよ……!」
無理に決まっている、俺は昨日までは人間だったんだ……かつての仲間の命を奪うなんて、心までも人間でなくす、なんて出来る訳がない。
「俺は……!」
そう、土を握り締め声を締め殺していた時の事だった。
「おいそこのガイセクト! お前……」
警戒する様に大牙が声をかけてきた、その声は俺に……害虫に向けられた物だった。
「……」
「待て!」
無言で大牙に背を向け、走り出した。
俺は一体なんだ? 人間か? ガイセクトか? それともそのどちらでもないのか……?
『お前はアーマードだ』
「じゃあそのアーマードってなんなんだよ……俺は……俺は何になったんだよ……」
——廃ビル、その屋上
「っ……どこに行った……!」
俺は、二双 大牙はカブトムシの姿を探し街の中を奔走していた。
「くそが……完全に見失っ……!」
屋上からの視界に映る裏路地、そこにカブトムシの姿を見つける。
「……」
ここで見ていれば何か分かるかもしれない、何か、何か正体の様な物を……!
カブトムシは全身を輝かせ、鎧を粒子に分解させていく。
粒子はビル風に乗り、そして……
「なっ!?」
現れた、カブトムシの立っていた場所に兜輝 旺夜が……俺の仲間が現れた。
つまり、これはつまり……この状況が意味するのは……
「カブトガイセクトの正体……いや、旺夜の正体がカブトガイセクト……」
兜輝 旺夜は人間ではなく、害虫である……という事だった。
鎧巣町を緑の炎が、ガイセクトが襲う。
その炎の中、害虫の中を僕は、僕達は走り、逃げ惑っていた。
「ねぇ奇龍! もう私っ……足が……!」
「弱音吐くなアホ! 止まったら絶対に死ぬ!」
立ち止まれば落ちてきた瓦礫に潰されるかもしれない、立ち止まれば害虫に襲われ、そして死んでしまうかもしれない。
だから走る、走らなくてはならない。
「何も考えず走れよ……!」
そう言いながらも分かっていた、走っても死ぬかもしれない、そんな事は分かっていた。
だけど走らないと助からない、だから走る。
そして音鈴がその事に気が付かない様に、そんな事を考える余裕を与えない様に手を引っ張る、無理矢理走らせる。
「あっ!」
「どうした!?」
音鈴が突然声を出し、僕の手を逆に引っ張り後方に向かい走り出した。
何故、一体何故音鈴が進行方向を変えたのか、その答えは一瞬で見つかった。
黄色い光、炎の中、地面に浮かぶ光、その光は、1つの小さな鈴だった。
「おいやめろ! あんな鈴っ……」
「あんなって何よ!」
「っ……」
僕の手を振りほどき、鈴に向かって駆け出す。
あの鈴は、あの光は、音鈴にとっての希望だ、決して捨てる事が出来ない物、だから命を掛けてでも取り戻さなければならない物だった。
「はぁ、仕方ないなぁ……!」
どうせ止めても拾おうとするだろうから、どうせ止めてももう遅いから。
だから、僕はせめてでもの事をする。
「ほら、貸してみろ」
しゃがみ、鈴を拾った音鈴の元へ駆け寄り、鈴を受け取り、そして紐を通し、ネックレスの様にして首にかける。
もう決して落とさないように、音鈴と鈴を繋ぎ止める。
「さっきはあんな鈴とか言って悪かったよ……ごめん……」
「……いいよ別に、命に比べたら軽い物なのは当然だし」
いつも通り、街が炎に包まれ、害虫に襲われようとも、結局はいつも通りの流れだった。
僕か音鈴、今回の場合は僕が失言をして、そして音鈴が怒って、僕が謝ってそれで終わり、そんな、そんないつも通りの流れだった、いつもの、日常の一コマだった。
「キルルル……」
「っ!?」
コオロギの鳴き声の様な音が聞こえ、慌てて瓦礫の下の隙間に潜り込む。
息を殺し、動きを止め、絶対に物音を立てないようにする。
物音を微かにでも立ててしまえば死ぬ、絶対に殺される、息を殺して、虫に殺される事を回避しなければならない。
息を殺せず虫に殺され、虫の息にされる、なんてしょうもない事を考えてしまった。
人間というのは本当に追い詰められた時は、逆に余裕になってしまうのかもしれない、心を壊さない為にそういう仕組みになっているのかもしれない。
「キルルゥ」
瓦礫の隙間から黒い足が、コオロギの足が見える。
ゆっくりと、人間を、殺害対象を探す様に歩を進める。
その時、コオロギが過ぎ去るのを待っていた時の事だった。
鈴が鳴った、コオロギの鳴き声の様な、そんな音が鳴ってしまった。
瓦礫の隙間から外へと、鈴の音は漏れ出してしまった。
死
そんな文字が頭に浮かぶ、抗いようのない死を覚悟してしまった。
音鈴を救わなければ、音鈴を、音鈴だけでも、たとえ僕が死んだとしても、僕が終わったとしても、音鈴は救わなければならない。
音鈴を救うにはどうすればいい、音鈴を守る為に僕は何が出来る。
僕に、僕に何が出来る?
