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『特別な人』141

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 相原は残業しなくて済むようにいろいろ段取りをつけてなんとか
定時で上がり、掛居が自社ビルを出て来たところで捕まえようと、
さり気なく出入り口から少し離れたところで彼女を待っていた。


          ◇ ◇ ◇ ◇


 彼女の顔が見えてほっとしたのもつかの間、一緒に仕事をしている相馬が
彼女の腕に手を掛かけたのが見えた為、一瞬の判断で俺は足早に駐車場へと
向かった。


 やはり昨日のメールで誘わなくて正解だった。
 
 約束していたらきっと彼女は仕事と約束の狭間で悩むことに
なっただろうから。


 相馬が掛居に正式に交際を申し込む予定でいることなど知らぬ相原は
お人好しな自分の感傷に浸りながら寂しく帰途についた。


 結局少しの期待をすぼめて帰宅した花金の夜。


 凛のこと、いつ迎えに行こうか、そんなことを考えつつ夕食は
野菜たっぷりのラーメンを作って食べた。



 凛がいない為、相原は久しぶりにたっぷりと睡眠をとることができた。
 翌日起きたのは11時過ぎ。
 明日は日曜でクリスマスイブ。
 恋人たちには最高の日だ。


 自分も気軽に掛居を誘えばいいじゃないかと思うものの
昨夜意外な肩透かしを食らったのが結構きていて、どうしても前向きに
なれないのだった。


『はぁ~、イブは年に一回しかなくて、一年に一度のチャンスなのになぁ~』

 いかんっ、気持ちが上向きにならない。
 ソファに座った相原は前髪をかき上げ、大きなため息を吐いた。


 しばらくの間ソファに留まりまったりしていると荷物が届いた。

 見ると親戚の伯母からさまざまな野菜が100サイズで2箱、
箱いっぱいにビッシリと入れられている。



 レタス、じゃがいも、しょうが、玉ねぎ、長ネギ、里芋、小松菜とあり、
伯母の心遣いが有難かった。



 感謝しながら箱から出し、保存する為に小分けにしようと仕分けを始めると、
相原は閃いた。


 これをお裾分けするのに掛居の家へ訪問できるじゃないかジャマイカと。


 春子おばさん、ありがとっ。

 伯母さんのお蔭で俺、息吹き返したわ。
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