『恋しくて! - I miss you. 』

『恋しくて! - I miss you. 65 』

65.
　" A Friend 友達 2 "


　意味深に涙目になって感極まる私に恵子は何も聞いては
こなかった。
　　そして、彼女は更に話を続けた。
　
　「旦那に送迎を頼んだのは後にも先にもあかりだけ。
　店の女の子はね、タクシー呼んでお金払ってでも旦那に
送らせたことなんて一度もないのよ」って。


　「主人に店のことを手伝ってもらうのは女の子たちのいない
時だけ。徹底して目を光らせてるから今でも私達仲の良い
夫婦でいられるんだと思うわ」


　「そっか、、、そうだよね。流石恵子だわ」

　「若い子はね、気をつけないと。
　女の私から見たって
　赤ちゃんみたいなスベスベお肌で見てたらヤバイもの。
　触れてみたい衝動? に駆られそうなんだモン!!

　若さって素晴らしくてそれでいて罪作りなものよ。
　悪い芽は早めに摘むか、接触させないに限る・・・よ」

　そう言って恵子はニッと意味深に笑った。

　　　　　　　　　・・・


　常連の前川さんはきれいな飲み方のできる人で歌が
上手かった。

　私がバイトで入る時はよく一緒に歌った。

　少し打ち解けて仲良くなった頃デートに誘われた。
　彼は既婚者で息子が二人いる人だった。
　もちろん、適当にあしらった。
　私は彼を軽蔑した。


　恵子の店で半年働いている間に前川さん以外からも
何人かお誘いがあった。

　皆、奥さんのいる人達だった。


　店の手伝い自体は楽しかったし夜お酒を身体に入れて歌って
ハイな気分のまま独り寝する生活はまんざらでもなかった。

　けれど徐々に心が疲弊するのを自覚するようになった頃
ちょうど本業のほうが人手不足になりフルタイムでの勤務を
病院から懇願されたこともあり、恵子の店は晩秋の頃
辞めた。