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醒めない夢 77 ☑

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77.☑
~果歩が消えた日から 28


 不思議と何故かこの時まで届けを出すっていうことに
思いが及ばなかったけど、取っといて良かったよ。


 これで晴れて私はシングル。
 誰と恋愛しようと結婚しようと自由なのだ。


 夫が本気で離婚しようと思って私に離婚届を出した
わけじゃないことは明白で、その後この話を夫が持ち出す
ことはなかった……し、私からも……なかったのだから。


 ただの憂さ晴らしに夫が書いた離婚届。
 ブラボ-! お陰でスムースに独身になれたわよ?


  そして私は離婚届けを出したことを溝口さんと
母に報告し、それから6ヵ月と少し過ぎた頃
私は溝口果歩になった。


               ◇ ◇ ◇ ◇


 そして十数年後、私は某スーパーとダイキのある
駐車場で元夫と遭遇したのだった。


 私には信頼のおける溝口啓太という愛すべき夫と
ずっと私を支えてきてくれた愛する母がいる。

 そして碧が。



 元夫も頑固一徹で人の気持ちに添えない父親も
もうちっとも怖くないし、障壁でもない。

 Come on!


 そんな気持ちで何やらしゃべり倒している元夫を
私は見ていたのである。


 あんなに趣味のように浮気しまくっていた男は
着古した上着を着、顔色の余り良くない風貌で
普通にただ行き違っていたら元夫とは気がつかなかったかも。


 今の夫が駆け寄って来た時、ふたりの差があまりに
鮮明すぎて、元夫のとこを思わず哀れんでしまったほど。


 時は残酷なものなのだと思った。

 こんなにもひとりの人間の風貌や雰囲気、生活感を
変えてしまうものなんだと。


 私は元夫にどんな風に映ったのだろう? 

 私もあの頃と比べたら老けているはずだから。
 でも声をかけてきたってことは、全く別人とまでは変貌してないかな?


 話合いの場を設けることになったのだけれど
さてさて、どんなことになるのやら、少しワクテカして
いる自分がいる。
  
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