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かわいい子には旅をさせよ
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大きな光と、大きな衝撃。
動かない足、落ちゆく意識の中その声は聞こえた。
”かわいい、かわいい私のレディ……約束の時間よ、さぁ夢から覚める準備は出来たかしら…”
光差すような言葉の音色、それの瞬間自分がナニであったのかを思い出した。
”あぁ……お迎えに来ていただけたのですね”
「ある、じさま……今、お傍に…」
そんな彼女の呟きは周りの喧騒に飲み込まれ、
※※
人魚に憧れた少女はやがて成長し、社会という名の水槽へ閉じ込められたアラサーOLへと成長した。
日々怒鳴り散らかす上司、うっぷん晴らしのクレーム電話。
そんな平凡な毎日を過ごす彼女、玲子は帰宅途中事故に巻き込まれてしまう。
感覚のない身体と落ちゆく意識の中、聞こえた声に彼女は答えた。
"かわいい、かわいいレディ…夢から覚める準備は出来たかしら?”
聞こえた声、思い出した魂の記録。
”あぁ、私の主様ッ”
これは優しい魔女と、出戻り使い魔との物語。
ではありませんでした。
『主様ッ、あのアホ鳥今日の夕食にしましょう!!』
「駄目よぉ~、あの子も同じ使い魔なんだからお肉にはならないわよぉ」
バサバサと大き 羽ばたきと共に舞い散る羽、大きな鳥が黒く優しい魔女の傍らへと降り立った。
出戻った先には百年前にはいなかったはずの鷲、契約した魔女には別の使い魔がいました。
※※
"主人様ッ、あのアホ鳥どうにかしてください!!"
静かな森の泉のほとりに建つ一軒家、その家にはいくつもの水槽があり、光差しこむ寝室の窓辺にはバチャバチャと波打つ水槽があった。
「メイ、貴女朝から元気ねぇ……」
部屋の主である魔女、レイラはベットから身体を起こし水槽で元気に飛び跳ねる1匹の金魚の様なそれよりも長く青から銀へと変わる優雅な尾びれもを持った魚へと声をかけた。
"主人様、おはようございます! いえ、その元気とかではなく兎に角あのアホ鷲を私の泉に近寄らせないでください"
魚は何かを訴えるかのごとく、バチャバチャと飛び跳ねる。
「メイ、メイ…メイヴィス分かったから、とりあえず落ち着いて、ちゃんと心言で聞こえてるわ。それにこのままじゃベットが水浸しになってしまうわ、一体今度はルーが何をしたの?」
レイラは飛び跳ねる魚、メイのいる水槽へと近づき、そっと話しかけた。
"あの鳥私が寝てる隙にこの艶やかで、繊細な鱗を鷲掴んだだけでなく捕まえて食べようとしやがったんです!! しかも結局鳥目で目測誤って巣の手前で落とすし、アイツの爪のせいで鱗が一枚禿げました!"
「あらあら、それは可哀想に…その胸ビレの横ね、ルーちゃんには女の子を傷つけたお仕置きが必要ね」
痛ましげな声をメイへと向け、レイラは窓をあげて指笛を吹いた。
ピィィーーー
澄み切った森の空気の中、窓へと向かってくる1匹の大鷲のような鳥。
その鳥は窓辺に近づき大きく羽ばたき、水槽の水面を揺らしながら窓辺に優雅に止まった。
"主、何の御用でしょうか"
「ルーちゃん、貴女またメイに意地悪したわね。泉はメイのお部屋なんだから、レディのお部屋に許可なく入るものじゃなくてよ!」
ビシッと風を切るように大鷲に向かって指を指し、レイラは言い放った。
"主人様、私の訴えたいことはそういう事ではないのですが……"
そんなレイラの言葉に、水槽からはどこか呆れかけた空気が漂う。
そんな空気の中で鳥は一度水槽を見て、レイラへと向き直った。
"レディとは妙齢の人型の雌に通称だと思っていたのですがサカナも通じるのですか、それは知りませんでした。今後気をつけます"
太々しげな鳥の態度に、メイはグルグルと何かを訴えるかのように水槽を泳ぎ回った。
"ルーカス!!あんたね、いい加減にしなさいよ!絶対今私の事、獲物として考えたでしょう!私はあんたの先輩よ、先に主人様の使い魔になったのは私なんですからね!!"
