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醒めない夢 73 ☑

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73.
~果歩が消えた日から 24


 2人が一緒に暮らしているのを知った母は激怒した。

 私と会って話してくれた時、プンスカ怒りまくっていた。

 そして其れと共に私が夫の下へ帰らないという負い目
みたいなものも、自然と母の中からなくなっていったようだ。

 母とは月に1~2度会うようにしていた。
 碧のために……そして母のために。

 だけど失踪者の身の上で会うとなると時間が限られてしまう。


 横暴な夫と暮らす母にとっては、話し会える私と可愛い孫娘が、
生きるよすがなのだ。


 碧にとっても母は私以外に無二の愛情を注いでもらえる
唯一の肉親になるわけで。


 何度も何度も考えて考えて……どうせ話してしまうのならと、
溝口さんの家にお世話になってから半年後
コトの真相を彼に話したのだった。


 「じゃあ、あなたは記憶失くしてないんですね? 」

-

「はい、今まで嘘ついてて、すみません。

 溝口さんにはご迷惑おかけしたくなかったので本当はこの先も
ずーっと黙っているつもりでした。

 だけど碧のことを考えるとやはり最善とは思えなくなってきて、
こうしてお話させていただきました。

 母に泊まりで来てもらえるようにしたかったんです。

 我儘は承知の上なのですがこのまま
ここに居させていただいてもよろしいでしょうか? 」



「ご主人が何度も浮気を繰り返す、仕事をちゃんと真面目にしない、
借金がある、あなたとの生活であなたにちゃんと向き合おうとしない、
婚姻生活を続けるのは難しい、離婚したいけれど、ご主人とお父さんが
反対してなかなか話が進まないだろう、ふたりに立ち向かう気力が今の
あなたにはない、神様からもらったこのチャンスに乗じて新しい人生を
歩みたい……とこんな風な内容ですね」



 私の話を聞いた後で……
『わかりました。
 私はあなたが記憶を失くしているということにさせていただきます』
と溝口さんは言ってくれた。


 こうして溝口さんのお陰で母は、ちょくちょく
碧に会いに来れるようになった。

 ふたりが会える日碧も母も楽し気で幸せそうだった。


 その様子を見るにつけ、正直に早い段階で溝口さんに
本当のことを打ち明けておいてよかったと思った。
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