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『特別な人』31

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「仕事も意欲的に取り組んでもらっていて言いにくいんだけど
辞めてもらうことになりました。できれば今すぐにでも」

「どうしてですか?」


「圧力がかかりました。
 あなた、誰かに恨みをかっていませんか? 

 普通は恨みをかっていたとしても、新しい就職先を解雇されるって
ことまではないでしょうけどね。

 あなたが恨みをかった相手はおそらく大物なのでしょう。

 私が言えるのはこのあたりまでです」


 恨み、恨みといえば掛居花と向阪匠吾の仲を引き裂いたことくらいしか
思いつかない。


 でも結局匠吾は私と結婚したんだよ……結局自分の不貞のせいで
離縁されてしまったけれども。

 犯人は掛居花なのか? 
 だけど会社を辞めさせられるほどの大物だというのなら、
私が匠吾と結婚した時に邪魔するのじゃない? 

 結婚は阻止しなかったのに会社へは行けなくするって……なんか
変じゃない? 

 いくら考えても玲子には恨みをかってるという人物を特定することが
できなかった。

          ◇ ◇ ◇ ◇


  次はバイトもせずに就職を探すだけに時間を使って過ごし、早々に
前回に負けず劣らず働き甲斐のある事務仕事を見付けた。


 しかしこの時もやはり仕事についてすぐに圧力がかかり、仕事を
継続することは叶わなかった。


 もう誰かの見えない力のせいでちゃんとした会社には就職できないと
落胆したものの、よくよく考えてみればコンビニでバイトしていた時には
横槍はなかったはず。


 そこでしばらく就職活動を断念してバイトで食いつなごうと
玲子は自分の生活の有り方を切り替えることにした。

 前回1か月余り働かせてもらったコンビニに連絡を入れると
ぜひにと請われ、少し気恥ずかしくもあったが、そこは割り切って
働くことにした。


 他のバイトの人とも上手く連携が取れて仕事は順調にいった。

 そして半月ほどした頃、週に何度かコンビニ弁当を買って帰る男性ひとから
玲子はメモ付きの名刺を貰う。


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