"ピチャピチャと飛び跳ねて、パクパクと馬鹿みたいに口を広げて見えますが貴女はその形態で声が出ないことも忘れて見えるんですかね。オサボリ使い魔さん"
泳ぎ回る魚へどこか上から見るように、鳥は近づいた。
「こら、ルーちゃん! メイはサボってた訳じゃじゃなく、異世界の知識を持ち帰って貰うために修行に出したのにそんな意地悪言ってはダメよ」
怒られてもさして気に成っていないかのような羽繕いをしながら聞き流すかのような態度の大鷲はふんっと一息つくと、覗き込むように再び水槽へと顔を近づけた。
"主人様、私コイツ嫌いです……暫く泉に籠るので、ご用のある時には呼んでください"
レイラと鳥の掛け合いを見ていたメイは、ぽちゃんと一度大きく跳ねると泡を残して水槽から姿を消した。
その姿が消えた途端、鳥は全身の羽を大きく膨らませレイラへと迫った。
"主!! メイヴィスさんは何処へ行かれたのですか、彼女は一体貴女とどんなお話をされていたのですか?!"
「ルーちゃん…貴方ねぇ、いい加減にしなさいよ」
※※
レイラSIDE
私の可愛い使い魔はアホである。
いや、正確には2匹の使い魔のうち1羽だけとんでもなくアホである。
「貴方昨日、メイちゃんの寝込みを襲って何処に連れてくつもりだったの」
"寝込みを襲う? 心外ですね、昨日はやっと新しい家が出来たのでいち早く彼女に査定して頂く為におつれしたんです。もっと近くで見て頂こうとした時彼女が興奮して見えて、思わず喜びで脚力が弱まって落としてしまいましたが……"
「あほね、驚くほどアホすぎるわ。なんで貴方そんか前向き思考なのよ、魔女もびっくりなレベルで不可思議な現象よ」
元々最初の使い魔であるメイヴィスは人魚という種族からの形態変化で魚へとなるものの、見目も人型に近く種族も人に近い交流を持っていたためか、思考も何処か理性的なものも持っていた。しかし、この大鷲は不死鳥の種族更には、まだ年若いため人の生活を知らず、形態変化はいたずら好きのハーピーに近く言葉を話す魔物としては知能が野生に近いもののままだった。
いくら仕事は出来ても根は鳥頭、何故愛情表現が同族主体なのか…厄介な事にこのアホ鳥はメイヴィスに一目惚れとやらの気配があった。
動かない足、落ちゆく意識の中その声は聞こえた。
”かわいい、かわいい私のレディ……約束の時間よ、さぁ夢から覚める準備は出来たかしら…”
光差すような言葉の音色、それの瞬間自分がナニであったのかを思い出した。
”あぁ……お迎えに来ていただけたのですね”
「ある、じさま……今、お傍に…」
そんな彼女の呟きは周りの喧騒に飲み込まれ、
※※
人魚に憧れた少女はやがて成長し、社会という名の水槽へ閉じ込められたアラサーOLへと成長した。
日々怒鳴り散らかす上司、うっぷん晴らしのクレーム電話。
そんな平凡な毎日を過ごす彼女、玲子は帰宅途中事故に巻き込まれてしまう。
感覚のない身体と落ちゆく意識の中、聞こえた声に彼女は答えた。
"かわいい、かわいいレディ…夢から覚める準備は出来たかしら?”
聞こえた声、思い出した魂の記録。
”あぁ、私の主様ッ”
これは優しい魔女と、出戻り使い魔との物語。
ではありませんでした。
『主様ッ、あのアホ鳥今日の夕食にしましょう!!』
「駄目よぉ~、あの子も同じ使い魔なんだからお肉にはならないわよぉ」
バサバサと大き 羽ばたきと共に舞い散る羽、大きな鳥が黒く優しい魔女の傍らへと降り立った。
出戻った先には百年前にはいなかったはずの鷲、契約した魔女には別の使い魔がいました。
※※
"主人様ッ、あのアホ鳥どうにかしてください!!"
静かな森の泉のほとりに建つ一軒家、その家にはいくつもの水槽があり、光差しこむ寝室の窓辺にはバチャバチャと波打つ水槽があった。
「メイ、貴女朝から元気ねぇ……」
部屋の主である魔女、レイラはベットから身体を起こし水槽で元気に飛び跳ねる1匹の金魚の様なそれよりも長く青から銀へと変わる優雅な尾びれもを持った魚へと声をかけた。
"主人様、おはようございます! いえ、その元気とかではなく兎に角あのアホ鷲を私の泉に近寄らせないでください"
魚は何かを訴えるかのごとく、バチャバチャと飛び跳ねる。
「メイ、メイ…メイヴィス分かったから、とりあえず落ち着いて、ちゃんと心言で聞こえてるわ。それにこのままじゃベットが水浸しになってしまうわ、一体今度はルーが何をしたの?」
レイラは飛び跳ねる魚、メイのいる水槽へと近づき、そっと話しかけた。
"あの鳥私が寝てる隙にこの艶やかで、繊細な鱗を鷲掴んだだけでなく捕まえて食べようとしやがったんです!! しかも結局鳥目で目測誤って巣の手前で落とすし、アイツの爪のせいで鱗が一枚禿げました!"