そう、自問し、答えを求めていた時だった。
「キル……」
コオロギのかかとがこちらを向き、離れていく。
それからどれだけ経ったのかは分からない、ガイセクトが姿を消した頃、僕達は保護されたのだった。
何故コオロギが立ち去ったのかは分からない、分からないがきっと鈴の、希望のおかげなんだろう。
だから僕達は助かった、そして助かり続ける、鈴がある限り。
そう、思い込んでいただけだった。
結局音鈴は死んだ、コオロギによって、そう、つまり、音鈴は10年越しに殺されたのだった。
——ターン店前
「アーマード……」
アーマードヘクス、それが俺とカブトムシ……ヘクスが一体化し、変貌、変態した鎧の名前。
ヘクスが人間に装甲する、だからアーマードヘクス。
「ガイセクトにもちゃんとしたネーミングを考えられるんだな」
『俺を一般ガイセクト共と同じにするな!』
一般ガイセクトと同じにするな、それはつまりヘクスもガイセクトではある、という事なんだろう。
人間と一体化出来るガイセクト。
通常型、寄生型、擬態型とはまた違う、特殊なガイセクト。
『俺は王! ガイセクトの王だ! 一般ガイセクトとは訳が違う!』
「王? ガイセクトの王って何だ?」
『あっ!』
こいつ……さては墓穴を掘ったな。
それも特に重要そうな情報を、勢いに任せ、口を滑らせ言ってしまったらしい。
『い、いや違う、違う! 王じゃなくてあの……』
「あんま喋んなまた墓穴掘るぞ、王の事は今は気にしないでやるから」
出来るだけヘクスとは良い関係を築きたいからな。
そして1つ分かった事がある、この1分にも満たない会話の中で、簡単に分かってしまった事がある。
ヘクスは馬鹿だ。
『俺は馬鹿じゃない! 何故なら誰よりも強いからな!』
その発言がもう馬鹿だ、馬鹿の発言だ。
『何が馬鹿の発言っ……』
「お前がどんな奴か何となく把握出来たしターンに戻るか」
騒ぎ、喚くヘクスの声をシャットアウトした、した時の事だった。
「なんだ!?」
カフェの上、ターン2階から何かが暴れ、物が壊されガラスが破壊される様な騒音が鳴り響いてきた。
——ターン2階
1つ、昨日からずっと、ずっと抱えている疑問があった。
寄龍は体内にムカデを入れられ、そして両腕が再生していた、普通の人間では決して再生しない様な怪我が再生していた。
つまり、奇龍は既に人間を超えている、人間ではない、俺と同じく……いや、俺と同じであってほしい。
もし俺と違う、人間を超えた存在となっていたのだとしたら……それは、それはつまり……
害虫
「大丈夫か!?」
「大丈夫ではない!」
「旺夜! 旺夜あぁぁああ!」
2階、そこには俺の名を叫び暴れ狂う生依とその暴走を必死に止めようとする大牙の姿があった。
ベッドは中央からへし折られ、タンスは倒れ、中のグラスは全て砕かれていた。
「っ……落ち着け生依! 俺だ、旺夜、兜輝 旺夜がここにいるぞ!」
自分にしか気を許していない猛獣を諭す様に、自分の存在をアピールする。
「うらぁぁああ……あ……旺夜……旺夜!」
「あぁそうだ旺っ……はごぁ!」
生依は大牙を吹き飛ばし、そして俺に抱きついた。
砕かれた肋骨の破片が肉に、肺に、心臓に突き刺さる。
『すぐに治るだろうから安心しろよ』
それはつまり、俺が人間のままだとしたらここで、生依に殺されていたという事なのだろう……それだけは嫌だな……
人間か、そうじゃないか……
「……」
