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『特別な人』44

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◇信也の怒り

 あのペテン師め! 

 俺はZoomで事の次第を話し合おうと玲子に連絡を入れた。

「お前、どういうつもり?
 これは私たちだけの秘密、お姉ちゃんには内緒ねって言ってただろ?

 しかも俺に一言も話さないで妊娠したとか言って
俺たちのことバラすなんてサイテーだな、おまえ」


「なぁに真剣になっちゃってんの、テンパリ過ぎよ。
 ね、お姉ちゃん、泣いてた? 縋られた? 
 私を捨てないでぇ~って」


 なんなんだ、コイツほんと。
 ふざけた野郎だ。

「泣いてもないし、縋られてもない」

「え~なんだつまんないの」

「妊娠って嘘だろ?」

「……」

「姉の恋人寝取ったことがそんなに楽しいのか? 
蘭子を苦しめて楽しんでるのか?」



「私の誘惑色仕掛けにホイホイ乗ってきたあんたに
そんなこと言う資格ないっしょ」



「お前のエロイ身体に負けてしまったのは一生の不覚だったな。
 言っとくが今後一切お前とは会わないし勿論付き合ったりしない」



「お姉ちゃんと結婚するつもり? そんなことさせないから」




「ンとにお前、クソだな。

 こんなことしておいて知られていないならともかくも、
白日の下に晒されて蘭子に今まで通り付き合ってほしいなんて、
そんな最低なこと言えないわ。

 俺はそこまで腐ってない」


「フーン、じゃあ私が結婚してあげる。自棄にならなくていいよ」




「ごめんだね。

 それと妊娠をたてに俺との結婚強要するならこちらにも考えがあるから。

 お前の妊娠したっていう話が嘘なのは証明できるから。

 俺は子供の頃の病気が原因で不妊だ。

 妊娠が本当なら父親は別にいるってことになる」


 実は信也は幼少期におたふく風邪を引き、母親の思い込みから、以後ずっと
『あんたはもう子供できないかも』と言われ続けてきたのだった。

 それは病院で検査しての決定事項でもなかったのだが……。




「信也くん、不妊だなんてそれこそ詐欺じゃん。
 私、信也くんの他にも付き合ってるヤツいるからそっちなのかもね」




 玲子は吹いてるだけで本当のところ妊娠などしていないと思われた。

 蘭子から俺という恋人を奪うのが目的だったのだろう。

 ほんとに悪いヤツだ。

 蘭子もこんな破廉恥で節操なしの妹と良識のない両親を持って大変だな。

 人の家庭の事情だから介入できないけど、今度のことは心から蘭子に
申し訳ないことをしたと思う。

 蘭子、本当にすまない。




 その後蘭子からお互い別に好きな人ができたということで
恋人から友人関係に戻ったことにしようと提案され、信也と蘭子は
卒業までの間できるだけ皆の前では付き合う前の距離感で過ごしたのである。
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