「あらあら、それは可哀想に…その胸ビレの横ね、ルーちゃんには女の子を傷つけたお仕置きが必要ね」
痛ましげな声をメイへと向け、レイラは窓をあげて指笛を吹いた。
ピィィーーー
澄み切った森の空気の中、窓へと向かってくる1匹の大鷲のような鳥。
その鳥は窓辺に近づき大きく羽ばたき、水槽の水面を揺らしながら窓辺に優雅に止まった。
"主、何の御用でしょうか"
「ルーちゃん、貴女またメイに意地悪したわね。泉はメイのお部屋なんだから、レディのお部屋に許可なく入るものじゃなくてよ!」
ビシッと風を切るように大鷲に向かって指を指し、レイラは言い放った。
"主人様、私の訴えたいことはそういう事ではないのですが……"
そんなレイラの言葉に、水槽からはどこか呆れかけた空気が漂う。
そんな空気の中で鳥は一度水槽を見て、レイラへと向き直った。
"レディとは妙齢の人型の雌に通称だと思っていたのですがサカナも通じるのですか、それは知りませんでした。今後気をつけます"
太々しげな鳥の態度に、メイはグルグルと何かを訴えるかのように水槽を泳ぎ回った。
"ルーカス!!あんたね、いい加減にしなさいよ!絶対今私の事、獲物として考えたでしょう!私はあんたの先輩よ、先に主人様の使い魔になったのは私なんですからね!!"
"ピチャピチャと飛び跳ねて、パクパクと馬鹿みたいに口を広げて見えますが貴女はその形態で声が出ないことも忘れて見えるんですかね。オサボリ使い魔さん"
泳ぎ回る魚へどこか上から見るように、鳥は近づいた。
「こら、ルーちゃん! メイはサボってた訳じゃじゃなく、異世界の知識を持ち帰って貰うために修行に出したのにそんな意地悪言ってはダメよ」
怒られてもさして気に成っていないかのような羽繕いをしながら聞き流すかのような態度の大鷲はふんっと一息つくと、覗き込むように再び水槽へと顔を近づけた。
"主人様、私コイツ嫌いです……暫く泉に籠るので、ご用のある時には呼んでください"
レイラと鳥の掛け合いを見ていたメイは、ぽちゃんと一度大きく跳ねると泡を残して水槽から姿を消した。
その姿が消えた途端、鳥は全身の羽を大きく膨らませレイラへと迫った。
"主!! メイヴィスさんは何処へ行かれたのですか、彼女は一体貴女とどんなお話をされていたのですか?!"
「ルーちゃん…貴方ねぇ、いい加減にしなさいよ」
※※
レイラSIDE
私の可愛い使い魔はアホである。
いや、正確には2匹の使い魔のうち1羽だけとんでもなくアホである。
「貴方昨日、メイちゃんの寝込みを襲って何処に連れてくつもりだったの」
"寝込みを襲う? 心外ですね、昨日はやっと新しい家が出来たのでいち早く彼女に査定して頂く為におつれしたんです。もっと近くで見て頂こうとした時彼女が興奮して見えて、思わず喜びで脚力が弱まって落としてしまいましたが……"
「あほね、驚くほどアホすぎるわ。なんで貴方そんか前向き思考なのよ、魔女もびっくりなレベルで不可思議な現象よ」
元々最初の使い魔であるメイヴィスは人魚という種族からの形態変化で魚へとなるものの、見目も人型に近く種族も人に近い交流を持っていたためか、思考も何処か理性的なものも持っていた。しかし、この大鷲は不死鳥の種族更には、まだ年若いため人の生活を知らず、形態変化はいたずら好きのハーピーに近く言葉を話す魔物としては知能が野生に近いもののままだった。
いくら仕事は出来ても根は鳥頭、何故愛情表現が同族主体なのか…厄介な事にこのアホ鳥はメイヴィスに一目惚れとやらの気配があった。
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