やはり、奇龍についてもう少し考えなければならない、このまま生依も交えて……いや駄目だ、生依はガイセクトを見たら本能的に殺そうとする、もし奇龍がガイセクトとなった可能性がある、そう知ったら駆除しようとするだろう。
そして俺も大牙も、生依を止める事は出来ない……もっとも、アーマードヘクスとなれば別だろうけどな。
「なぁ、生依、俺と大牙で買い出しに行ってくるからさ、留守番頼めるか?」
「私も行く……!」
そう、生依は俺と同じ事しかしない、それ以外の事は決してしない。
何か良い言い訳は……駄目だ、何も思い付かない。
仕方ない、生依が納得してくれる事に賭けよう。
生依は人間だ、話せば、心から頼めばきっと分かってくれる。
「なんというか……そうだ、奇龍の事を誰かが見てないといけないからさ」
「大牙が見てればいいじゃん」
確かに、全くの正論である。
どうしたものか、他に、他に何か……
あ、そうだ、1つだけあるじゃないか、俺がやるかどうかは関係なく、必ずする事があるじゃないか。
「実は今奇龍はセンチピードガイセクトに狙われていてな、だから買い出しの間にもし、ガイセクトが現れたら撃退してほしいんだよ!」
「分かった!」
生依は害虫駆除、それだけは絶対にする、決して止まらない。
「ちゃんと殺すから安心して買い出し行ってきてね!」
そう、元気良く言い、おもちゃ箱を漁る子供の様に武器入れを漁り出した。
「あぁ頑張れよ! ……行くぞ大牙」
「……あぁ」
大牙も本当に買い出しに行く訳では無いと、気が付いている様だった。
奇龍について、本当に本部に連絡をしなくていいのか、本当にこのまま放置でいいのか……もし、もし害虫に変貌、変態したらどうするのか、決めなければならない。
——海浜付近
俺と大牙は柵に体重をかけ、奇龍への対応について会話していた。
「奇龍の命をどうするか、なんて……俺達に決めていい事でも無いよな、普通なら……」
「普通ならな……」
今、奇龍は普通ではない、肉体は確実に、そして精神も普通ではなくなっているかもしれない。
だから俺達が決めなくてはならない。
奇龍の命を諦めるのかどうかを。
「自分が人間ではなくなる、ってどういう気持ち何だろうな」
「人間では……なくなる……」
揺れる波に反射した自分は、人間の、兜輝 旺夜の姿をしていた。
「……分からない」
自分でも分からない、余り人間でなくなったという実感が無いから。
ただそこまで嫌な気はしない、理性を保ったまま力を行使する事が出来るから。
「けど……」
でも、もし理性が消え、得た力を本能のままに放つ事になったとしたら……
「怖いだろうな」
「……そうだな」
奇龍は音鈴を失った、そんな彼が自分自身すら失ったとしたら……一体何が残るのだろうか。
俺、大牙、生依では音鈴の代わりになんてなれない、あの2人はどちらかが欠ければ再生不可になる、そんな危うい、共生をしていたんだ。
いや共生とは違うかもしれない、言い方は悪いが……あの関係性はそう、互いに依存し合っていた、互いが互いに寄生していた。
「なぁ旺夜、これは奇龍の件とは関係ないんだが……」
大牙はそう、疑問を共有しようと口を開く。
奇龍とは関係ない、そして奇龍の事と並ぶ様な事、というと1つしかない。
「カブトガイセクトの事か?」
カブトガイセクト、つまりアーマードヘクスの事だ。
「あぁそうだ……あのガイセクト、ガイセクトを駆除するガイセクト……」
「まぁ普通のガイセクトではないよな」
普通のガイセクトではない、王、ガイセクトの王……でも待てよ、王ならどうしてガイセクトと戦おうとするんだ?
どうして、何故俺に力を与えたんだ……?
一体何の為に、どんな目的があって……
「おい旺夜……!?」
「っ……悪い」
どうやら大牙の声も聞こえない程思考に陥っていたらしい。
「まぁ、害虫じゃなく益虫だったらいいな……」
「なっ……」
どうする、大牙にだけは俺がカブトガイセクト……アーマードヘクスであると伝えるか?
大牙の言った言葉の意味はつまり、アーマードヘクスが人類の味方をするというのであれば受け入れる、そういう事だ。
それなら、それだったら伝えてしまった方が……
『やめておけ、どうせバラされて終わる』
大牙の発言からしてバラさないはずだ、それに、それに大牙は仲間を売る様な事は……
『でも今、百脚 奇龍について報告するかで迷っているじゃないか』
「あ……」
『お前は本当に大牙がバラさないと、そしてもし大牙がアーマードだったとしてそれをバラさないと言えるのか?』
無理だ、確証なんてある訳がない。
「旺夜……?」
「……人類の味方だといいな、カブトガイセクト」
そう、誤魔化す様に、この話に無理矢理オチを付ける様に言った。
着信
「生依か……っどうかしたか?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「っ!?」
生依からの着信に応答した瞬間、スマホから泣き叫び、必死に謝る生依の声が響く。
その叫び声はまるで必死に、捨てられまいと喚き、騒ぐ子犬の様だった。
「ごめんなさいごめんなさ……」
「落ち着け! とりあえず1回落ち着いてくれ」
「っ……うん……」
生依の息を吸い、吐く音がスマホ越しに聞こえる。
「大丈夫か……?」
「もう落ち着いたから大丈夫……」
「とりあえず、何があったのか教えてくれ」
奇龍についての最悪の出来事が起こってしまったとして、生依が俺に謝る事にはならないはずだ。
「えっと……まだ昨日の疲れ抜けてなくて、それで寝たのね? それで、なんか、うるさくて起きたらさ……」
なんとなく、この情報だけで何が起こったのか理解した、最悪の出来事が起こったのだと理解してしまった。
「奇龍が居なくなってて、それで、それで……」
聞きたくない、聞かなければならないが聞きたくない、もう何を言うのか分かっているが聞きたくない、このままスマホを海に投げ捨ててしまいたい。
「ムカデが居た」
奇龍が居た、という意味にもなる。
その意味しか存在しない、他の意味の存在を願ってもそんな物は無い、無いから存在しないのだ。
「……そうか」
「私っ……私、旺夜に奇龍を狙うガイセクトを殺すって約束したのに! なのに奇龍が居なくなって……多分殺されて……それだけじゃなくて、それだけじゃなくて……ガイセクトを殺せなかった……負けた、負けて、負けちゃったぁぁ……! 旺夜と約束したのに旺夜が望んでたのに!」
生依は再び混乱し、錯乱した様に叫び出す。
「ぁぁぃぁぁあ! 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だよ! 私捨てられっ……!」
「っ大丈夫! 大丈夫だ、俺は生依を捨てたりしない! 悪かった、こんな事頼むべきじゃなかった、俺が、俺が悪い、だから生依は悪くない……!」
何としてでも落ち着かせなければ、そうしなければ今の生依は何をしでかすか分からない。
ブレーキの壊れた力、それ程恐ろしい物は他に存在しない。
「でも……」
「大丈夫、大丈夫だから今は寝てろ、まだ疲れが残ってるんだろ?」
「……うん」
「じゃあ切るからな、俺が帰ってくるまでじっとしてろよ……」
終話
「……大牙、今の会話聞いてたよな?」
「あぁ聞いてた、今すぐ奇龍を……」
大牙は言葉を詰まらせ、迷った様に視線を揺らし……そして覚悟を決めた様に俺の両目を見つめ、口を再び動かした。
「センチピードガイセクトを見つけ出すぞ」
「あぁ……見つけ出して……そして……」
殲滅する
——山奥、崩落寸前の洞穴
「はぁぁっ……ぁぐぁ……!」
僕、百脚 奇龍は自分の中から溢れ、暴れ出そうとする何かを抑えようと、必死にもがいていた。
一体何故こんな事になってしまったのだろうか。
一昨日までは皆でガイセクトを倒して、皆でご飯を食べて、皆で話して笑ったりして……音鈴と……音鈴と喧嘩して、仲直りして……そんな毎日だった。
「やっぱ日常ってのはぁ……崩れる時は一瞬なんだなぁ……!」
10年前もそうだった、長く続いた日常は一瞬にして崩れ落ち、二度と再生する事は無かった。
「10年前の……あの日より前の……日常……」
—回想—大樹公園
「だーかーら!」
「だからさぁ……」
その日もそう、音鈴と喧嘩していた。
公園の中央に設置された噴水、その音を掻き消す程の声量で音鈴は叫んでいた。
「私が隠れるってんじゃん!」
「お前変なとこ隠れるから危ないんだよ!」
そんなくだらない、どうでもよい事で喧嘩していた。
いや、音鈴は何の迷いも無しに他人の庭など誰かの敷地内、または公衆トイレの屋根の上などの高所に隠れるのでくだらない口論ではない、ないのだが傍から見ればただの子供の喧嘩、という事になるだろう。
「はぁ、仕方ないなぁ……」
音鈴が珍しく自分から折れ……
「決める前に隠れるしかないねこれは!」
……てなどいなかった。
「おい阿呆待て!」
「隠れる範囲は鎧巣町全体だよ!」
追いかけなければ、一昨日の様に音鈴が工場に隠れて僕まで叱りを受ける、なんと事になる前に捕まえなければならない。
「あっと……やべ……」
走り出そうとした時、うっかりポケットから小さな鈴を落としてしまう。
危うく踏み潰してしまうところだった。
「ん? 何それ何それ!」
「いや鈴だけど……見てわかるでしょ」
音鈴は駆け寄り、手のひらの上で太陽に照らされ輝く鈴を興奮した様に見つめる。
「綺麗……」
「……」
音鈴にも綺麗だと思った物に見惚れる様な、そんな……そんな女の子らしい1面があるのだと、初めて知った。
「……あげるよ」
「え!?」
「別に宝物って訳じゃないし」
「ホント!? 本当にくれるの!?」
そう、目を輝かせ、興奮して頬を赤らめる。
こう見ると……可愛いのかもしれない、顔見れば音鈴は美少女なのかもしれない。
「これやるから、だからさ、僕が隠れてもいい……?」
「いや私が隠れるよ」
当然だろ、と言う様な顔で平然と鈴を奪い取り走り去っていく。
「っ……この馬鹿野郎が!」
結局、音鈴は人混みに飛び込み、捕まえる事は不可能となってしまった。
「そして……」
そして、音鈴を発見する事が出来ないまま2日が経った。
音鈴の両親、先生、同級生、近所の方々、そして僕、全員が必死に、血眼になって捜したが見つけ出す事は出来なかった。
音鈴の家、学校、公園の敷地内、工場、山、鎧巣町の全てを捜索したが音鈴の姿はどこにも無かった。
遭難、誘拐……死亡。
「あっ……」
あそこかもしれない、音鈴が1番選びそうな場所と言ったらあそこだ……もう既に捜索されているかもしれない、だか、だか賭けるしかない、最後の希望に……
「あの洞穴に……!」
——山奥、回想の洞穴
「音鈴! っ音鈴!?」
小学生が数人入る程度の洞穴、僕は彼女の名を叫ぶ
「……」
声は虚しく響くだけ、返事は無かった。
「っ……ぁぁあ……!」
分からない、もう分からない。
ここに居ないならもう音鈴がどこに消えたのかは分からない。
音鈴が……生きてるかどうかも分から……
「っ!?!」
その時、音鈴の命さえも諦めようとした時の事だった。
音がしたんだ、音、鈴の音……コオロギの鳴き声にも聞こえる鈴の音が、洞穴の中に、微かに響き渡った。
「音鈴……音っ……」
分かった、ようやく分かった、音鈴がどこに隠れ、どこに閉じ込められたのか、理解した。
「今退かすからな!」
机として利用していた、倒れた岩を退かし、その下の割れた岩の破片を力任せに持ち上げ、投げ捨てる。
「き……りゅ……?」
「音鈴……!」
破片を退かし切るとそこには、全身に打撲傷を浮かべ、服に血を滲ませた音鈴の姿があった。
後から聞いた話、洞穴に隠れるだけでは見つかってしまう、そお考えた音鈴は地面の1部を砕き、その中に隠れ、破片で姿を隠そうとしたらしい。
だが偶然机代わりの岩が倒れ、中に閉じ込められ、口を破片に塞がれてしまい声も出せなくなっていた様だ。
だから、鈴が無ければ音鈴は誰にも見つけてもらえないまま死んでいたかもしれない。
だから、鈴は、音鈴にとっての……希望となった。
——山奥、現在の洞穴
「そういえばさぁ……音鈴……なぁ……ここの山さぁ……昔はもっと、もっと……自然豊かな、って言葉が似合う様な山、だったよなぁ……」
僕はそう、洞穴の入口から視界に映る、焼け切り緑の消えた山肌を長め、呟いた。
音鈴に、もう居ない誰かに語りかける様に呟いた。
——山、焼かれ、二度と再生しなくなった山
「特に相談無しにここまで来たが……旺夜、お前もここに寄龍がいると確信してるんだよな?」
「あぁ……奇龍と音鈴が1度話してくれたあの場所に、洞穴にいるはずだ……」
奇龍が音鈴を見つけ出した、洞穴にあいつはきっと居る。
たとえ人間でなくなったとしても……害虫に成り果ててしまったとしても……居るはずなんだ。
「……もう1ついいか」
大牙はそう、自分自身にも言う様に問いかける。
「奇龍を、いや……ガイセクトを殺せるよな……駆除、出来るよな……?」
「……出来なきゃ、俺は……俺自身を否定する事に……殺す事になるからな……」
これまでガイセクトを憎み、その存在全てを駆除しようとしてきた自分自身を……10年前のあの日から……10年前の……
「あ……カブトムシ」
「は?」
「っ……いや……なんでもない、行くぞ」
「……あぁ」
カブトムシ、アーマードヘクス……俺は10年前に出会っている……そして救われていた。
それじゃあつまり……俺の他にもヘクスと一体化した人間がいた、という事なのだろか……
いや、今はそんな事を考えている場合じゃない、今は……今やるべき事はただ1つ……
「ガイセクトを駆除する、それだけだ……」
——本部、司令室
「順調順調、兜輝 旺夜がアーマードヘクスになって、そして……そうだな」
無数のパソコンにより照らされた室内、黒い白衣で身を包んだ男……自称脚本家はアーマードヘクスの模型と、旺夜の顔写真を並べる。
「カブトムシと来たら、クワガタだよなぁ……」
そう言い、青と銀の腕輪を二双 大牙の顔写真に重ねた。
——山奥、崩落した洞穴
「完全に崩れてるな……」
「自然に崩壊したのか、それとも……」
ガイセクトが破壊した、思い出を、自分自身で崩した……再生不可能な程に壊した。
「行くぞ旺夜……ガイセクトをぶっ殺すぞ!」
「あぁ! 容赦なんてしない!」
危機出現
ムカデガイセクトが現れた、どこから現れたのかは分からない、視認する事が出来なかった。
そして……ムカデが現れた時、その直後……
「がっ……」
「カカカカカカァアァァ……!」
俺の胸には、大きな風穴が開き……肋骨も、肺も、心臓も消し飛んでいた。
「旺夜!?」
「あるらららぁぁぁあぁあ!?」
攻撃された……そう理解した直後、胸に痛みが走り、俺の身体は吹き飛ばされ山を転がり落ちていく。
「っ……このクソムシがぁぁぁあ!」
大牙は激昂し、ガイセクトを完全に敵であると認識し、そしてナイフの刃をムカデの胸に放った……が、当然の様に刃はムカデに傷1つ付けずに砕け散った。
「っぁぁ……! おらぁああぁあ!」
「ひ ンじゃ くナゴ みィィ……」
「ちくしょうめ……!」
ムカデはヤケクソになって放たれた右拳をものともせず、嘲笑う様に……ぎこちなく発音した。
「いつ もぅドーりにニ……」
ムカデは中指から右手を開き、その中からムカデを模したムチの様な物を出す。
そのムチは奇龍と音鈴がお揃いで使っていたムチと全く同じ形状をしていた。
「は……はは……」
思わず笑い声が出てしまった、兜輝 旺夜が死に、そしてこれからかつての仲間に殺される。
あまりの絶望、そして恐怖に心を押し潰され笑ってしまう。
壊れかけの心が、己を守ろうと笑い声を漏らさせている。
「くっクくじぃよ!」
ムチが振り下ろされる、これまで幾多の害虫を駆除してきたムチが……人間を駆除する……その直前。
「さっきの仕返しだぁぁあぁああ!」
「びぁるぁああぁ!」
「っ!?」
背後から現れ、跳び上がったアーマードヘクスの右足がムカデを蹴り飛ばした。
ムカデは転がり落ちてしまう前に左腕を地面に突き刺し、勢いを殺す。
「っ……と」
『躊躇するなよ、あれはもう百脚 奇龍ではない、ただのガイセクトだ』
「分かってる……」
そんな事は分かっている、そしてその上であれは奇龍の身体、かつて奇龍だった物だと考えてしまう。
だから、だから……
「理性を飛ばしてハイになる……!」
何も考えず、ただ目の前の敵を……!
「ぶっ殺す為になぁぁぁぁあぁぁあ!」
「びがぁぁっ……!」
咆哮と共に跳び、体勢を整えたムカデの頭を蹴り落とす。
「まだまだ行くぜぇえ!」
「びごっ……がぃああ!?」
着地した瞬間に回し蹴りを放ち、回転させられるムカデの胴体を殴り飛ばす。
「カブトムシの寄生虫対ムカデの寄生虫って感じだなぁぁあ!」
これでいい、これでいいんだ。
何も考えず……衝動的になれ……!
心をめちゃくちゃに……!
『考えないようにして、結果考えてるぞ』
「っ……うるせぇ!」
脳内に響く声と思考回路振り払う様にして叫び、右拳を握り締めて立ち上がったムカデに向かい駆け出す。
「行くぞヘクス! 必殺技だ!」
『いいだろう……!』
アーマードヘクスの全身から赤く、燃える様に輝く粒子を放ち……右拳の一点に集中させる。
「びがぁぁああ!?」
『ヘクスターミネート!』
「死にやがれぇええぇぇえ!」
ムカデの目の前に立ち、そして右拳をムカデの頭部に向かい放つ。
かつての仲間を殺す為に、自分自身の心を壊す為に、鮮血色に輝く右拳を放った……
「っ……」
結局、殺す事も壊す事も出来なかった。
アーマードヘクスの……俺の右拳はムカデに届かず、目の前で止まった……俺が止めてしまった。
「無理だ……」
「っ……びるがぁぁぁあ!」
「ぐがっ!」
助かった、そう理解したムカデは右腕を振り上げ俺の身体を吹き飛ばし、そして逃亡する。
『躊躇するな、そう言ったはずだ……』
「黙れ……黙れよ……!」
無理に決まっている、俺は昨日までは人間だったんだ……かつての仲間の命を奪うなんて、心までも人間でなくす、なんて出来る訳がない。
「俺は……!」
そう、土を握り締め声を締め殺していた時の事だった。
「おいそこのガイセクト! お前……」
警戒する様に大牙が声をかけてきた、その声は俺に……害虫に向けられた物だった。
「……」
「待て!」
無言で大牙に背を向け、走り出した。
俺は一体なんだ? 人間か? ガイセクトか? それともそのどちらでもないのか……?
『お前はアーマードだ』
「じゃあそのアーマードってなんなんだよ……俺は……俺は何になったんだよ……」
——廃ビル、その屋上
「っ……どこに行った……!」
俺は、二双 大牙はカブトムシの姿を探し街の中を奔走していた。
「くそが……完全に見失っ……!」
屋上からの視界に映る裏路地、そこにカブトムシの姿を見つける。
「……」
ここで見ていれば何か分かるかもしれない、何か、何か正体の様な物を……!
カブトムシは全身を輝かせ、鎧を粒子に分解させていく。
粒子はビル風に乗り、そして……
「なっ!?」
現れた、カブトムシの立っていた場所に兜輝 旺夜が……俺の仲間が現れた。
つまり、これはつまり……この状況が意味するのは……
「カブトガイセクトの正体……いや、旺夜の正体がカブトガイセクト……」
兜輝 旺夜は人間ではなく、害虫である……という事だった。
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